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グッバイ
「帰って、念のためお医者様に診て貰った方はよろしいのではなくて?」
「は、はい」
侍女はハイリーを何とか立たせて、馬車に連れて行き、エルムたちは手伝うこともなく、その姿を見ていた。
「お変わりなかったわ」
「あの調子だったのかい?」
「ええ、お母様によくたかりにきていたそうよ。適当に試供品を渡していたと言っていたわ」
オルダは遠回しに言えば言っていないと思っているのか、恥ずかしげもなく、『良いわね、私も試してみたいわ』と、先程の調子で言っていたのである。
「価値も分かっていないと?」
「ええ、そういうことでしょうね。あの人は、私と結婚すればアニバーサリーが自分の物なるような感覚だったのでしょうね」
ハイリーは際立って見目が良い方ではなかったが、流行り物を身に付けたり、使ったりすることで、周りに羨ましいと思われることをとても好んでいた。
だから、アニバーサリーが嫁の実家の商会であることは、とても重要であった。それなのにジェフは何の価値もないシャーリンと結婚したいと言い出して、許すわけにはいかなかった。
「そんなはずないだろう」
「だから、婚約を解消させるわけにはいかなかった」
「父親は?」
「お金よ」
マクローズ伯爵夫妻が婚約解消を認めなかったのは、相手がフォンターナ伯爵家でないといけなかったためである。
「分かり易いな」
「分かり易くていいとも言えるけどね」
「いいことはないだろう」
「ひとり息子ですからね」
ジェフは、マクローズ伯爵家の一人息子であった。ゆえにエルムの相手を変えることも出来ず、ジェフに出て行けとも言えない状況であった。
ハイリーは孫が沢山産まれたことは嬉しく、その点についてはシャーリンによくやったとすら思っていた。
だが、お金にも婚約にも困ることなど考えておらず、しかも孫の内の二人は血の繋がりがなかったと知って、頭がパンクしてしまったほどである。
それからは被害者なのだと、周りに言ったりもしたが、ハイリーが使っていい言葉ではないと思われるだけであった。
「悪くないと言っていたな、ふざけやがって」
メイリクスもどの口が言うのだと思いはしたが、口を開いたらエルム以上に怒ってしまいそうだったので、黙っていた。
「おそらく本当にそう思っているのよ。傷付けた時は気にしている振りはするけど、傷付いた時は過剰に嘆く、そういう方なのよ」
「親にも問題があったんだな…」
「私の印象としては親ではなく、人としてでしょうね」
「なるほどな…」
エルムは人をじっくり見るので、メイリクスよりも見る目がある。
ならば、なぜジェフ・マクローズと婚約させたのかと思うが、フォンターナ家から婚約中でも不都合があれば婚約は解消すると事前に言われていたのである。だからこそマクローズ伯爵夫妻は、自分の欲を優先し、誠実に対応もしないままであった。
「スッキリしたかい?」
「スッキリは随分前からしているわよ?まさか会うとは思わなかったけど、エノンと言い、ここは何かあるのかしらね…」
フォンターナ家の跡地を見渡し、ここに来る者が珍しいということもあるが、因縁の地なのだろうとエルムもメイリクスも感じていた。
その後、エルムとメイリクスはオルタナ王国に戻った。
「嫌な人には会ったけど、来て良かったわ」
「それなら良かった」
メイリクスはオルタナ王国に行くエルムについて、義家族にオズワルドとオルダ、ジェラルドに何か気を付けることを聞きに行くと、皆に揃って当時のエルムが考えている時間で動けなかった分、赴くままに過ごさせてやって欲しいと言われていた。
ゆえに腹が立っても口を出さずに、エルムの言葉で、エルムの感情で動いて貰い、寄り添うことがメイリクスのするべきことだと理解していた。
そして、エルムは二度とアジェル王国に足を踏み入れることはなかった。
「は、はい」
侍女はハイリーを何とか立たせて、馬車に連れて行き、エルムたちは手伝うこともなく、その姿を見ていた。
「お変わりなかったわ」
「あの調子だったのかい?」
「ええ、お母様によくたかりにきていたそうよ。適当に試供品を渡していたと言っていたわ」
オルダは遠回しに言えば言っていないと思っているのか、恥ずかしげもなく、『良いわね、私も試してみたいわ』と、先程の調子で言っていたのである。
「価値も分かっていないと?」
「ええ、そういうことでしょうね。あの人は、私と結婚すればアニバーサリーが自分の物なるような感覚だったのでしょうね」
ハイリーは際立って見目が良い方ではなかったが、流行り物を身に付けたり、使ったりすることで、周りに羨ましいと思われることをとても好んでいた。
だから、アニバーサリーが嫁の実家の商会であることは、とても重要であった。それなのにジェフは何の価値もないシャーリンと結婚したいと言い出して、許すわけにはいかなかった。
「そんなはずないだろう」
「だから、婚約を解消させるわけにはいかなかった」
「父親は?」
「お金よ」
マクローズ伯爵夫妻が婚約解消を認めなかったのは、相手がフォンターナ伯爵家でないといけなかったためである。
「分かり易いな」
「分かり易くていいとも言えるけどね」
「いいことはないだろう」
「ひとり息子ですからね」
ジェフは、マクローズ伯爵家の一人息子であった。ゆえにエルムの相手を変えることも出来ず、ジェフに出て行けとも言えない状況であった。
ハイリーは孫が沢山産まれたことは嬉しく、その点についてはシャーリンによくやったとすら思っていた。
だが、お金にも婚約にも困ることなど考えておらず、しかも孫の内の二人は血の繋がりがなかったと知って、頭がパンクしてしまったほどである。
それからは被害者なのだと、周りに言ったりもしたが、ハイリーが使っていい言葉ではないと思われるだけであった。
「悪くないと言っていたな、ふざけやがって」
メイリクスもどの口が言うのだと思いはしたが、口を開いたらエルム以上に怒ってしまいそうだったので、黙っていた。
「おそらく本当にそう思っているのよ。傷付けた時は気にしている振りはするけど、傷付いた時は過剰に嘆く、そういう方なのよ」
「親にも問題があったんだな…」
「私の印象としては親ではなく、人としてでしょうね」
「なるほどな…」
エルムは人をじっくり見るので、メイリクスよりも見る目がある。
ならば、なぜジェフ・マクローズと婚約させたのかと思うが、フォンターナ家から婚約中でも不都合があれば婚約は解消すると事前に言われていたのである。だからこそマクローズ伯爵夫妻は、自分の欲を優先し、誠実に対応もしないままであった。
「スッキリしたかい?」
「スッキリは随分前からしているわよ?まさか会うとは思わなかったけど、エノンと言い、ここは何かあるのかしらね…」
フォンターナ家の跡地を見渡し、ここに来る者が珍しいということもあるが、因縁の地なのだろうとエルムもメイリクスも感じていた。
その後、エルムとメイリクスはオルタナ王国に戻った。
「嫌な人には会ったけど、来て良かったわ」
「それなら良かった」
メイリクスはオルタナ王国に行くエルムについて、義家族にオズワルドとオルダ、ジェラルドに何か気を付けることを聞きに行くと、皆に揃って当時のエルムが考えている時間で動けなかった分、赴くままに過ごさせてやって欲しいと言われていた。
ゆえに腹が立っても口を出さずに、エルムの言葉で、エルムの感情で動いて貰い、寄り添うことがメイリクスのするべきことだと理解していた。
そして、エルムは二度とアジェル王国に足を踏み入れることはなかった。
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