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破滅か
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「しかも貴族限定で、あの当時、適齢期の方たち限定。お年寄りに生まれたら、さすがに何事かとなるでしょうからね」
「医師の立場でも、危険だと思う」
「そうよね。子どもたち世代に適用されないから、いずれ戻ると思うわ」
「そうなのか…確かにアジェル王国は、子沢山ではないと聞いている」
現在のアジェル王国は、多くて三人くらいとなっており、子沢山で困った親世代を学んだとされているが、まさか復讐が終わったからだとは考えることはないだろう。
「戻ったということでしょうね。あと、子どもが生まれやすくするのは、夫婦限定にしたとお聞きしたの」
「だが、托卵も沢山あったそうだ」
親子鑑定が他国とは比べ物にならないほど行われて、多くの父親が違う子供が見付かったと、義弟・メイリクスから報告を受けていた。
その際に女性の性欲が強いということも聞き、だからこそ男性の隠し子が一切なかったわけではないが、托卵とは比べ物にならない程度であった。
「メイにマクローズ伯爵家も、そうだったと聞いたわ」
メイと言うのは、エルムだけが呼ぶ、メイリクス・レオラッドの愛称である。
「聞いていたのか?」
「ええ、でもそこで初めて、夫婦でも別の相手とも、子どもが出来やすくなっていたことに気付いたの。それまで気付きもしなかったわ。私は駄目ね」
「そんなことはない、エルムは考える必要もないことだ」
ジェラルドだったら気付いてはいただろうが、エルムがそんなことを考えることが時間の無駄である。きっとそのようなことは、アンディータ様も望んでいない。
「皆、私に優し過ぎるわ」
「そんなことはない」
ただ馬鹿な伯爵令息の婚約者だっただけのエルムに、理不尽に傷付けた者たちに謝る権利も与えてやることはない。謝りたいなど、どれだけ烏滸がましいのだと、ジェラルドは常々思っていた。
だが、もう死ねばいいなどとは思っていないために、オルタナ王国よりも下だとも知らしめるためにも、フエイウイルスの薬だけは輸出することは許可した。
「エルムは自分で消化するのに時間が掛かるだけだよ」
「もう!それは私の短所だわ」
「いや、長所だよ。浅慮の方が短所だよ」
エルムにとってジェラルドは優しい兄で、頼りになる兄で、尊敬の出来る兄である。離れていても、いつだって考えるだけで、安心することが出来る。
「でもお兄様は、賢いから薄々分かっていたのでしょう?」
「まあ、異常だったからね。きっと何かあるのだろうと思っていた。父上と母上には?」
「一切、聞かれていないわ」
両親は既に興味のないものとしたのか、分かっていたのか分からないが、必要ないとしたのだろう。
「全ては私が原因よ、ごめんなさい」
「いや、謝ることはない。善意だろう?」
「うーん、でもね、考え続けていたら、これは善意なのか、悪意なのか、それとも破滅への序章なのではないかと思ったの」
「いや、それでも私はエルムを支持するよ」
「もう!でも、ありがとうお兄様。メイも天罰だよなんて言っていたわ」
メイリクスは、アンディータ様のことは知らない。
他家に出た者への加護は続くが、フォンターナ家の歴史を知ることはない。
「天罰で間違いはないよ」
「ええ、そうね」
そう言って、エルムは今でも健在の小花が咲くような笑顔を見せた。ジェラルドはその顔を見るだけで、心が温かくなった。
フォンターナ家も、いつか当主があまりにも目に余る際は、挿げ替えるために、加護を外されて、他家に出た者が戻るということもあるかもしれない。
ただ今世は祖父母も父母も、ジェラルドとエルムも、アンディータ様にとても愛された人生だった。
愛する女神が現れない限り、ハビット王国は遠くない未来、そしてアジェル王国はこれからによって、エルムの言ったように破滅するかもしれない―――。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
敢えて描きませんでしたが、
家族に愛されるバックボーンがあると、
私も心が穏やかな気持ちでした。
始まりと終わりは最初から決まっていたので、
書ききれて良かったです。
沢山の方にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
