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不愉快な王女の帰国3
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「間違いないか?」
「はい、間違いありません」
「どうして止めなかったのだ!」
プレストはメーリンが悪いことは確かで、責任転嫁する気はなかったが、一緒にいたのであれば、止めることは出来たのではないかと、つい当たってしまった。
「何度も御止めしたのですが、王女殿下はどうしても納得が出来ないとおっしゃられまして」
「だが、メーリンがおかしいことは分かっていたのだろう」
トーマスたちも責められる覚悟はしていた。だから、メーリンの書いた一筆を見せることにした。
「こちらを」
「何だ?」
「メーリン王女殿下が書かれた物です」
「…これは、そうか。疲れているところ、悪かったな。ゆっくり休んでくれ」
全ての責任はメーリンにあることが書かれており、自国の者はメーリンに逆らうことは出来なかったことが分かったからである。
メーリンは叱られはしたが、自国に戻ったことで、いつも通りに戻っていた。
少し横になって休み、ゆっくりしていると、ルークアが訪ねて来た。
「メーリン」
「お兄様、何も分からなかったの」
「ああ、聞いている。それよりも、父上に怒られただろう」
ルークアはメーリンがどんな顔をしているのかと思い、訊ねるのを躊躇していた。
「ええ、でもあちらが親身になってくれないことが悪いのよ。なかなか会わせて貰えなくて、本当に酷かったんだから」
「だが、断られていただろう」
「でも、平民ではなく伯爵家だったようだけど、伯爵家なら王家に従うべきでしょう?王妃陛下も大公閣下も頭が固くて、本当に嫌になっちゃうわ」
ルークアも何も知らなければ、メーリンに賛同したかもしれない。
だが、他国から見たハビット王国の正しい現状を、抗議文が届いた後で、きちんと調べた。
ハビット王国にいれば、王族として敬っては貰えるが、他国に行けば力のない小国の王子でしかないことを思い知った。
「でも、フォンターナ家の方には会えたのだろう?それで、関わりはなかった」
「そう言われたけど、もう一度きちんと調べてくれるのが筋でしょう?」
「筋?」
「ええ、だって我が国と繋がりがあるのよ?光栄なことでしょう?それを王女である私が直々に訪ねているのよ」
メーリンを叱ることは出来ないが、メーリンが抗議文にあったような態度を取ったのだろうことは、想像が出来た。だが、もしルークアが行っていたとしても、同じような行動を取っていたかもしれない。
だが、それにしてもメーリンはこんなに傲慢だっただろうかと思いもした。
アジェル王国ではそのような様子は見られなかったというのに、どういうことなのだろうか。
「我々にはそんな力はないそうだよ」
まだ自分の立場の分かっていないメーリンにルークアも事実を告げることにした。
だが、メーリンは馬鹿にしたように笑った。
「お兄様まで。お父様はオルタナ王国では私は子爵令嬢くらいだなんて言っていたけど、そんなはずないじゃない」
「どうしたんだ?アジェル王国ではそんな言い方はしなかったではないか」
「だって、我が国の者だったかもしれないのよ?」
その言葉にルークアは、我が国の者だったかもしれないのだから、王女である自分に従うべきだったと思っていたのかと理解はしたが、行く前に話し合っておくべきだったと思った。
「疲れているのだろう?ゆっくり休みなさい」
今は何も得られなかったことで、熱くなっているようだが、いずれメーリンも知ることになるだろうとルークアも考えた。
プレストはオルタナ王国に謝罪と、迷惑料を支払いたいと申し出たが、オルタナ王国からは二度と関わらないで欲しいという返事だけであった。
それでも、使者を送ったが、入国時に断られることになった。
何も出来ないまま時間は過ぎていくことになり、プレストはどうしたらいいのかと思いながらも、他国に相談するにもメーリンのことがあるために、出来ずにいた。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
明日はまた12時と17時に1日2話、投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
「はい、間違いありません」
「どうして止めなかったのだ!」
プレストはメーリンが悪いことは確かで、責任転嫁する気はなかったが、一緒にいたのであれば、止めることは出来たのではないかと、つい当たってしまった。
「何度も御止めしたのですが、王女殿下はどうしても納得が出来ないとおっしゃられまして」
「だが、メーリンがおかしいことは分かっていたのだろう」
トーマスたちも責められる覚悟はしていた。だから、メーリンの書いた一筆を見せることにした。
「こちらを」
「何だ?」
「メーリン王女殿下が書かれた物です」
「…これは、そうか。疲れているところ、悪かったな。ゆっくり休んでくれ」
全ての責任はメーリンにあることが書かれており、自国の者はメーリンに逆らうことは出来なかったことが分かったからである。
メーリンは叱られはしたが、自国に戻ったことで、いつも通りに戻っていた。
少し横になって休み、ゆっくりしていると、ルークアが訪ねて来た。
「メーリン」
「お兄様、何も分からなかったの」
「ああ、聞いている。それよりも、父上に怒られただろう」
ルークアはメーリンがどんな顔をしているのかと思い、訊ねるのを躊躇していた。
「ええ、でもあちらが親身になってくれないことが悪いのよ。なかなか会わせて貰えなくて、本当に酷かったんだから」
「だが、断られていただろう」
「でも、平民ではなく伯爵家だったようだけど、伯爵家なら王家に従うべきでしょう?王妃陛下も大公閣下も頭が固くて、本当に嫌になっちゃうわ」
ルークアも何も知らなければ、メーリンに賛同したかもしれない。
だが、他国から見たハビット王国の正しい現状を、抗議文が届いた後で、きちんと調べた。
ハビット王国にいれば、王族として敬っては貰えるが、他国に行けば力のない小国の王子でしかないことを思い知った。
「でも、フォンターナ家の方には会えたのだろう?それで、関わりはなかった」
「そう言われたけど、もう一度きちんと調べてくれるのが筋でしょう?」
「筋?」
「ええ、だって我が国と繋がりがあるのよ?光栄なことでしょう?それを王女である私が直々に訪ねているのよ」
メーリンを叱ることは出来ないが、メーリンが抗議文にあったような態度を取ったのだろうことは、想像が出来た。だが、もしルークアが行っていたとしても、同じような行動を取っていたかもしれない。
だが、それにしてもメーリンはこんなに傲慢だっただろうかと思いもした。
アジェル王国ではそのような様子は見られなかったというのに、どういうことなのだろうか。
「我々にはそんな力はないそうだよ」
まだ自分の立場の分かっていないメーリンにルークアも事実を告げることにした。
だが、メーリンは馬鹿にしたように笑った。
「お兄様まで。お父様はオルタナ王国では私は子爵令嬢くらいだなんて言っていたけど、そんなはずないじゃない」
「どうしたんだ?アジェル王国ではそんな言い方はしなかったではないか」
「だって、我が国の者だったかもしれないのよ?」
その言葉にルークアは、我が国の者だったかもしれないのだから、王女である自分に従うべきだったと思っていたのかと理解はしたが、行く前に話し合っておくべきだったと思った。
「疲れているのだろう?ゆっくり休みなさい」
今は何も得られなかったことで、熱くなっているようだが、いずれメーリンも知ることになるだろうとルークアも考えた。
プレストはオルタナ王国に謝罪と、迷惑料を支払いたいと申し出たが、オルタナ王国からは二度と関わらないで欲しいという返事だけであった。
それでも、使者を送ったが、入国時に断られることになった。
何も出来ないまま時間は過ぎていくことになり、プレストはどうしたらいいのかと思いながらも、他国に相談するにもメーリンのことがあるために、出来ずにいた。
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明日はまた12時と17時に1日2話、投稿いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
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