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不愉快な王女
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「ええ、何でしょう?」
「ターナ家、フォターナ家、ハビット王国、呪い、天候、予言という言葉のどれかを聞いたことはありませんか?」
大昔のことを子孫に聞くことは、分からないと言われて当然だと考えていた。
だが、彼はないと断言した。もしかしたら、手紙が送られて来て、確認をしたのかもしれない。そう考えて、重要なところだけを伝えることにした。
「ありませんね、家名は似ているだけではありませんか?呪い、予言は…そのようなことを言われても、知らないとしか言えませんね。私は医師ですので、天候には関わっておりません」
「義兄上、そろそろ時間です」
「ああ、ありがとう。では、王妃陛下、失礼いたします」
メイリクスがジェラルドに声を掛け、ぴったりとドアまで見送った。
「待って!」
メーリンはジェラルドに向かって叫びながら、追いかけたが、メイリクスが立ちはだかった。
「いい加減にしろ!望み通り、時間を取った!」
「でも、何も調べずに知らないなんて、おかしいわ。何か知っているんじゃないの!」
「知らないものを知らないと言って、何が悪い?」
「でも、調べてくれたって」
メーリンは答えにはショックではあったが、親身になろうともせず、調べてもくれない姿に苛立ったのである。
「事実は同じでも、調べましたが、そのような事実はありませんでしたと、わざわざ言わなくてはならないのですか?随分、傲慢な王女だな!」
「っな」
「あなた方は勝手に決めつけただけでしょう?そうでしたか、調べてみますという言葉しか納得しない。でもこれが現実です、お引き取りください」
「でも!」
折角会えたのに、何の成果もなく、帰るなんてと、メーリンは声を上げた。
「彼はフォンターナ家の当主ですよ?歴史も熟知しているに決まっているでしょう?それとも、あなた方は自身の家のことも、調べないと歴史も分からないのですか?」
「―っっ」
「不愉快な態度、ハビット王国にもきっちりと抗議をさせて貰います」
「私は正しいことをしただけで」
「それはあなたの考えであって、他者から見れば、非常に不愉快でしかない。お帰りだ、送って差し上げろ」
「は!」
護衛たちが早く動くように言い、メーリンはもっと聞きたいことがあるの!お願いよ!と喚いていたが、トーマスはさすがに不味いと思い、これ以上は悪手だと黙らせて、王宮を去った。
残されたメイリクスとセリーナは、理解に苦しむ王女に顔を歪めた。
「呆れた王女だ、礼儀もなっていない」
「あれでも、10代の頃は見た目で他国でも人気があったようよ」
「あれが?」
「あれが」
メイリクスは婚約結婚していないことは調べて分かっていたが、会ってみて問題児で、結婚もしていないのかと思っていた。
「今は?」
「もうないでしょうよ、若い頃なら多少目こぼしされることはあることが、20歳を超えたら、そんなことも出来ないの?ということが強くなるわ」
「ああ…」
王女や貴族令嬢は、年齢で判断される場合は多い。
「しかもあの様子。閉鎖的な国のせいか、あれでは他国ではやっていけないわ。自国で適当に嫁ぐしかないんじゃない?」
「閉鎖的な自国なら、何とかなりますかね?」
「ええ、自国なら初婚の相手も見付かるんじゃない?さて、その前に会議が終わったら、陛下に抗議文を書いて貰うように言わないと。貴方も用意するでしょう?」
「勿論です!義兄上の代筆もしたいくらいですよ」
「本当ね」
フォンターナ家は本当に手紙のまま、忙しいので会うことが出来ないとだけ言い、ハビット王国に興味も示さなかった。
ジェラルドも王宮にいなければ、来なかっただろう。
セリーナとメイリクスは、王女たちがハビット王国に着く前に抗議文が届くように手配し、二度とこちらに来ない欲しいと、入国させないことに決めた。
「ターナ家、フォターナ家、ハビット王国、呪い、天候、予言という言葉のどれかを聞いたことはありませんか?」
大昔のことを子孫に聞くことは、分からないと言われて当然だと考えていた。
だが、彼はないと断言した。もしかしたら、手紙が送られて来て、確認をしたのかもしれない。そう考えて、重要なところだけを伝えることにした。
「ありませんね、家名は似ているだけではありませんか?呪い、予言は…そのようなことを言われても、知らないとしか言えませんね。私は医師ですので、天候には関わっておりません」
「義兄上、そろそろ時間です」
「ああ、ありがとう。では、王妃陛下、失礼いたします」
メイリクスがジェラルドに声を掛け、ぴったりとドアまで見送った。
「待って!」
メーリンはジェラルドに向かって叫びながら、追いかけたが、メイリクスが立ちはだかった。
「いい加減にしろ!望み通り、時間を取った!」
「でも、何も調べずに知らないなんて、おかしいわ。何か知っているんじゃないの!」
「知らないものを知らないと言って、何が悪い?」
「でも、調べてくれたって」
メーリンは答えにはショックではあったが、親身になろうともせず、調べてもくれない姿に苛立ったのである。
「事実は同じでも、調べましたが、そのような事実はありませんでしたと、わざわざ言わなくてはならないのですか?随分、傲慢な王女だな!」
「っな」
「あなた方は勝手に決めつけただけでしょう?そうでしたか、調べてみますという言葉しか納得しない。でもこれが現実です、お引き取りください」
「でも!」
折角会えたのに、何の成果もなく、帰るなんてと、メーリンは声を上げた。
「彼はフォンターナ家の当主ですよ?歴史も熟知しているに決まっているでしょう?それとも、あなた方は自身の家のことも、調べないと歴史も分からないのですか?」
「―っっ」
「不愉快な態度、ハビット王国にもきっちりと抗議をさせて貰います」
「私は正しいことをしただけで」
「それはあなたの考えであって、他者から見れば、非常に不愉快でしかない。お帰りだ、送って差し上げろ」
「は!」
護衛たちが早く動くように言い、メーリンはもっと聞きたいことがあるの!お願いよ!と喚いていたが、トーマスはさすがに不味いと思い、これ以上は悪手だと黙らせて、王宮を去った。
残されたメイリクスとセリーナは、理解に苦しむ王女に顔を歪めた。
「呆れた王女だ、礼儀もなっていない」
「あれでも、10代の頃は見た目で他国でも人気があったようよ」
「あれが?」
「あれが」
メイリクスは婚約結婚していないことは調べて分かっていたが、会ってみて問題児で、結婚もしていないのかと思っていた。
「今は?」
「もうないでしょうよ、若い頃なら多少目こぼしされることはあることが、20歳を超えたら、そんなことも出来ないの?ということが強くなるわ」
「ああ…」
王女や貴族令嬢は、年齢で判断される場合は多い。
「しかもあの様子。閉鎖的な国のせいか、あれでは他国ではやっていけないわ。自国で適当に嫁ぐしかないんじゃない?」
「閉鎖的な自国なら、何とかなりますかね?」
「ええ、自国なら初婚の相手も見付かるんじゃない?さて、その前に会議が終わったら、陛下に抗議文を書いて貰うように言わないと。貴方も用意するでしょう?」
「勿論です!義兄上の代筆もしたいくらいですよ」
「本当ね」
フォンターナ家は本当に手紙のまま、忙しいので会うことが出来ないとだけ言い、ハビット王国に興味も示さなかった。
ジェラルドも王宮にいなければ、来なかっただろう。
セリーナとメイリクスは、王女たちがハビット王国に着く前に抗議文が届くように手配し、二度とこちらに来ない欲しいと、入国させないことに決めた。
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