私のバラ色ではない人生

野村にれ

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憂鬱

 二人には緊張させることにはなるが、医師の立ち合いの元、ソアリスが話を聞くつもりであった。

 ママード医師が退室すると、ソアリスはまた天を仰ぎ、侍女たちは一斉項垂れた。当たりましたねと軽口を言うようなことではなく、溜息が部屋中に流れた。

 再び、報告書を作りながらも、妊娠の有無が気になっていた。できていなくとも良かったとは言えないが、できていたら、どうなってしまうのか。

 そして、しばらくしてからママード医師がやって来た。入室した表情で、ソアリスたちは覚悟を決めた。

「妊娠していたのね?」
「はい」
「そう……」

 ソアリスは現実を受け止め、天を仰ぐことはしなかった。

「治療には気を付けて、落ち着いてから話をした方がいいわね」
「そう思います」
「まだ洩らさないようにして、騎士団長には伝えて、判断を任せるわ」

 何ヶ月かは本人が目を覚まさなければ分からないだろうと、これからのことは考えなくてはならないが、まずは落ち着いてからだろう。

「はい、マリーさんも検査を行いましたが、妊娠されていません」
「そう」

 まだルックリンツソルの子どもだと決まったわけではないが、保護された一人は妊娠していた事実は動かない。

「食事はされまして、お話もできるということです」
「もう?」
「はい、私の主観ですが、彼女は自分のことというよりは、ミリスさんのことを話したいのかもしれません」
「なるほど、分かったわ」
「メディナ、医務室に近い部屋を用意してくれる?あまり華美ではないところね」
「はい!」

 メディナとは速足で準備に飛び出して行った。

「ママード医師、お茶は何ならいいかしら?」
「そうですね、ジュースなどの方がいいかもしれませんね」
「ポーリア、いくつかジュースを準備するように言って」
「はい!」

 ポーリアも速足で準備に飛び出して行った。

「キャロライン、バーセム公爵を呼んで来てくれる?」
「はい!」

 キャロラインも速足で飛び出して行き、ソアリスは溜息を抑えられたなかった。

「はあ……向き合うことが多過ぎるわね」
「お察しいたします」
「ママード医師も、これからのことよろしくね」
「はい、もちろんでございます」

 走って来たのかと思う速さで、キャロラインとバーセム公爵がやって来た。

「バーセム公爵、報告があります」
「はい」
「もう一人の方は、ミリス・エザンさん。クロンデール王国の平民だと言っていたそうよ、使用人の紹介所を当たってもらえる?」
「はい、承知いたしました」

 バーセム公爵は頭の中で、ミリス・エザンと反芻した。

「それで……あなたが話すべきだという方だけには伝えてもらっていいのだけど、まだ洩らさないで欲しい話をいいかしら?」
「はい」
「ミリスさんは妊娠しているわ……」

 バーセム公爵は声は洩らさなかったが、いつもの凛々しい顔が何とも言えない顔に代わった。

「何も言えないわよね」
「はい……」
「まだルックソ野郎の子どもと決まったわけではないが、事実は事実」

 何とか名前はかろうじて残っている渾名になり、キャロラインは素晴らしい名付けだと、呼び名は決定かなと考えていた。

「はい、そうですね」
「マリーさんは妊娠していない。話ができるということだから、私がこれから話を聞いて来るわ。また報告いたします」
「承知いたしました」

 バーセム公爵は頭を下げて、退出していった。

「ママード医師、後で呼びに行くわ。戻って」
「はい」

 ソアリスもさすがに力を失っており、いつもの覇気がなかった。

「陛下に伝えて来ましょうかね……キャロラインはここで、二人を待っていてくれる?」
「はい」

 護衛を一人だけ連れて、アンセムの執務室のドアの前に立った。

「ソアリスでございます」

 いつもより声も小さく、覇気のない声にアンセムも、オーランとクイオも驚いた。

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