【完結】本音を言えば婚約破棄したい

野村にれ

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編入生

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「そういえば大事な話」
「本当にあったのね、大事な話」

 リファにはいとこにあたる、同い年のミハンナ・フレシャス伯爵令嬢が別のクラスにいるため、彼女から色んな情報を聞いて来る。

「Cクラスに新しい子が編入して来るって聞いた?令嬢ですって」

 Aクラスは王家、公爵家、侯爵家の令息令嬢。BとCクラスは伯爵家、子爵家、男爵家の令息令嬢となっている。爵位もあるが、学力の問題が大きい。王家、公爵家、侯爵家は幼少期からカリキュラムが組まれており、伯爵家、子爵家、男爵家とは差が大きいのである。

 同じような教育をした家や勉強が好きな者もいるが、爵位の高い者たちばかりの中に入るのは息が詰まるだろうと、この分け方になっている。

「わざわざこの国に?」
「それが親が離縁して、ヤム王国から出戻りだって。母親がうちの子爵令嬢だったらしくて」
「ヤム王国って、不貞に厳しい国だったわよね」
「そうそう、不貞=人で為らずみたいなところがあるらしいわ」

 ヤム王国は昔、降嫁した王女が夫の不貞で命を絶ったことで、不貞に非常に厳しい。結婚をした相手を裏切ることは、尊厳を奪われる行動だとされている。

 そんな国の人がよくもペリラール王国の令嬢を妻にと望んだものだと思った。なかなか受け入れられないのではないか。

「何があったのか、どちらが悪いのかは分からないけど、余程残れない事情があるのかもしれないわね」
「え?」
「だってわざわざペリラール王国に来るなんて。ヤム王国に残った方ががいいじゃない。不貞なんて一人で出来ないのだから、しなければいいわけだし」

 母親は離縁の理由が分からないため、残れるか分からないが、子どもには国を選ぶことが出来るはずである。

「案外、自由恋愛したいタイプかもしれないわよ」
「そういうこともあるのかしら。でも前にあったわよね、ペリラール王国の令嬢は寛容だと思われて、不貞も喜んで許すと思って娶ったけど、実は違ってわざと奔放だと吹聴されたり、揉めたという話」
「うわ、確かにあったわね」

 子爵令嬢はラシーネ・コルトバ。正確には子爵家の当主の妹の娘ということになるらしい。明るいブラウンの髪に、ダークグリーンの瞳で、清楚で美しい令嬢であった。そのため、周りに令息が集まっている。ラシーネも知り合いがいないため、話し掛けられて戸惑ってはいるが、嫌がっている様子ではない。

 クラスの令嬢たちも様子を見ており、令嬢たちは自由恋愛派と自由恋愛反対派に明らかに分かれている。たまに仲が良いだけで、違ったという子が混ざっていることがあるが、概ね分かれている。

 ラシーネが編入して、1週間が経つ頃には事情が分かり始めた。

「どうやら、カナンの推理は当たっていたみたい」
「推理?」
「うちの国の令嬢は寛容だと思われて、不貞も喜んで許すと思って娶ったけど、実は違ってって話」
「まさか?」
「ええ、そういうことらしいわ。結婚したい相手が平民で、親に反対されて、わざわざうちの国から妻を娶って、平民の愛人?平民の妻って言っていたらしいけど、二重生活していたんですって」
「うわ」
「で、母親は薄々気付いていたそうだけど、彼女のために我慢していたけど、二重生活が別の人にバレてしまって公になってしまったそうよ」
「あの国で不貞ってどうなるの?」
「伯爵家だったのだけど、貴族に非ずってことで、一代限りにされてしまって、近い内に没落予定だそうよ」
「うわ、さすが厳しいわね」

 ペリラール王国では二重生活などよくあることで、罰などない。嫌ならば離縁、あとは慰謝料くらいである。

「平民の妻にも子どもがいて、男の子だったそうで、嫡男になる予定だったけど、全てなし。むしろ、慰謝料を払うために平民の妻は肉体労働に課せられているそうよ。男の子って、もう大きいけど、孤児院ですって」
「貴族も平民も不貞は許さないってことね」
「ええ、平民の方がまだ優しくはあるそうだけど、今回の場合は相手が貴族だからね。それで母子は戻って来たそうよ」
「それなら戻るしかないわね」
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