【完結】悪意か、善意か、破滅か

ハビット王国の変化４

「では、どうやって問い合わせるんだ？」
「私は窓口になっている商会に問い合わせました」
「それはどこだ？」
「オルタナ王国のＪＳという商会です」
「オルタナ王国…」

　プレストはまさかという嫌な予感が過ったが、オルタナ王国にも商会があるのは、当たり前だろうと考え直した。

　もし、ディールと関わりがあっても、オルタナ王国にあるわけではない。

「他の者もか？」
「いえ、私はオズレ王国のルフォナという商会です」
「私はカイニー王国のモンタナという商会です」

　他の２つの商会も卸売を通してだが、ＪＳとは違う商会に問い合わせをしていた。

　その言葉にプレストはホッとした。やはりオルタナ王国は関係なかったのだと、胸を撫で下ろした。

「そうか！カイニー王国なら薬も輸入させて貰っているから、問い合わせてみよう」

　プレストはカイニー王国なら、いい返事がもらえるだろうと期待しているようだったが、窓口なだけで正式な判断はディールである。

「恐れながら、モンタナも先ほどミーシュ商会会長がおっしゃった返事でした」
「カイニー王国国王陛下が、また力になってくださるだろう」

　新薬はカイニー王国がハビット王国を助けようと言ったわけではない、オルタナ王国を割り振られて、たまたまハビット王国の担当だっただけである。

　会長たちは多分、無理だろうなと思いながら、帰ることになった。

　結果は会長たちの思った通りで、モンタナではなく、ディールから品質の関係でハビット王国には輸出することは出来ないと返事が来た。

　ディールからきちんと返事が来ただけでも、国王ということを考慮してくれたのだろうという対応であった。

　プレストはカイニー王国の国王陛下といい関係だと思っているが、親しいわけでもなく、簡単に口添えをして貰えるだろうと連絡をしたが、ディールについて、こちらは関与が出来ることではないという返事であった。

　カイニー王国が運営しているわけではないので、当たり前だが、プレストは理解が出来ていなかった。

「なぜだ！」

　ルークアも事情を聞き、プレストが輸入が出来るようになるかもしれないと言っていたために、その場にいたが、駄目だったのだなと理解した。

「国王が口添えすれば、了承するだろう。なぜしてくれないのだ」
「カイニー王国の商会は、ディールの関連商会なのでしょう？そんな力はないのではありませんか」

　ルークアもディールのことは知っており、関連商会ならばただの窓口でしかないのではないか。それならば、ディールに従うしかない上に、国王陛下でもどうにもならないのではないか。

「だが、その商会に話をすればいいではないか」
「圧力でも掛けて、撤退するなどと言われたら困るからではないですか」
「そんなことは頼んでいない」
「それでも国王陛下から言われれば、十分に圧力ですよ」
「だが、それとなく言ってくれてもいいではないか」

　ルークアやメーリンはフォンターナ家を下に見て、王族同士なら力になってくれると考えていたが、プレストもプレストで、王族なら国が困っている時は、助けてくれると考えており、やはり親子なのであった。

　流行り病の薬で助けて貰ったために、カイニー王国ならば、今回も大丈夫だと妙な自信を持っていた。

「ディールにではないのでしょう？」
「それはそうだが…ならば、その商会から買えるようにして貰うなり出来るだろう」
「元はディールの商品なら、無理ではありませんか」

　ルークアも色々聞いてはみたが、商会は商会で繋がりがあり、信用を第一にしていることを知った。

　卸売は安く仕入れて、利益を出したい。ゆえにハビット王国にも勝手にディールの商品を卸していた。申請国以外に卸していたのは、重大な違反だろう。

　ルークアが当たった相手も、運搬料も込みで同価格で取引をしてくれるところはなく、値上がりを受け入れるしかないのではないかと考えていた。