【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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異変1

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「フォンターナ家が出て行くと言った際に、謝罪に行ったのかと思っていたのですが、出て行くまで追い詰める気はない、商会はどうなるのかなどと、謝罪もせず言っていたそうです」

 これも執事が今更だと思い、ジェフに伝えていないことであった。

「っな!そうだったのか」
「はい…それでフォンターナ騎士団長と、前伯爵に怒鳴られ、力ずくで追い返されたそうです」

 バトワスですら、当然そうするだろうなと思った。フォンターナ騎士団長もだが、前伯爵もオズワルドと同様に屈強な騎士であった。

 マクローズ伯爵夫妻がお二人に、敵うはずがないことも明らかである。

「申し訳ございません…如何なる罰でも受けます」
「王家から罰するのも、何か違う気がするしな…」
「いいえ、それでも構いません。そうされるべきです」

 ジェフは自分も含めて、烏滸がましいということも理解しながらも、このままというわけには、どうしても出来なかった。

「だが、息子の結婚もあるだろう?」
「私が退けばいいことです」

 嫡男はまだ若いが、問題の多いジェフが当主より余程いい。

「父上と相談してみる」
「よろしくお願いいたします」

 バトワスは相談をしたが、オイスラッドも難しい気持ちであった。

「マクローズ伯爵家を罰したところで、あちらもどうでもいいことだろう」
「はい、不愉快ではあるが、また関わることの方が嫌なのではないでしょうか」
「今までのことを考えれば、そういうことだろうな」

 結局、受け取っては貰えない謝罪を過去を含めて、するしかないのではないかという結論に至り、そのように手紙は出したが、返事が来ることはなかった。

 しばらくすると、どこかの国で起こった時と同じように、アジェル王国の商会は一部の商品が輸入が出来なくなっていた。

 一部と言っても、珍しい物でも、贅沢品などもなく、砂糖や塩、小麦粉やお茶、紙など生活日需品であった。

 ゆえに、生活へ直結する物ばかりであった。

 取引きをしていたアジェル王国の二つの商会は、急に卸売から今まで販売していた商品を卸せなくなったと言われることになり、実はディールの商品を卸売から輸入していたことが発覚した。

 だが、ディールの輸出国にアジェル王国は入っていない。

 ハビット王国と違ったのは、卸売はディールから契約を切られたことであった。猶予すら与えられることはなく、契約違反であるとされた。

 卸売は謝罪して、どうにか続けて欲しいと願ったが、叶うことはなかった。

 卸売にとって、ディールの商品を扱えることも名誉ではあるが、品質の保証も価格帯も、素晴らしい商会であった。

 アジェル王国が入っていないことは承知していたが、少しならばバレないだろうと、3年前から行われていた。3年もあれば、生活に既に根付いている。

 しかも真っ当に卸すよりも、利益になるために欲を出してしまったのである。

 ディールはハビット王国の違反の際に、既にアジェル王国にも卸売が販売していることを把握していたが、様子を見ている状況であった。

 ハビット王国と同様に、同等の物を用意するとなれば、高額になる。アジェル王国も、選択することになったのである。

 ハビット王国は心当たりがなかったが、アジェル王国はディールの関係者に心当たりがあった。

 バトワスとオイスラッドは、重い口を互いに開くことになった。

「エルム大公閣下夫人の影響ですよね…」
「間違いないだろうな。ディールに話をされて、卸売が調べられたのかもしれない…そこへ我が国が入っていた」
「切られて当然ですね」
「ああ、マクローズ前伯爵夫人は何てことをしてくれたんだとも思うが、元々輸入国に入っていない。アニバーサリーを追い出したのだから、当然だろう」
「はい…」

 追い出した一人であるバトワスには、何も言えなかった。

「受け入れるしかないな…」


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本日もお読みいただきありがとうございます。

本日、同時刻より新しいお話「永遠の愛にはイロドリを」投稿をしております。
よろしければ、お読みいただければと思います。

そして、こちらの作品は来週中には終わる予定です。

最後までよろしくお願いいたします。
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