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返事
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一週間後、オルタナ王国から手紙が届いた。
ルークアは日程の調整をしなければいけない。いつ会えることになるだろうかと思いながら、手紙の封を切った。
―フォンターナ家は多忙にて、ご希望には添えません。申し訳ございません―
たった一行だけであった。
「っな…」
こちらは王族だぞという気持ちが込み上げてきたが、あちらも王族だと思い直し、グッと飲み込んだ。
「いつがよろしいですかという手紙だと思ったのに!王家に出したのが良くなかったのか?だが…」
頭を悩ませていると、返事があったと聞いたメーリンが飛び込んで来た。
「お兄様、御返事があったと」
「ああ…」
「良い御返事ではなかったの?」
「ああ…」
ルークアはオルタナ王国からの返事を、メーリンに手渡した。
「これは…本当にお忙しいのか、会う気がないのかですわね」
「そうだろうな」
「だが、私たちが会いたいのはフォンターナ家だ。王家ですらない」
「やはりレオラッド大公閣下夫人だからではないかしら?きっとご結婚される際に、貴族の養女などになったりされているでしょうし」
伺うのだからと、手紙を出した後で、フォンターナ家のこと、レオラッド大公閣下のことを調べようとしたが、レオラッド大公閣下はとても厳しい方だということくらいしか分からなかった。
アジェル王国がこれまでフォンターナ家が、オルタナ王国にいることも分からなかったことから、掴めるはずもなかった。
「だがな、断るということは何かあるからということかもしれないとも思ったのだ」
「でもそれで断られたのなら、あまり良くないことではないかしら」
「そ、そうか…」
何かあるとして断っていたとしたら、会って貰えない理由が会いたくないになってしまう。そんな風には考えたくなかった。
「お兄様が子孫にまで、引き継がれることはないと言ったのではありませんか」
「メーリンも同意したじゃないか」
「ええ、私もそう思ったもの」
「そうだろう」
「手紙はきちんと書かれたのよね?」
王家からの手紙をあっさりと断るには、何か理由があるのだろう。本当に忙しいと言うのならば、兄の手紙の書き方が悪かったのではないかと考えた。
「当たり前だ。もしかしたら、我が国にフォンターナ家のルーツがあるかもしれない。何か些細なことでもいいので、フォンターナ家に話を聞かせては貰えませんかと書いた。何か問題があるか?」
「いえ、理由を書いているものね。でもお兄様、ここまで来て、引き下がるわけではありませんわよね」
ルークアも断られたことは腹も立ち、ショックだったが、新たな道筋が見えて来たのに、これで引き下がれるわけがない。
「ああ、だが手紙では断られてしまったからな。手紙でフォンターナ家について教えて欲しいと問うのは失礼だろう」
「フォンターナ家に直接、手紙を書いた方が良かったのかしら?」
「それは私も思ったが、王家に書いたのに、またフォンターナ家に書くのも失礼だと取られ兼ねない」
「そうですわね、レオラッド大公閣下の妻だと言うから、王家に書いたことが裏目に出てしまいましたわね」
「まさか断られるとは思わなかったんだ…」
バトワスの深刻な様子を、糸口が見つかるかもしれないと、浮かれていてルークアとメーリンは感じ取れていなかった。
「私が直接、向かいましょう」
「だが、断られた状態だぞ?」
「王家ではなくフォンターナ家に向かうのです」
「だが、王家もレオラッド大公閣下もご存知だろう…」
「ですが、こう言ってはよくありませんが、こちらは王女です。いくら大公閣下夫人だとはいえ、要求は通るはずです」
ルークアもそう考えていたために、その言葉を否定は出来なかった。
「私の方が夫人とも、お話が出来るのではないかと思うのです」
「分かった」
メーリンはオルタナ王国へ、向かうことになった。
ルークアは日程の調整をしなければいけない。いつ会えることになるだろうかと思いながら、手紙の封を切った。
―フォンターナ家は多忙にて、ご希望には添えません。申し訳ございません―
たった一行だけであった。
「っな…」
こちらは王族だぞという気持ちが込み上げてきたが、あちらも王族だと思い直し、グッと飲み込んだ。
「いつがよろしいですかという手紙だと思ったのに!王家に出したのが良くなかったのか?だが…」
頭を悩ませていると、返事があったと聞いたメーリンが飛び込んで来た。
「お兄様、御返事があったと」
「ああ…」
「良い御返事ではなかったの?」
「ああ…」
ルークアはオルタナ王国からの返事を、メーリンに手渡した。
「これは…本当にお忙しいのか、会う気がないのかですわね」
「そうだろうな」
「だが、私たちが会いたいのはフォンターナ家だ。王家ですらない」
「やはりレオラッド大公閣下夫人だからではないかしら?きっとご結婚される際に、貴族の養女などになったりされているでしょうし」
伺うのだからと、手紙を出した後で、フォンターナ家のこと、レオラッド大公閣下のことを調べようとしたが、レオラッド大公閣下はとても厳しい方だということくらいしか分からなかった。
アジェル王国がこれまでフォンターナ家が、オルタナ王国にいることも分からなかったことから、掴めるはずもなかった。
「だがな、断るということは何かあるからということかもしれないとも思ったのだ」
「でもそれで断られたのなら、あまり良くないことではないかしら」
「そ、そうか…」
何かあるとして断っていたとしたら、会って貰えない理由が会いたくないになってしまう。そんな風には考えたくなかった。
「お兄様が子孫にまで、引き継がれることはないと言ったのではありませんか」
「メーリンも同意したじゃないか」
「ええ、私もそう思ったもの」
「そうだろう」
「手紙はきちんと書かれたのよね?」
王家からの手紙をあっさりと断るには、何か理由があるのだろう。本当に忙しいと言うのならば、兄の手紙の書き方が悪かったのではないかと考えた。
「当たり前だ。もしかしたら、我が国にフォンターナ家のルーツがあるかもしれない。何か些細なことでもいいので、フォンターナ家に話を聞かせては貰えませんかと書いた。何か問題があるか?」
「いえ、理由を書いているものね。でもお兄様、ここまで来て、引き下がるわけではありませんわよね」
ルークアも断られたことは腹も立ち、ショックだったが、新たな道筋が見えて来たのに、これで引き下がれるわけがない。
「ああ、だが手紙では断られてしまったからな。手紙でフォンターナ家について教えて欲しいと問うのは失礼だろう」
「フォンターナ家に直接、手紙を書いた方が良かったのかしら?」
「それは私も思ったが、王家に書いたのに、またフォンターナ家に書くのも失礼だと取られ兼ねない」
「そうですわね、レオラッド大公閣下の妻だと言うから、王家に書いたことが裏目に出てしまいましたわね」
「まさか断られるとは思わなかったんだ…」
バトワスの深刻な様子を、糸口が見つかるかもしれないと、浮かれていてルークアとメーリンは感じ取れていなかった。
「私が直接、向かいましょう」
「だが、断られた状態だぞ?」
「王家ではなくフォンターナ家に向かうのです」
「だが、王家もレオラッド大公閣下もご存知だろう…」
「ですが、こう言ってはよくありませんが、こちらは王女です。いくら大公閣下夫人だとはいえ、要求は通るはずです」
ルークアもそう考えていたために、その言葉を否定は出来なかった。
「私の方が夫人とも、お話が出来るのではないかと思うのです」
「分かった」
メーリンはオルタナ王国へ、向かうことになった。
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