【完結】悪意か、善意か、破滅か

帰ってくれ

「ですが！」
「陛下は会議中ですが、報告だけは行い、さすがに失礼だと許可を貰っております」

　その言葉に、オークリーもさすがに何も言えなくなった。

「あの、それは…」
「今、ハビット王国は大変だと新聞で読みました。それなのに、王女であるあなたがここにいていいのですか？」
「それ、は…」

　いつもはハキハキした王女だったはずが、明らかに様子がおかしい。

「お引き取りください、ルークア王太子殿下にも帰られたと手紙を追加で出します」
「で、でも」
「まさか、逃げて来たのですか？もしかして、オルタナ王国に行かれたのはあなたなのですか？」

　バトワスはオルタナ王国で問題を起こして、ハビット王国に居づらくなって、体よくアジェル王国にやって来たのではないかと考えた。

「…え」
「問題を起こしたのではありませんか？」
「いえ、失礼なのはあちらの方で！そうです！王太子殿下にも、フォンターナ家、レオラッド大公の失礼な態度を聞いて欲しいのです！王太子殿下なら分かってくれますよね？」
「何を…言っているのですか？」

　バトワスはその言葉で、メーリンが問題を起こしたことは確実となった。

「フォンターナ家の方、とても失礼だったのです。調べてもくれなくて、知らないの一点張りで」
「知らないだけではありませんか」
「それでも、私が頼んでいるのですから、調べますというのが常識でしょう？出て行って貰って正解だったのではありませんか」

　はあ、信じられないわという口振りで、これが本性だったのかと悟った。

「…本気で言っているのですか？」
「ええ、オークリー殿下もそう思いますでしょう？」
「っえ、いえ…」

　さすがにオークリーも、両親が迫害したのにも関わらず、オルタナ王国に助けて貰ったことを聞いており、はいとは言えなかった。

　オークリーもハビット王国のことは調べており、大変だなと思っていたが、メーリンが王宮におり、運命だとすら思ったが、確かに今、ここにいていいのかと思うようになった。

「どうして？折角、研究が進むと思ったのに、役立ってくれないから、何だか私のやる気までもなくなってしまったのよ。本当に罪深いわ」

　メーリンは母・ケラーに現実を突きつけられたにも関わらず、認めたくなかった。

　王宮でも兄に相手をして貰えず、義姉も子どもの世話で忙しいために、居場所がなく、そうだ！アジェル王国に行ってみようと思い、手紙を書いたのである。

「お引き取りください。我が国はオルタナ王国に感謝をしており、そのような考えを持つ王女殿下とは関わりを持ちたくありません」
「え…どうされたの？」

　メーリンは折角、追い出したことを肯定してあげているのに、思った返答ではなく、驚いた。

「お帰りくださいと申しております」
「私は味方なのですよ！」
「どこが味方ですか？結構です」
「っな！」
「王太子殿下にも全て伝えさせていただきます。あなた、勝手に出て来たのなら、さらに不味いことになるのではありませんか？」
「そんなことはありませんわ」

　ふんと言わんばかりに、背もたれに背中を預けると、オークリーは信じられない顔をしていた。

　その姿に、さすがに侍女が声を掛けた。

「王女殿下、帰りましょう。問題になります」
「何ですって！」
「侍女の方の言う通りです。断ったにも関わらず、勝手に他国に押し掛けているのですよ」

　メーリンは図らずとも、オルタナ王国と同じことをしていることに気付いていない。

「そんなことないわ」
「帰りましょう、許可を貰っていないなど聞いていません」
「うるさいわね」
「追い出させて貰うことになりますよ」
「っな！分かったわよ、もう協力してあげないんだから」

　ふんと言いながら、メーリンは足早に王宮を出て行き、侍女と護衛だけが深く頭を下げていた。