【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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不愉快な王女の帰国1

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「アジェル王国とはある意味、同格くらいであろう。あちらも最低限、こちらも最低限でいいとしていたのだろう。何か失礼があっても、お互い気にすることではないとしたということだ」
「どういう意味ですか?」
「力のない国だから、まあいいかで済むということだ!」
「それは…」
「悲しいことだが、それが現実だよ」

 プレストは王子も王女も、自国のことを分かっていると思っていたが、そうではなかったことに、落胆を隠せなかった。

「オルタナ王国は違うというのですか?」
「そうだろう?新薬だって、我が国は輸入しており、オルタナ王国は開発国だぞ?他の薬だってそうだ、我が国では開発すら出来ていない」

 薬草などはあるが、薬と呼べるものではなく、気休めに過ぎない。

 力を入れたいところだが、どちらにしてもその成分を輸入に頼るしかなく、なかなか手に入らない。

「そ、それは…」
「はあ…これから、どうなるのか…お前も覚悟して置きなさい」

 相手が伯爵家だけではなく、王家と大公家ということはルークアも理解していた。だが、未だにルークアも私もメーリンも王族だという気持ちが消えなかった。

「何かあると言うのですか?」
「ああ、ここまで不愉快な思いをさせて、抗議だけで済むはずがない」
「お金ですか…」
「お金だったら、良かったということにならなければいいな」

 その言葉にルークアは言いようもない不安を感じた。

 確かにオルタナ王国は、お金には困っていないだろう。

 ハビット王国からとなると、時間もお金も掛かるので、なかなか行くことは難しいが、他国だと保養地としても人気があり、旅行に行く者も多いと聞く。

 迷惑料、慰謝料を支払うことになるのではないかと思っていたが、もしもそうではなく、何か別の物…お金には代えられない物だったら…恐ろしさを感じ始めた。

 暗さを纏ったハビット王国の王家に、もう一通、大公家からも抗議文が届いた後、ようやくメーリンが帰国した。

 メーリンは少し休みたかったが、戻り次第、陛下のところへ行くようにと言われ、渋々向かった。

「ただいま、戻りました」
「ああ、それでどう弁解するつもりだ?」
「弁解ですか?」
「オルタナ王国から抗議文が届いている」
「それはあちらが過剰に受け取っただけで、私は間違ったことはしておりません」

 本当に抗議文を送ったのかと思ったが、お父様なら分かってくれるから大丈夫だと、深刻に考えることもなかった。

「ふざけるな!」
「…えっ」

 メーリンはプレストに怒鳴られたことは、これまで一度もなかった。

「お前が礼儀もなっていない者だとは思わぬかった」
「違います!そんなことはありません」

 我儘を言い、見下すような態度を取ることもなかったことから、無事に育っていると思っていた。

 国のために、研究をしたいというのも、立派なことだと思った。

 だが、今となってはきちんと、ハビット王国の王女という立場を、しっかりと分かるまで伝えて置くべきであった。

「王家、大公家から抗議文が届いている。王女だと傲慢な態度を取り続けて、大変不愉快だったと、お前はもうオルタナ王国に入国すら出来ない」
「何ですか、それは」
「お前の行った行動のせいだ」
「私は間違っておりません」
「そうか」

 ああ、やっぱりお父様は分かってくれると思っていた。怒鳴られたのは驚いたが、一応は抗議文のことで怒って置かなければと思ったのだろう。

「分かっていないことがよく分かった。王妃陛下、大公閣下にどうして不躾な態度が取れたのだ?」
「失礼な態度など取っていません」
「では聞き方を変える。断られているのに、どうして押し進めたのだ?」
「それは国のために、決まっているではありませんか」
「はあ…」

 大義名分のように思っているのだろうが、オルタナ王国には関係もなければ、既に断られていることである。
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