【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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第二王子への訪問者2

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「病院…というのは?」
「コルトの手前、娘は頭がおかしくなったと病院に入れるしかありません。そうしなければ、一族に袋叩きに遭ってしまいます」
「…それは」

 一族が購入が出来なくなるのなら、酷く責められることは想像が出来たはずなのに、大丈夫だと言われて、見ない振りをしていた。

「それほどのことをしたのです。自業自得です。リハナは与えることで、自分に返してくれると思うところがあり、そのことで婚約が駄目になりました。殿下に媚びを売って、与えて貰う。結婚したかったのだと思います」
「私とですか?」

 リハナは可憐な女性だった。オークリーも一瞬も考えなかったわけではない。だが、それは使えると思ったことが大きかった。

「殿下でも、殿下に紹介して貰えたらくらいに思っていたのでしょう」

 リハナが一切、口を割らなかったのも、言ってしまえば返して貰えなくなると思ってのことだった。

「それがきっと、今回のことを招いたのだと思います。殿下を責めるつもりはありませんが、今度一切連絡はしないでください」
「…はい」
「押し掛けて申し訳ございませんでした」
「いえ、こちらこそ無理な願いをしていたようで、申し訳ない」

 メファーセン伯爵は、深く頭を下げて帰って行った。

「何てことをしたのだ…令嬢も令嬢だが、お前もお前だ」
「申し訳ございません」

 さすがにリハナが病院に入れられることには責任を感じたが、こんなに大事になるとは思っていなかった。

「取引がしたかったのですが、断られてしまい…」
「断られたのなら、分かっていたことじゃないか。何をしているのだ…令嬢の将来を変えてしまったんだ、反省しろ」
「はい…ですが、売ってくれないなんておかしいじゃないですか」

 オークリーの知る商会はいつもペコペコしているために、客の方が偉い、買う方が強いという認識で、買ってあげるのだからと思っていた。

 だが、コルトにはあっけなく断られ、アジェル王国という名前を出してしまったので、苦情を入れさせていただきますとまで言われてしまい、不味いような気がして引き下がることにしたのである。

「結婚の約束などしていないだろうな?」
「していません!」

 結婚どころか、恋仲になるような話もしていない。だが、メファーセン伯爵の話が本当なら、商品を渡してから返して貰おうと思っていたのかもしれない。

 問題のあるような令嬢には見えなかったが、少し怖くなった。

「彼女が上客だから大丈夫だからと言って、それならばと思ったのです」
「だが、お前も分かっていて、頼んだのだろう?」
「それはっ」
「はあ…あちらも責任があると言ってくれから良かったものの…」
「でも本当に素晴らしい物ばかりなんです!褒めてやったというのに」

 バトワスはアニバーサリーがあれば、手に入っただろうと思ったが、今更言っても仕方ない。

「コルトは、ディールの商会なのかもしれないな」
「ディール?」
「ディールは特定の国で、国内販売のみで行っている商会だ。我が国は既に断れれているがな」

 アジェル王国もアニバーサリーが撤退してから、父・オイスラッドがディールの商会に頼み込んで、問い合わせたが、販売国に入っていないと断られている。

「なぜですか」
「品質保証のために、特定の国にしか商会はないそうだ」

 オイスラッドもどうにかと願ったが、あんなにいい商会だったアニバーサリーを、追い出したのはアジェル王国だろうと言われれば、何も言えなかった。

「でも、ヒューズリン王国は隣ですよ?」
「そうだな…だが断られたらそれで終わりだよ。ハビット王国も、輸入のことで困っているそうだが、我が国だって同じだからな」
「ハビット王国が?」
「ああ、あちらももしかしたらディールの販売国に入っていないのかもしれない」
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