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叔母
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アイレットとレオ・ライプ・ローグレイン大公は既に皆に許可を得ていることから、先に結婚をして、結婚式はヒルズ王国のマリアリージュ教会と、オプティ王国のクリスティアナ教会で行われることになった。
義両親、前々国王陛下夫妻には大歓迎を受けたが、甥である国王陛下、王妃陛下にも会うことになり、さすがに恐縮した。
「緊張しますか」
「ええ、久しぶりのドレスもさわそわしてしまって、修道女の服は心を落ち着かせる効果があるのかもしれません」
「ああ、それはあるかもしれませんね」
謁見の間ではなく、応接室に通され、おかげで距離が近い。
「アイレット・ローグレインと申します」
「よく来てくれた、叔母君よ」
「陛下?叔母君はないだろう」
そう、アイレットは国王陛下の叔母となってしまった。
「だが、伯母君じゃないか」
「叔母様、妻のハンナと申します」
「はい、是非、叔母と呼んでください」
「アイレット?」
「初めて呼ばれます。嬉しいです」
「そうなの?」
「ええ、これまでアイレット、先生、お姉ちゃん、鬼ババアとしか呼ばれたことがないものですから」
妹だったことで、先生と呼ばれたことも、お姉ちゃんと呼ばれたことも嬉しかったが、また名前が増えることはアイレットにとって嬉しいことだった。
「最後に不穏な言葉も聞こえたが…では是非、呼んでやってください」
「おい、調子がいいな。では、叔母君の教会での教えと、第三者機関の提案について感謝する」
「いえ、形にされたのは動かれた方ですから」
「だが、教会のことは叔母君がいてこそだった。教会に来る子どもも増えて、学習意欲が今までと比べ物にならないと聞いている。あの粘土も感動した…どうしてあんな風に出来ているのかと」
「ありがとうございます、最近は型を使っているので、随分早く出来るようになりました」
他のお店も考えたが、やはり自身で選んだりする場合にはパン屋が一番で、クリスティアナ教会はフォリッチ公爵家が量産してくれるので、使わなくなったパンを地方の教会に送ったりもしたが、普及させるために型を作って、形成が苦手な修道女でも出来るようにもした。
「伺っています。皆で作り方を教わる集まりもとても人気だと」
「はい、いい交流の場にもなりますし、粘土の会社も売り上げが伸びて、寄付してくださるようになったものですから」
元々、粘土自体は昔からあったが、アイレットが手芸用の粘土であった。侯爵令嬢だったために、粘土を買うお金くらいは出せたが、修道女になるとそうはいかない。
頼めば出してくれるだろうが、依存し続けるのも、教会として今後のためにもならないと思っていた。
「私も参加したかったのだけど、さすがに周りに迷惑を掛けると言われて」
「私であればいつでも言ってください。これからは粘土職人にでもなろうかと思っておりますから」
「まあ、本当に?社交辞令ではないですよ?」
「ええ、いつでも呼んでください」
アイレットは修道女ではないので、やることがなくなってしまった。大公家は領地もあまり広くなく、社交も必要最低限で、修道院で子どもたちに勉強を教えたり、甥と姪になった王子や王女の勉強をみたりすることになった。
「先生、ここはどう解くの?」
「先生、ここ覚えられない」
ハンナ王妃陛下は本当に教えて欲しかったようで、王女も連れて、義母と義父も集まって、粘土の授業を受けるようになった。
「先生、うまく形になりません」
「先生、色はこのくらいでしょうか」
おかげで結局、叔母ではなく、ほぼ皆に先生と呼ばれている。
義両親、前々国王陛下夫妻には大歓迎を受けたが、甥である国王陛下、王妃陛下にも会うことになり、さすがに恐縮した。
「緊張しますか」
「ええ、久しぶりのドレスもさわそわしてしまって、修道女の服は心を落ち着かせる効果があるのかもしれません」
「ああ、それはあるかもしれませんね」
謁見の間ではなく、応接室に通され、おかげで距離が近い。
「アイレット・ローグレインと申します」
「よく来てくれた、叔母君よ」
「陛下?叔母君はないだろう」
そう、アイレットは国王陛下の叔母となってしまった。
「だが、伯母君じゃないか」
「叔母様、妻のハンナと申します」
「はい、是非、叔母と呼んでください」
「アイレット?」
「初めて呼ばれます。嬉しいです」
「そうなの?」
「ええ、これまでアイレット、先生、お姉ちゃん、鬼ババアとしか呼ばれたことがないものですから」
妹だったことで、先生と呼ばれたことも、お姉ちゃんと呼ばれたことも嬉しかったが、また名前が増えることはアイレットにとって嬉しいことだった。
「最後に不穏な言葉も聞こえたが…では是非、呼んでやってください」
「おい、調子がいいな。では、叔母君の教会での教えと、第三者機関の提案について感謝する」
「いえ、形にされたのは動かれた方ですから」
「だが、教会のことは叔母君がいてこそだった。教会に来る子どもも増えて、学習意欲が今までと比べ物にならないと聞いている。あの粘土も感動した…どうしてあんな風に出来ているのかと」
「ありがとうございます、最近は型を使っているので、随分早く出来るようになりました」
他のお店も考えたが、やはり自身で選んだりする場合にはパン屋が一番で、クリスティアナ教会はフォリッチ公爵家が量産してくれるので、使わなくなったパンを地方の教会に送ったりもしたが、普及させるために型を作って、形成が苦手な修道女でも出来るようにもした。
「伺っています。皆で作り方を教わる集まりもとても人気だと」
「はい、いい交流の場にもなりますし、粘土の会社も売り上げが伸びて、寄付してくださるようになったものですから」
元々、粘土自体は昔からあったが、アイレットが手芸用の粘土であった。侯爵令嬢だったために、粘土を買うお金くらいは出せたが、修道女になるとそうはいかない。
頼めば出してくれるだろうが、依存し続けるのも、教会として今後のためにもならないと思っていた。
「私も参加したかったのだけど、さすがに周りに迷惑を掛けると言われて」
「私であればいつでも言ってください。これからは粘土職人にでもなろうかと思っておりますから」
「まあ、本当に?社交辞令ではないですよ?」
「ええ、いつでも呼んでください」
アイレットは修道女ではないので、やることがなくなってしまった。大公家は領地もあまり広くなく、社交も必要最低限で、修道院で子どもたちに勉強を教えたり、甥と姪になった王子や王女の勉強をみたりすることになった。
「先生、ここはどう解くの?」
「先生、ここ覚えられない」
ハンナ王妃陛下は本当に教えて欲しかったようで、王女も連れて、義母と義父も集まって、粘土の授業を受けるようになった。
「先生、うまく形になりません」
「先生、色はこのくらいでしょうか」
おかげで結局、叔母ではなく、ほぼ皆に先生と呼ばれている。
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