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長兄と義姉2

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「難しいと思った方がいい。それでなくても皆に避けられているというのに…」
「どういう意味?友人なら妊娠中だからよ?カゼット侯爵家に、誘われなかったのはハービスのせいじゃない」
「君もだよ、友人の奥方にアイレットのことを言っただろう?私が話し掛けてあげているのに、楽しそうじゃない。なんか気持ち悪い、不出来な義妹は要らないとか言ったんだろう?私はそんなことは言っていない。君の意思だろう?」
「それは…でも友人たちは何も言っていなかったわ」
「それは訂正したからだろう?」
「え…」
「まさかしていないのか…いや、もう今さらだな」

 ハービスは訂正をしていなかったこと怒りを一瞬覚えたが、もう何をしてもこうなった以上今さら言っても仕方ない。

「わざわざ訂正する必要はないと思ったから…」
「気付いていなかったのか?女性はそういったことに鋭いだろう?」

 気付いていないのも、周りが気遣ったのか、気付けないのか、どちらにしてももう関係ないことだ。友人たちにも二度と会うことはないだろう。

「それはハービスが言ったからじゃない」
「君は嫁ぎ先の文句を言っていることになる」
「でもどうせ出て行く人じゃない」
「それでも嫁ぎ先の家族の文句を公に言う人だと認定され、どんどん価値を下げていたそうだよ、だから誰も誘ってくれなかったんだ」

 自身の家族のことならばまだ家のことと思える部分もあるが、婚家のこと、義妹のことを悪く言うような嫁だと思われて当然だろう。

「そんな…」
「確かに頭がいいだけで使えない者はいる。だが、君は言うべきではなかった」
「修道院なんて…」
「ならば代わりに返済するのか?恨んでいる者もいるだろう、だから修道院なんだ」
「危険だって言うの…」
「そうだ、罪状は聞いただろう?」
「…それは」

 リリンナは取り調べで初めてソック伯爵家に対する罪状を聞いた。さすがに麻薬の密輸・密売に子どもの人身売買と言われて、自身の父親がそんなことをしていたのかと思うと、震えが止まらなかった。

 だけど、本当に何も知らなかった。唯一、あり得ると思ったのはワインが沢山あったので、ワインの密輸くらいだった。

 祖父母も母も関与していたとされ、弟は知らなかったとは言えないと、まだ取り調べを受けているという。

 リリンナだけが聞くことがないからと監視できる保護施設に移されたのだ。

 家族も拘束されているので誰も会いには来れない。最後に全員で会ったのがいつだったか、それが本当の最後になるなんて思いもしなかった。

 ようやく来たのがハービスと義父で、マスタール侯爵家が許すはずがないのは分かっていた。でもどこかで期待せずにはいられなかった。こんなことは夢だと、間違いだったと言ってくれるのではないかと願っていた。

「マスタール侯爵家として、君を許すわけにはいかない。正義感の強い君なら分かるだろう?ソック伯爵家だってそうだったはずだ…残念でならないよ」
「ああ…どうして」

 リリンナはぽろぽろと涙を零し、顔を覆ってしまった。

「裁判で公になるはずだ、きっと修道院でも確認することは出来るはずだ。君も関わった者として、何か思い出すようなことがあれば証言し、生きて償って欲しい。お別れだ、さようなら」

 そう言われても、リリンナは顔を上げることはなかった。それでいいとハービスは父に行きましょうと声を掛けて、保護施設を後にした。

 リリンナは証言の機会がないとは言えないため、皆の罪が決まるまで、ここで待ち続けるしかないのだ。
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