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王妃陛下のありがたい取り調べ1
まずはソアリスと騎士団長であるバーセム公爵と共に、ルックリンツソル・コンパルの取り調べが行われることになった。
連れて来られたルックリンツソルは腕は縄で縛られており、ソアリスとルックリンツソルの間には長い机が置かれて、二人の間には距離があった。
が、ソアリスはじっとルックリンツソルの顔を見て、みるみるうちに顔を歪ませ、大きな声を上げた。
「ちょっと!」
「王妃陛下どうしましたか」
慌ててバーセム公爵が尋ねた。
「鼻毛が出ているわよ!貴族牢にも鏡はあったわよね!」
「何と!失礼な!」
バーセム公爵も彼をじっと見つめると、確かに左の鼻の穴から一本のぞいている。
「おい!誰か引っこ抜け!」
ソアリスもバーセム公爵も笑いもせず珍妙な指示を出されて、騎士たちは戸惑い、上半身をもじもじと動かすしかなかった。
だが、慣れている侍女たちと護衛騎士たちはそれはいけない、そんなものが出ていたら取り調べなどできるはずがない。そして、ソアリスについに口に出させてしまったと冷静に思っていた。
ルックリンツソルも真っ赤になって拭おうと手を動かそうとした。
「おい、動くな!公爵、自分で収めさせましょう」
「さようでございますね、誰かこの者のハンカチを持って来なさい」
「は!」
騎士もそれならばと急いで取りにいき、その間ソアリスはじっと落とすなよという目で睨み付けていた。しばらくしてハンカチが持ってこられると、皆にじっと見られながらルックリンツソルはハンカチで鼻を拭うこととなった。
彼がハンカチを鼻から離すと、ソアリスがじっと見つめた。
「よし!取り調べを始めましょう!」
「は!これより、ルックリンツソル・コンパルによる被害者の場所移動の自由を制限した監禁罪、人の身体に怪我を負わせた傷害罪について取り調べを行います」
バーセム公爵はソアリスの横にドーンと座っている。
「罪を認めますか?」
ソアリスは表向きの悪の親玉とは思えない、穏やかに問い掛けた。
「いえ、彼女は望んで邸にいただけです」
「彼女とは?お名前をおっしゃって」
「マリリアです」
「あなた、恋人だと言ったわよね?あれは?」
「確かに恋人ではありませんが、マリリアが侯爵家の令嬢ではないことは分かったのではありませんか」
ルックリンツソルはセザンアース侯爵令嬢ではないことは、さすがに分かっているだろうと思い、これで貴族牢から出してもらえると考えていた。
「平民だったら何をしてもいいと思っているという意味かしら?」
「そうではありませんが……ですが、セザンアース侯爵令嬢を捜してらっしゃるとおっしゃいました」
「ええ、そうね」
「ならば違うということは確かでしょう?」
相手は平民なのだから、監禁と暴行に関しては慰謝料でも払えばいい。
問題はセザンアース侯爵令嬢だったらという場合で、確かにマリリアがそうだったら、国際問題にされたかもしれないが、彼女は絶対に侯爵令嬢ではない。
「どうして?」
「セザンアース侯爵令嬢とは年齢が違うはずです」
「あら?あなた見ただけで年齢が分かるの?」
ダイヤを26歳だと思っていたのかは分からないが、見る目があるとは思えない。
「いえ、そうでは……なく」
「アルマー・セザンアース侯爵令嬢をご存知だったの?お知り合い?」
「いえ、知り合いではありませんし、お会いしたこともありませんが……」
「彼女が血筋であることは知っていたのかしら?」
「あ、いえ」
そう言いながら、ルックリンツソルはソアリスの視線から目を反らした。
「答えなさい」
「そうではないかとは思っていましたが、出会ったのはたまたまで、監禁や暴行は行き違いがあったと思います」
「は?」
ソアリスの一言で部屋中の空気が冷えたが、ルックリンツソルは焦っており気付かなかった。
連れて来られたルックリンツソルは腕は縄で縛られており、ソアリスとルックリンツソルの間には長い机が置かれて、二人の間には距離があった。
が、ソアリスはじっとルックリンツソルの顔を見て、みるみるうちに顔を歪ませ、大きな声を上げた。
「ちょっと!」
「王妃陛下どうしましたか」
慌ててバーセム公爵が尋ねた。
「鼻毛が出ているわよ!貴族牢にも鏡はあったわよね!」
「何と!失礼な!」
バーセム公爵も彼をじっと見つめると、確かに左の鼻の穴から一本のぞいている。
「おい!誰か引っこ抜け!」
ソアリスもバーセム公爵も笑いもせず珍妙な指示を出されて、騎士たちは戸惑い、上半身をもじもじと動かすしかなかった。
だが、慣れている侍女たちと護衛騎士たちはそれはいけない、そんなものが出ていたら取り調べなどできるはずがない。そして、ソアリスについに口に出させてしまったと冷静に思っていた。
ルックリンツソルも真っ赤になって拭おうと手を動かそうとした。
「おい、動くな!公爵、自分で収めさせましょう」
「さようでございますね、誰かこの者のハンカチを持って来なさい」
「は!」
騎士もそれならばと急いで取りにいき、その間ソアリスはじっと落とすなよという目で睨み付けていた。しばらくしてハンカチが持ってこられると、皆にじっと見られながらルックリンツソルはハンカチで鼻を拭うこととなった。
彼がハンカチを鼻から離すと、ソアリスがじっと見つめた。
「よし!取り調べを始めましょう!」
「は!これより、ルックリンツソル・コンパルによる被害者の場所移動の自由を制限した監禁罪、人の身体に怪我を負わせた傷害罪について取り調べを行います」
バーセム公爵はソアリスの横にドーンと座っている。
「罪を認めますか?」
ソアリスは表向きの悪の親玉とは思えない、穏やかに問い掛けた。
「いえ、彼女は望んで邸にいただけです」
「彼女とは?お名前をおっしゃって」
「マリリアです」
「あなた、恋人だと言ったわよね?あれは?」
「確かに恋人ではありませんが、マリリアが侯爵家の令嬢ではないことは分かったのではありませんか」
ルックリンツソルはセザンアース侯爵令嬢ではないことは、さすがに分かっているだろうと思い、これで貴族牢から出してもらえると考えていた。
「平民だったら何をしてもいいと思っているという意味かしら?」
「そうではありませんが……ですが、セザンアース侯爵令嬢を捜してらっしゃるとおっしゃいました」
「ええ、そうね」
「ならば違うということは確かでしょう?」
相手は平民なのだから、監禁と暴行に関しては慰謝料でも払えばいい。
問題はセザンアース侯爵令嬢だったらという場合で、確かにマリリアがそうだったら、国際問題にされたかもしれないが、彼女は絶対に侯爵令嬢ではない。
「どうして?」
「セザンアース侯爵令嬢とは年齢が違うはずです」
「あら?あなた見ただけで年齢が分かるの?」
ダイヤを26歳だと思っていたのかは分からないが、見る目があるとは思えない。
「いえ、そうでは……なく」
「アルマー・セザンアース侯爵令嬢をご存知だったの?お知り合い?」
「いえ、知り合いではありませんし、お会いしたこともありませんが……」
「彼女が血筋であることは知っていたのかしら?」
「あ、いえ」
そう言いながら、ルックリンツソルはソアリスの視線から目を反らした。
「答えなさい」
「そうではないかとは思っていましたが、出会ったのはたまたまで、監禁や暴行は行き違いがあったと思います」
「は?」
ソアリスの一言で部屋中の空気が冷えたが、ルックリンツソルは焦っており気付かなかった。
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