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正体7
王妃として女学校とも関わりはあるが、自身も通い、子どもたちも通っている学園と違って、気安い関係性ではない。
「わざわざごめんなさいね、お座りになられてください」
「ありがとうございます、失礼いたします」
「ありがとぅございます、しちゅれいいたたします」
校長も甘噛みをしている女性に気付いてはいるが、表情には出さずにソアリスの前に女性と座った。
「ご紹介させていただきます。我が校の教師であります、アリー・トオンでございます。問い合わせいただいた件に力になれると思い、連れて参りました」
「アリー・トオンでごじゃいます」
「ご丁寧にありがとうございます。ソアリス・グレンバレンでございます」
「はっ、はい!」
甘噛みは口が上手く回らないのだろうが、返事だけは先程のエリサ同様に、しっかりしている。
「緊張しているようで、失礼いたしました」
「もうしわけごじゃりません」
「いいえ、お茶を用意しましょう」
エリサの場合は震えがあったために、余計に緊張させると思い、お茶は控えることにしたが、アリーには必要だと判断した。ソアリスの言葉でポーリアが素早く用意を始めていた。
「いえいえいえ!」
「口を潤した方がいいわ」
「ありがとぅございます、恐れ入ります」
校長もここまで緊張するとは思っていなかったようで、申し訳なさそうにしている。ポーリアによって、お茶が運ばれて、アリーの前に置かれた。
「飲んで潤してちょうだい。学園長もどうぞ。私もいただくわ」
ソアリスも口を付け、校長も口を付けると、アリーもようやく口を潤した。それでもまだ緊張しているが、しばらくすれば落ち着くだろう。
「それで、いかがだったかしら?」
「ダイヤ・ケイシュー、ダイヤ・ビリジュは当校の生徒でございます」
「やはりそうだったのね、調べるの大変だったでしょう。ごめんなさいね」
学園よりも生徒数が少ないとはいえ、十年以上前の生徒の問い合わせは大変だっただろう。
「いいえ、よく覚えている生徒でしたので、すぐに思い出せました」
「まあ、もしかして化粧?」
「それもございます。派手な化粧をしておりましたので、もう少し控えた方がいいと何度も指摘いたしました」
化粧をすることはこれから必要となるために、女学校でも禁止にはしていなかったが、ダイヤは度が過ぎていた。
「それよりも素行がよくなかったのでございます」
「まあ、どのように?」
「すべてと言ってもいいかもしれません。所作やマナー、身なりも話し方も、考え方も教師として導けなかったことが不甲斐ない思いです」
何度も教師はダイヤに注意をしたが、「すみませぇん、分かりましたぁ」と言いながらも、改善が見られなかった。
「教師は大変なお仕事でしょう。それで、卒業はできたの?」
「身についているとは言えませんが、学業は終えましたので卒業はしております。こちらが卒業証明でございます。そして、写真もお持ちしました」
校長は卒業証明とダイヤの写真の入った封筒をソアリスに渡した。
「ありがとう」
ソアリスはまず卒業証明を取り出して確認し、次に写真を取り出すと、目を疑うと同時にこれはと皆が言っていたことを理解した。
「これがダイヤなのね?」
「そうでございます」
ソアリスは侍女たちに手招きして、写真を見せると目を大きくし、小さく何度も頷いた。
写真のダイヤは目元の上下に濃いラインやシャドウが入り、口紅もしっかり付けており、今のミリスと名乗っている女性とは目の大きさすら違う印象である。
「これは目を化粧以外にどうにかしているの?」
「瞼をこう引っ張たりして、止めたりするそうですよ?」
「引っ張る?止める?」
「目を大きくするために、化粧用の糊があるそうです」
「目に糊を付けるの……」
ソアリスは美容については全く無知であるために、ポーリアの説明に眉間にずっと皺を寄せたままであった。
「わざわざごめんなさいね、お座りになられてください」
「ありがとうございます、失礼いたします」
「ありがとぅございます、しちゅれいいたたします」
校長も甘噛みをしている女性に気付いてはいるが、表情には出さずにソアリスの前に女性と座った。
「ご紹介させていただきます。我が校の教師であります、アリー・トオンでございます。問い合わせいただいた件に力になれると思い、連れて参りました」
「アリー・トオンでごじゃいます」
「ご丁寧にありがとうございます。ソアリス・グレンバレンでございます」
「はっ、はい!」
甘噛みは口が上手く回らないのだろうが、返事だけは先程のエリサ同様に、しっかりしている。
「緊張しているようで、失礼いたしました」
「もうしわけごじゃりません」
「いいえ、お茶を用意しましょう」
エリサの場合は震えがあったために、余計に緊張させると思い、お茶は控えることにしたが、アリーには必要だと判断した。ソアリスの言葉でポーリアが素早く用意を始めていた。
「いえいえいえ!」
「口を潤した方がいいわ」
「ありがとぅございます、恐れ入ります」
校長もここまで緊張するとは思っていなかったようで、申し訳なさそうにしている。ポーリアによって、お茶が運ばれて、アリーの前に置かれた。
「飲んで潤してちょうだい。学園長もどうぞ。私もいただくわ」
ソアリスも口を付け、校長も口を付けると、アリーもようやく口を潤した。それでもまだ緊張しているが、しばらくすれば落ち着くだろう。
「それで、いかがだったかしら?」
「ダイヤ・ケイシュー、ダイヤ・ビリジュは当校の生徒でございます」
「やはりそうだったのね、調べるの大変だったでしょう。ごめんなさいね」
学園よりも生徒数が少ないとはいえ、十年以上前の生徒の問い合わせは大変だっただろう。
「いいえ、よく覚えている生徒でしたので、すぐに思い出せました」
「まあ、もしかして化粧?」
「それもございます。派手な化粧をしておりましたので、もう少し控えた方がいいと何度も指摘いたしました」
化粧をすることはこれから必要となるために、女学校でも禁止にはしていなかったが、ダイヤは度が過ぎていた。
「それよりも素行がよくなかったのでございます」
「まあ、どのように?」
「すべてと言ってもいいかもしれません。所作やマナー、身なりも話し方も、考え方も教師として導けなかったことが不甲斐ない思いです」
何度も教師はダイヤに注意をしたが、「すみませぇん、分かりましたぁ」と言いながらも、改善が見られなかった。
「教師は大変なお仕事でしょう。それで、卒業はできたの?」
「身についているとは言えませんが、学業は終えましたので卒業はしております。こちらが卒業証明でございます。そして、写真もお持ちしました」
校長は卒業証明とダイヤの写真の入った封筒をソアリスに渡した。
「ありがとう」
ソアリスはまず卒業証明を取り出して確認し、次に写真を取り出すと、目を疑うと同時にこれはと皆が言っていたことを理解した。
「これがダイヤなのね?」
「そうでございます」
ソアリスは侍女たちに手招きして、写真を見せると目を大きくし、小さく何度も頷いた。
写真のダイヤは目元の上下に濃いラインやシャドウが入り、口紅もしっかり付けており、今のミリスと名乗っている女性とは目の大きさすら違う印象である。
「これは目を化粧以外にどうにかしているの?」
「瞼をこう引っ張たりして、止めたりするそうですよ?」
「引っ張る?止める?」
「目を大きくするために、化粧用の糊があるそうです」
「目に糊を付けるの……」
ソアリスは美容については全く無知であるために、ポーリアの説明に眉間にずっと皺を寄せたままであった。
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