私のバラ色ではない人生

野村にれ

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詰問1

「あの……息子は……」
「申し訳ございません」

 戸惑うケインドル、どうしたらいいのか分からない様子のリリンナッタは、沈黙に耐えられず、すぐに根を上げた。

「謝るのはまずは私か?まあ、謝罪くらいしか頭に浮かばないか。息子は今日、何をしていた?」
「勉強を、していました」
「今朝、息子は何を食べた?」
「おそらく、パンやたまごを……」
「私は結婚した者は知らぬが、息子が食べた物、娘が食べた物を知っている。今、どこにいて何をしているかも知っている。お前たちの息子は今、何をしている?」
「それは……」

 ケインドルは答えることはできるが、ソアリスがなぜそのようなことを聞いているのかについては、心当たりがあった。

 お前たちは息子のことを知っているのかということだろう。

「言いたくないか?それとも、言えないのか?」
「両方でございます」

 ケインドルはソアリスの目が見られず、項垂れながら答えた。

「なぜこのような状況になっている?アマリリス・トレアンか?似顔絵の女性は似ていただろう?」
「はい……」

 ケインドルはアマリリスに似ていたことで、セザンアース侯爵令嬢に何かしたのではないかとは考えていた。だが、別邸にいたなどと考えることはなかった。

「別邸にはいつから?」
「半年くらい前からです。トレアン子爵令嬢のことで、言い合いになりまして、叱り付けたら、別邸で暮らすようになりまして……お恥ずかしい話ですが、元より、部屋から出て来なかったので、別邸に移ってもあまり変わらないと言いますか」

 元より、ルックリンツソルと両親は成長してから、距離ができていたが、貴族はべったり一緒という方が少ないために、普通だと思っていた。

「話はしていないの?」
「いえ、後継者教育は行っております」
「本邸でか?」
「課題を与えて、持って来るという形です」

 ルックリンツソルが望んだ形ではあったが、きちんと課題はやっており、継ぐ覚悟はあるのだと思っていた。

「では、別邸で何をしていたか分からないということか」
「はい……」
「女性がいたことも知らなかったのか?」
「はい、知りませんでした……ですが、責任は理解しております」

 知らなかったからと言って、親に責任がないとは思っていないが、どうしてこんなことになったのかは、いまだに理解ができていなかった。

「……息子は何を、したのでしょうか」
「それはこれから、じっくり調べるが、邸から探していた女性らしき方が見付かったのは、見ただろう?」
「は、い」

 別邸から女性が連れて行かれていた、あの方がアルマー・セザンアース侯爵令嬢なのだろうかと、体が冷えていくのを感じていた。

「セザンアース侯爵令嬢だったのでしょうか」
「それを含めて、確認を取る。だが、床下収納に眠らされたと思われる状態で見つかっている。言っている意味は分かるな?」
「はい……」

 リリンナッタは口元を押さえ、嗚咽が洩れそうなのを堪えていた。

「性癖についてはどうだ?片鱗があっただろう?気付かなかったのか?気付いていて、放っておいたのか?」
「それは」
「性癖など……」
「何だ?夫人、ハッキリ言え」

 ソアリスに強く言われて、リリンナッタはビクリと体を震わせたが、答えなければならないと手を口元から離した。

「恐れながら、息子の性癖など気付きようがありません」
「人様の指を舐めたのに?」
「っ」
「アマリリス・トレアンの指を舐めたのだろう?」

 抗議を受けているのだから知らないはずはないと、ソアリスはさも当然のように問い掛けた。

「夫人は断っているのに、好意を寄せられた者に、指を舐められて興奮するのか?」
「い、いえ」
「息子は夫人に似ておるな、似た顔が人様の指を勝手に舐めて、不愉快で羞恥心で一杯にならぬのか?信じられん」

 ソアリスは顔を歪ませて、首を振った。

 似ていない子どもでも嫌だが、自分に似ているユリウスとアリルがしている方が、気分が悪くて堪らないと考えていた。

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