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夫と義兄2
「浮気じゃないんだな?」
「ああ、違うよ。彼女も既婚者だ」
「良かった、噂になっているようだから、ユーリの耳にも入っているんじゃないかと思ったんだ。違うなら心配ないな」
キリアムは心底とホッとしたようで、ようやく顔を綻ばせ、強く掴んでいた肩から手を離したほどだった。
「そんなに噂になってるのか?」
「そうだよ、俺も疑われたんだぞ!」
「それは悪かったよ」
「誤解を受けるようなこともしないでくれ」
「分かったよ、気を付ける」
邸に戻った際に、ユーリにも嫌な思いをさせてしまったかもしれないと、知っているのか、恐る恐る訊ねたはずだ。
「私の変な噂を聞いてないか?」
「噂?」
「浮気しているとか」
「ああ、そうね」
ユーリは悲しいや怒りではなく、目を逸らして、困ったような顔をしていた。その顔に私は慌てて否定した。
「違うからな!多分、一緒にいたのは女性騎士で、彼女は既婚者なんだ」
「私は気にしていないから」
「ならいいんだ。今日、キリアムから聞いたんだよ。あいつも疑われたみたいで」
「そうなの」
気にしていないと言っていたが、気にしていたのかもしれない。いや、信じていたのかすら、今となっては分からない。リリアが押し掛けて来て、やっぱりと噂通りだったのだと思われたかもしれない。
私は不貞をしておきながらも、ユーリは離縁などと言い出すことはない、バレることはないとなぜか思っていた。問い詰められても、ユーリに不貞を認めることは絶対にしなかっただろう。
女性を抱くことが大したことではないとも思っていた。リリアだけではない、一晩限りの相手もいた。私はキリアムの言う通り、バレなければ、なかったことと同じだと思っていた。
キリアムであれば、こんなことにはならなかっただろう。
「念のため聞いておきたいのだが、あの女と関係を持ったりはしていないよな?」
「はあ!あるわけないだろう!お前と一緒にするな!」
「良かった…あの女が私だと思って、関係を持ったと言ったんだ。さすがに二年前の子が腹にいるというのは、考えられないだろう?」
「それで俺だと思ったのか!ふざけるな!」
「念のためと言っただろう、おそらく騎士の誰かだとは思っていたが、私に一番似ているのはキリアムだろう」
キリアムは苦い顔をしているが、オーランドとしては憂いが晴れて良かった。万が一ということがあってはならない。
「そんな女のせいで、ユーリは死ぬのことに躊躇がなかったのか…ふざけるなよ」
「ああ、その通りだ」
「だが、私も怒れる立場ではない、アベリーのことは私たちのせいだ…アベリーがあんなことをしなければ、ユーリは生きていたことは揺るがない」
「きっと、義父上が誘導したんだ」
「メルベールは、義父が死ねばよかったのにと言ったそうだ」
「メルベールが?」
意外だった、確かにメルベールはユーリを義父から守ろうとはしていたが、そこまで言うとは思わなかった。
「ああ、話をしに行っても、ユーリのことを話そうともしなかったそうだ。それでカッとなったそうだ。だが結局はアベリーのせいだということは分かっている、誰かを責めて楽になりたい…私たちも愚かだ」
「義母上には会ったか?」
「いや、色々と忙しいようで、まだ会っていない。会ったのか?」
キリアムとメルベールは、サイラに会いに何度か伯爵邸に行っていたが、出掛けていると会うことすら出来ていなかった。
「少しだけだが。ユーリを看取ったのは、義母上だけだったそうだ。私はまだユーリがいない実感がないが、義母上は一番実感されているはずだ」
「そうか…義母上が。私もユーリは、クレナ伯爵邸にいるのではないかと思ってしまっている。目覚めて、全部、夢なのではないかと…」
「ああ、夢ならどれだけいいか…」
「ああ、違うよ。彼女も既婚者だ」
「良かった、噂になっているようだから、ユーリの耳にも入っているんじゃないかと思ったんだ。違うなら心配ないな」
キリアムは心底とホッとしたようで、ようやく顔を綻ばせ、強く掴んでいた肩から手を離したほどだった。
「そんなに噂になってるのか?」
「そうだよ、俺も疑われたんだぞ!」
「それは悪かったよ」
「誤解を受けるようなこともしないでくれ」
「分かったよ、気を付ける」
邸に戻った際に、ユーリにも嫌な思いをさせてしまったかもしれないと、知っているのか、恐る恐る訊ねたはずだ。
「私の変な噂を聞いてないか?」
「噂?」
「浮気しているとか」
「ああ、そうね」
ユーリは悲しいや怒りではなく、目を逸らして、困ったような顔をしていた。その顔に私は慌てて否定した。
「違うからな!多分、一緒にいたのは女性騎士で、彼女は既婚者なんだ」
「私は気にしていないから」
「ならいいんだ。今日、キリアムから聞いたんだよ。あいつも疑われたみたいで」
「そうなの」
気にしていないと言っていたが、気にしていたのかもしれない。いや、信じていたのかすら、今となっては分からない。リリアが押し掛けて来て、やっぱりと噂通りだったのだと思われたかもしれない。
私は不貞をしておきながらも、ユーリは離縁などと言い出すことはない、バレることはないとなぜか思っていた。問い詰められても、ユーリに不貞を認めることは絶対にしなかっただろう。
女性を抱くことが大したことではないとも思っていた。リリアだけではない、一晩限りの相手もいた。私はキリアムの言う通り、バレなければ、なかったことと同じだと思っていた。
キリアムであれば、こんなことにはならなかっただろう。
「念のため聞いておきたいのだが、あの女と関係を持ったりはしていないよな?」
「はあ!あるわけないだろう!お前と一緒にするな!」
「良かった…あの女が私だと思って、関係を持ったと言ったんだ。さすがに二年前の子が腹にいるというのは、考えられないだろう?」
「それで俺だと思ったのか!ふざけるな!」
「念のためと言っただろう、おそらく騎士の誰かだとは思っていたが、私に一番似ているのはキリアムだろう」
キリアムは苦い顔をしているが、オーランドとしては憂いが晴れて良かった。万が一ということがあってはならない。
「そんな女のせいで、ユーリは死ぬのことに躊躇がなかったのか…ふざけるなよ」
「ああ、その通りだ」
「だが、私も怒れる立場ではない、アベリーのことは私たちのせいだ…アベリーがあんなことをしなければ、ユーリは生きていたことは揺るがない」
「きっと、義父上が誘導したんだ」
「メルベールは、義父が死ねばよかったのにと言ったそうだ」
「メルベールが?」
意外だった、確かにメルベールはユーリを義父から守ろうとはしていたが、そこまで言うとは思わなかった。
「ああ、話をしに行っても、ユーリのことを話そうともしなかったそうだ。それでカッとなったそうだ。だが結局はアベリーのせいだということは分かっている、誰かを責めて楽になりたい…私たちも愚かだ」
「義母上には会ったか?」
「いや、色々と忙しいようで、まだ会っていない。会ったのか?」
キリアムとメルベールは、サイラに会いに何度か伯爵邸に行っていたが、出掛けていると会うことすら出来ていなかった。
「少しだけだが。ユーリを看取ったのは、義母上だけだったそうだ。私はまだユーリがいない実感がないが、義母上は一番実感されているはずだ」
「そうか…義母上が。私もユーリは、クレナ伯爵邸にいるのではないかと思ってしまっている。目覚めて、全部、夢なのではないかと…」
「ああ、夢ならどれだけいいか…」
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