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お引き取りください
「もしかして、アジェル王国から聞いたのでしょうか?ハビット王国とは、仲がよろしいと聞いております」
「い、いえ」
アジェル王国のことは、一切触れないようにと思っていたのに、どうにか誤魔化さなくてはならないと慌てた。
「フォンターナ家の方がレオラッド大公閣下に、嫁いでらっしゃると伺っていただけです」
「そうですか…妻も多忙ですので、お会いすることはありません」
大公夫人として忙しいのかもしれないが、当主よりも忙しいはずがない。それなのに、多忙多忙と埒が明かない様子に、メーリンも苛立っていった。
「でしたら、大公閣下は何か御存じありませんか?」
「何かとは?」
「ハビット王国と関わりを聞いたことはありませんか」
「ありません。これ以上迷惑を掛ける前に、お引き取りください」
メイリクスは席に着いてから終始、表情を変えることなく、帰国を望んだ。
「同じ王族ではありませんか、なぜ力になっていただけないのですか。メーリンとメイリクスと、名前も似ているではありませんか」
このまま帰るわけにはいかないメーリンは、自身でも何を言っているのか分からないほど、焦っていた。
「断ると伝えているだけです。何が悪いのでしょうか?」
「忙しいとは言っても、僅かな時間すらないのですか」
「はい」
レオラッド大公閣下は、そう言っているではないかと言わんばかりである。
「なぜですか!断るにしても、私たちが会いたいと言っているのはフォンターナ家です。その家の方が対応するべきではありませんか!」
「私は王族だからということですか?」
「私もそのようなことは言いたくありませんが、そうです。平民ではないのかもしれませんが、私は王女です」
「約束があると嘘までつくことが、王族がすることですか?」
「…それは」
トーマスが言ったことではあったが、責任があるのはメーリンである。
「王家が断ったにも関わらず、勝手にやって来て、約束もないのに押し掛けて、身分を武器に会おうとするなど、王族がすることですか?」
「…あの、それは」
さすがに客観的に見れば、そう思われても仕方ないことに気付いた。
だが、メーリンも豊かな国ではないとはいえ、一国の王女として、見目の良さも相まって、持ち上げられて育って来た。
「自分がされたと考えられないのですか?平民だからどうとでもなると思っていましたか?あなたは王女だと、王族だと理解している成人でしょう?」
「…失礼だったことは認めますが、こちらもどうしても話を聞きたかったのです。国のためなのです、どうか力を貸してください」
メイリクスは一向に引き下がらない様子に、呆れるしかなかった。
「分かりました」
「会わせて貰えるのですか!」
メーリンは願いが届いたと、嬉々とした声を上げた。
「私では不十分でしょうから、国王陛下に時間を取って貰うように話して参ります」
「えっ、え」
思ってもいない言葉に、大公閣下を見下していたわけではないが、若く見えることで、少し驕っていたかもしれないと後悔が襲っていた。
そこへ従者がやって来て、声を掛けた。
「大公閣下、王妃陛下がいらしています」
「タイミングがいいね」
レオラッド大公閣下は、ドアの方へ行き、何やら話している様子ではあったが、メーリンたちには聞こえなかった。
トーマスたちは立ち上がったが、メーリンは相変わらず立つ様子もなかった。
「王女殿下、王妃陛下です」
「分かっているわ」
「座っていては不味いです」
「あっ、そうね」
トーマスは正直、レオラッド大公閣下にもメーリンが座って迎えた時も、なぜ立たないのかと思っていた。我が国の王女は聡明だと思っていたが、首を傾げるしかなかった。
「陛下は今日は会議がなかなか終わらないと思うわ」
そう言いながら、王妃であるセリーナが入室した。トーマスたちは、深く頭を下げたが、メーリンは頭を下げる様子もなく、セリーナを見つめていた。
「い、いえ」
アジェル王国のことは、一切触れないようにと思っていたのに、どうにか誤魔化さなくてはならないと慌てた。
「フォンターナ家の方がレオラッド大公閣下に、嫁いでらっしゃると伺っていただけです」
「そうですか…妻も多忙ですので、お会いすることはありません」
大公夫人として忙しいのかもしれないが、当主よりも忙しいはずがない。それなのに、多忙多忙と埒が明かない様子に、メーリンも苛立っていった。
「でしたら、大公閣下は何か御存じありませんか?」
「何かとは?」
「ハビット王国と関わりを聞いたことはありませんか」
「ありません。これ以上迷惑を掛ける前に、お引き取りください」
メイリクスは席に着いてから終始、表情を変えることなく、帰国を望んだ。
「同じ王族ではありませんか、なぜ力になっていただけないのですか。メーリンとメイリクスと、名前も似ているではありませんか」
このまま帰るわけにはいかないメーリンは、自身でも何を言っているのか分からないほど、焦っていた。
「断ると伝えているだけです。何が悪いのでしょうか?」
「忙しいとは言っても、僅かな時間すらないのですか」
「はい」
レオラッド大公閣下は、そう言っているではないかと言わんばかりである。
「なぜですか!断るにしても、私たちが会いたいと言っているのはフォンターナ家です。その家の方が対応するべきではありませんか!」
「私は王族だからということですか?」
「私もそのようなことは言いたくありませんが、そうです。平民ではないのかもしれませんが、私は王女です」
「約束があると嘘までつくことが、王族がすることですか?」
「…それは」
トーマスが言ったことではあったが、責任があるのはメーリンである。
「王家が断ったにも関わらず、勝手にやって来て、約束もないのに押し掛けて、身分を武器に会おうとするなど、王族がすることですか?」
「…あの、それは」
さすがに客観的に見れば、そう思われても仕方ないことに気付いた。
だが、メーリンも豊かな国ではないとはいえ、一国の王女として、見目の良さも相まって、持ち上げられて育って来た。
「自分がされたと考えられないのですか?平民だからどうとでもなると思っていましたか?あなたは王女だと、王族だと理解している成人でしょう?」
「…失礼だったことは認めますが、こちらもどうしても話を聞きたかったのです。国のためなのです、どうか力を貸してください」
メイリクスは一向に引き下がらない様子に、呆れるしかなかった。
「分かりました」
「会わせて貰えるのですか!」
メーリンは願いが届いたと、嬉々とした声を上げた。
「私では不十分でしょうから、国王陛下に時間を取って貰うように話して参ります」
「えっ、え」
思ってもいない言葉に、大公閣下を見下していたわけではないが、若く見えることで、少し驕っていたかもしれないと後悔が襲っていた。
そこへ従者がやって来て、声を掛けた。
「大公閣下、王妃陛下がいらしています」
「タイミングがいいね」
レオラッド大公閣下は、ドアの方へ行き、何やら話している様子ではあったが、メーリンたちには聞こえなかった。
トーマスたちは立ち上がったが、メーリンは相変わらず立つ様子もなかった。
「王女殿下、王妃陛下です」
「分かっているわ」
「座っていては不味いです」
「あっ、そうね」
トーマスは正直、レオラッド大公閣下にもメーリンが座って迎えた時も、なぜ立たないのかと思っていた。我が国の王女は聡明だと思っていたが、首を傾げるしかなかった。
「陛下は今日は会議がなかなか終わらないと思うわ」
そう言いながら、王妃であるセリーナが入室した。トーマスたちは、深く頭を下げたが、メーリンは頭を下げる様子もなく、セリーナを見つめていた。
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