821 / 862
正体6
「テイシー先生、緊張されているのは見て分かるほどだけど、私は取って食べたりしないから安心してちょうだい」
「っは、っは、っはい!」
ソアリスが穏やかに声を掛けると背筋を伸ばして、目を見開いた。
「王妃陛下をこんなに近くで、私、息をしてもいいのでしょうか?学園長、私、臭くありませんか?変な匂いしませんか?ここにいて大丈夫そうですか?」
それは入室前に聞くべきだっただろうという混乱具合になっており、学園長も頭を抱えた。
「えっ、臭いですか?早く言ってくださいよ」
「大丈夫だから落ち着きなさい。こんなに緊張するとは思っていなかった」
「こんなにおそばに私が座るなど……25メートルくらい離れてでないと」
「そんなことしたら大声を出すようになるわよ?」
ソアリスを遠くからしか見たことのない者が大多数であるために、落ち着かないのだろうが、ますます混乱を極めている。
「っは、はい、大声は出せますが、うるさくしてしまいます」
「王妃陛下はお忙しいのだから、早く話しなさい」
「は!失礼しました」
学園長はエリサがあたふたすればするほど、時間を取っていることを指摘し、ようやく大事な時間を奪っている現実にハッとし、深呼吸した。
「ゆっくりでいいわ、何か些細なことでも知っていたら聞かせて」
「はい。パール・バイロンとは親しいわけではなかったのですが、話だけは聞くことがございまして、退学になった後、男性とよく一緒にいたそうです。その男性は平民ではあるのですが、どこの商会かまでは覚えていないのですが、そちらの従業員でして、その方と一緒に王都を去ったと聞いております」
パールの嫌がらせによるビリジュ伯爵家からの追放も話題になったが、退学も話題に上がることになった。その後も気になっていたために見掛けた同級生から回ってきた情報であった。
「王都の商会ではないの?」
「その男性は研修で来ていたようで、元の商会に帰ったそうです。その際にパールも一緒に行ったということでした。これはパールを見掛けた同級生が別の商会に聞いたそうなので、噂ではございません」
お得意様の貴族相手なら、どこの誰かまでは聞いても分からなくとも、事情を話すだろう。
「まあ、素晴らしい情報をお持ちじゃない」
「あ、ありがとうございます」
「王都に戻って来たということはないのね」
「はい、私はですが、そのような話は聞いたことがありません」
「そう、ありがとう」
「いいえ、とんでもございません」
学園長にパール・バイロンのことを知っているか、退学後の話を聞いているかとだけ問われて、「はい」と言ったために連れて来られたが、お力になれたようで達成感でいっぱいであった。
「パールの母親や姉のことは聞いたことはある?」
「ビリジュ伯爵家を出てからということでございますよね?」
「ええ」
「いえ、聞いたことがありません」
「そう、ありがとう。助かったわ」
「いえ、当然のことをしたまででございます」
エリサもようやく上手く息ができるようになり、震えも止まっていた。
「ちなみに学園長、覚えている限りでいいのだけど、パールの姉が学園に在籍していたかは分かる?」
「いえ、私の覚えている限り、していなかったと思います。ビリジュ伯爵家に入る前だったのではないでしょうか」
「そう、ありがとう」
学園長とエリサは帰って行き、他の学校は専門的であるために、おそらく学園ではないとすれば、女学校に通っていた線がさらに高くなった。
そして、続いては女学校の校長とこちらも女性がやって来た。
「王妃陛下にご挨拶申し上げます」
「おうひぃへぃかにございさつ申し上げます」
またこちらも校長は何度も会っているために大丈夫そうだが、女性の方が別の種類の緊張が伺えた。
「っは、っは、っはい!」
ソアリスが穏やかに声を掛けると背筋を伸ばして、目を見開いた。
「王妃陛下をこんなに近くで、私、息をしてもいいのでしょうか?学園長、私、臭くありませんか?変な匂いしませんか?ここにいて大丈夫そうですか?」
それは入室前に聞くべきだっただろうという混乱具合になっており、学園長も頭を抱えた。
「えっ、臭いですか?早く言ってくださいよ」
「大丈夫だから落ち着きなさい。こんなに緊張するとは思っていなかった」
「こんなにおそばに私が座るなど……25メートルくらい離れてでないと」
「そんなことしたら大声を出すようになるわよ?」
ソアリスを遠くからしか見たことのない者が大多数であるために、落ち着かないのだろうが、ますます混乱を極めている。
「っは、はい、大声は出せますが、うるさくしてしまいます」
「王妃陛下はお忙しいのだから、早く話しなさい」
「は!失礼しました」
学園長はエリサがあたふたすればするほど、時間を取っていることを指摘し、ようやく大事な時間を奪っている現実にハッとし、深呼吸した。
「ゆっくりでいいわ、何か些細なことでも知っていたら聞かせて」
「はい。パール・バイロンとは親しいわけではなかったのですが、話だけは聞くことがございまして、退学になった後、男性とよく一緒にいたそうです。その男性は平民ではあるのですが、どこの商会かまでは覚えていないのですが、そちらの従業員でして、その方と一緒に王都を去ったと聞いております」
パールの嫌がらせによるビリジュ伯爵家からの追放も話題になったが、退学も話題に上がることになった。その後も気になっていたために見掛けた同級生から回ってきた情報であった。
「王都の商会ではないの?」
「その男性は研修で来ていたようで、元の商会に帰ったそうです。その際にパールも一緒に行ったということでした。これはパールを見掛けた同級生が別の商会に聞いたそうなので、噂ではございません」
お得意様の貴族相手なら、どこの誰かまでは聞いても分からなくとも、事情を話すだろう。
「まあ、素晴らしい情報をお持ちじゃない」
「あ、ありがとうございます」
「王都に戻って来たということはないのね」
「はい、私はですが、そのような話は聞いたことがありません」
「そう、ありがとう」
「いいえ、とんでもございません」
学園長にパール・バイロンのことを知っているか、退学後の話を聞いているかとだけ問われて、「はい」と言ったために連れて来られたが、お力になれたようで達成感でいっぱいであった。
「パールの母親や姉のことは聞いたことはある?」
「ビリジュ伯爵家を出てからということでございますよね?」
「ええ」
「いえ、聞いたことがありません」
「そう、ありがとう。助かったわ」
「いえ、当然のことをしたまででございます」
エリサもようやく上手く息ができるようになり、震えも止まっていた。
「ちなみに学園長、覚えている限りでいいのだけど、パールの姉が学園に在籍していたかは分かる?」
「いえ、私の覚えている限り、していなかったと思います。ビリジュ伯爵家に入る前だったのではないでしょうか」
「そう、ありがとう」
学園長とエリサは帰って行き、他の学校は専門的であるために、おそらく学園ではないとすれば、女学校に通っていた線がさらに高くなった。
そして、続いては女学校の校長とこちらも女性がやって来た。
「王妃陛下にご挨拶申し上げます」
「おうひぃへぃかにございさつ申し上げます」
またこちらも校長は何度も会っているために大丈夫そうだが、女性の方が別の種類の緊張が伺えた。
あなたにおすすめの小説
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
真実の愛の裏側
藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。
男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――?
※ 他サイトにも投稿しています。
やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。