他の作品はまだしばらく続きますので、
よろしければ、よろしくお願いいたします。
「医師の立場でも、危険だと思う」
「そうよね。子どもたち世代に適用されないから、いずれ戻ると思うわ」
「そうなのか…確かにアジェル王国は、子沢山ではないと聞いている」
現在のアジェル王国は、多くて三人くらいとなっており、子沢山で困った親世代を学んだとされているが、まさか復讐が終わったからだとは考えることはないだろう。
「戻ったということでしょうね。あと、子どもが生まれやすくするのは、夫婦限定にしたとお聞きしたの」
「だが、托卵も沢山あったそうだ」
親子鑑定が他国とは比べ物にならないほど行われて、多くの父親が違う子供が見付かったと、義弟・メイリクスから報告を受けていた。
その際に女性の性欲が強いということも聞き、だからこそ男性の隠し子が一切なかったわけではないが、托卵とは比べ物にならない程度であった。
「メイにマクローズ伯爵家も、そうだったと聞いたわ」
メイと言うのは、エルムだけが呼ぶ、メイリクス・レオラッドの愛称である。
「聞いていたのか?」
「ええ、でもそこで初めて、夫婦でも別の相手とも、子どもが出来やすくなっていたことに気付いたの。それまで気付きもしなかったわ。私は駄目ね」
「そんなことはない、エルムは考える必要もないことだ」
ジェラルドだったら気付いてはいただろうが、エルムがそんなことを考えることが時間の無駄である。きっとそのようなことは、アンディータ様も望んでいない。
「皆、私に優し過ぎるわ」
「そんなことはない」
ただ馬鹿な伯爵令息の婚約者だっただけのエルムに、理不尽に傷付けた者たちに謝る権利も与えてやることはない。謝りたいなど、どれだけ烏滸がましいのだと、ジェラルドは常々思っていた。
だが、もう死ねばいいなどとは思っていないために、オルタナ王国よりも下だとも知らしめるためにも、フエイウイルスの薬だけは輸出することは許可した。
「エルムは自分で消化するのに時間が掛かるだけだよ」
「もう!それは私の短所だわ」
「いや、長所だよ。浅慮の方が短所だよ」
エルムにとってジェラルドは優しい兄で、頼りになる兄で、尊敬の出来る兄である。離れていても、いつだって考えるだけで、安心することが出来る。
「でもお兄様は、賢いから薄々分かっていたのでしょう?」
「まあ、異常だったからね。きっと何かあるのだろうと思っていた。父上と母上には?」
「一切、聞かれていないわ」
両親は既に興味のないものとしたのか、分かっていたのか分からないが、必要ないとしたのだろう。
「全ては私が原因よ、ごめんなさい」
「いや、謝ることはない。善意だろう?」
「うーん、でもね、考え続けていたら、これは善意なのか、悪意なのか、それとも破滅への序章なのではないかと思ったの」
「いや、それでも私はエルムを支持するよ」
「もう!でも、ありがとうお兄様。メイも天罰だよなんて言っていたわ」
メイリクスは、アンディータ様のことは知らない。
他家に出た者への加護は続くが、フォンターナ家の歴史を知ることはない。
「天罰で間違いはないよ」
「ええ、そうね」
そう言って、エルムは今でも健在の小花が咲くような笑顔を見せた。ジェラルドはその顔を見るだけで、心が温かくなった。
フォンターナ家も、いつか当主があまりにも目に余る際は、挿げ替えるために、加護を外されて、他家に出た者が戻るということもあるかもしれない。
ただ今世は祖父母も父母も、ジェラルドとエルムも、アンディータ様にとても愛された人生だった。
愛する女神が現れない限り、ハビット王国は遠くない未来、そしてアジェル王国はこれからによって、エルムの言ったように破滅するかもしれない―――。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。
敢えて描きませんでしたが、
家族に愛されるバックボーンがあると、
私も心が穏やかな気持ちでした。
始まりと終わりは最初から決まっていたので、
書ききれて良かったです。
沢山の方にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
他の作品はまだしばらく続きますので、
よろしければ、よろしくお願いいたします。
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