152 / 196
第二王子の帰国
しおりを挟む
第二王子であるオークリーがヒューズリン王国から、ようやく帰国した。
流行り病で、ヒューズリン王国も混乱しており、オークリーは学園も休みになり、入国出国も制限されていたので、アジェル王国に戻ることも出来なかった。
「ただいま、戻りました」
「よく戻った。問題はなかったか?」
「はい、満足な時間でした。こちらも大変だったそうで…お祖母様は?」
ヒューズリン王国で祖母となるシンバリアの行為は、バトワスから知らされてはいたが、他国で聞くことになっていた。
皮肉にも、アッシュは留学先で両親の離縁、オークリーは祖母の横暴を聞くことになってしまった。
「ああ、静かに過ごしている」
シンバリアはあまり姿を現さないようにして、公務だけを行っている。
夫人たちとのお茶会も出来るはずもなく、人とも会おうともしなくなり、母であるリアット・ボアラー前侯爵夫人に、何てことをしたのか、あなたは王妃なのよと、泣かれたことがかなり効いている。
「何か言われたか?」
「言われはしましたが、大丈夫です」
オークリーは言われる前に、恥ずかしい真似をしたものだと先に伝えて、予防線を張っていた。
「すまなかったな…」
「それよりも、アマリリスが側妃になった方が驚きました」
オークリーが戻ったのは、アマリリスがペクラー王国の側妃になって、1ヶ月後であった。オルタナ王国への罰としてであることも知っている。
「ああ、自分で決めたのだから…」
「そうですか」
ペクラー王国のことは知らなかったが、第三側妃ということで、女の園に放り込まれたのだと、オークリーは思っていた。
「オークリーも、婚約者を決めなくてはならない。そのつもりでいなさい」
「はい」
アッシュとライラックに婚約者が出来たことは聞いており、自分も戻ったらそうなるだろうと思っていた。
オークリーはバトワスに挨拶を済ませて、アッシュの元へ向かった。
「戻りました」
「ああ、おかえり」
「兄上、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう」
「アマリリスのことも驚きました」
「ああ、私たちもほとんど事後報告でな。自分で決めたのだから」
アッシュ、ライラック、マグノリア、オーキッド、ヴァイオラには、アマリリスがペクラー王国の第三側妃として嫁ぐことが決まったと言われて、誰もいくら他国とはいえ、羨ましいとは思えなかった。
だが、アマリリスは機嫌良くしていたので、見守ることしか出来なかった。
「父上もそう言っていましたが、酷いところなんですか?」
「分からないらしい。父上も罰にならないのではないかと思ったそうだが、戻られて、いい顔をしているだけではないかとも言っていた」
「何かあれば、アマリリスのことですから言って来るでしょう」
アッシュとオークリーも、アマリリスが何も言って来ないことから、上手くやっているのだろうと思ったのである。
「そうだな、オークリーも婚約者を決めなくてはならないと言われなかったか?」
「ええ、言われました」
王太子争いをするつもりはないが、公爵令嬢を婚約者にしたことで、兄はこれで間違いなく王太子になれると思っているのだろうと、オークリーも感じていた。
「それよりも商会に伝手が出来たんですよ」
「大丈夫なのか?」
アッシュも伝手が欲しかったが、国内販売のみだと言われていた。
「学園ではない場所で、大きな商会の関係者と知り合いまして、それでこちらに送ってくれることになっているのです」
「取引ではなく、商会から?」
「いえ、その方からです」
「国内販売、転売禁止の商会ではないのだろうな?」
「ええ、大丈夫です」
「それならいいが…」
商会との取引ではないことには引っ掛かったが、オークリーとは留学先が違うために大丈夫なのだろうと、あまり深くは考えなかった。
流行り病で、ヒューズリン王国も混乱しており、オークリーは学園も休みになり、入国出国も制限されていたので、アジェル王国に戻ることも出来なかった。
「ただいま、戻りました」
「よく戻った。問題はなかったか?」
「はい、満足な時間でした。こちらも大変だったそうで…お祖母様は?」
ヒューズリン王国で祖母となるシンバリアの行為は、バトワスから知らされてはいたが、他国で聞くことになっていた。
皮肉にも、アッシュは留学先で両親の離縁、オークリーは祖母の横暴を聞くことになってしまった。
「ああ、静かに過ごしている」
シンバリアはあまり姿を現さないようにして、公務だけを行っている。
夫人たちとのお茶会も出来るはずもなく、人とも会おうともしなくなり、母であるリアット・ボアラー前侯爵夫人に、何てことをしたのか、あなたは王妃なのよと、泣かれたことがかなり効いている。
「何か言われたか?」
「言われはしましたが、大丈夫です」
オークリーは言われる前に、恥ずかしい真似をしたものだと先に伝えて、予防線を張っていた。
「すまなかったな…」
「それよりも、アマリリスが側妃になった方が驚きました」
オークリーが戻ったのは、アマリリスがペクラー王国の側妃になって、1ヶ月後であった。オルタナ王国への罰としてであることも知っている。
「ああ、自分で決めたのだから…」
「そうですか」
ペクラー王国のことは知らなかったが、第三側妃ということで、女の園に放り込まれたのだと、オークリーは思っていた。
「オークリーも、婚約者を決めなくてはならない。そのつもりでいなさい」
「はい」
アッシュとライラックに婚約者が出来たことは聞いており、自分も戻ったらそうなるだろうと思っていた。
オークリーはバトワスに挨拶を済ませて、アッシュの元へ向かった。
「戻りました」
「ああ、おかえり」
「兄上、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとう」
「アマリリスのことも驚きました」
「ああ、私たちもほとんど事後報告でな。自分で決めたのだから」
アッシュ、ライラック、マグノリア、オーキッド、ヴァイオラには、アマリリスがペクラー王国の第三側妃として嫁ぐことが決まったと言われて、誰もいくら他国とはいえ、羨ましいとは思えなかった。
だが、アマリリスは機嫌良くしていたので、見守ることしか出来なかった。
「父上もそう言っていましたが、酷いところなんですか?」
「分からないらしい。父上も罰にならないのではないかと思ったそうだが、戻られて、いい顔をしているだけではないかとも言っていた」
「何かあれば、アマリリスのことですから言って来るでしょう」
アッシュとオークリーも、アマリリスが何も言って来ないことから、上手くやっているのだろうと思ったのである。
「そうだな、オークリーも婚約者を決めなくてはならないと言われなかったか?」
「ええ、言われました」
王太子争いをするつもりはないが、公爵令嬢を婚約者にしたことで、兄はこれで間違いなく王太子になれると思っているのだろうと、オークリーも感じていた。
「それよりも商会に伝手が出来たんですよ」
「大丈夫なのか?」
アッシュも伝手が欲しかったが、国内販売のみだと言われていた。
「学園ではない場所で、大きな商会の関係者と知り合いまして、それでこちらに送ってくれることになっているのです」
「取引ではなく、商会から?」
「いえ、その方からです」
「国内販売、転売禁止の商会ではないのだろうな?」
「ええ、大丈夫です」
「それならいいが…」
商会との取引ではないことには引っ掛かったが、オークリーとは留学先が違うために大丈夫なのだろうと、あまり深くは考えなかった。
3,224
あなたにおすすめの小説
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
王家の賠償金請求
章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。
解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。
そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。
しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。
身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。
『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる