私のバラ色ではない人生

野村にれ

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ビリジュ伯爵家4

「下品だから控えるようには言っていたのですが、これが私が一番美しく見えるからと聞く耳を持ちませんで……どこで買っていたのかも分かりません」
「そう、香水も酷かったわよね」
「はい、香りが強すぎると伝えたのですが……麻痺していたのかもしれません」

 さすがにソアリスのように「くっせぇ」とは言わないが、それでも伝えてもあの状態だったのだろう。

「麻痺した三人がいたってこと?」
「そうです……使っていた部屋に消毒、清掃を入れましたから」

 ソアリスは一人でもあの威力だったのにと、メディナに目をやると眉間にしわを寄せながらも、口元は信じられないと言わんばかりに少し開いている。臭さを思い出して、鼻を使わず口で呼吸しているのかもしれない。

「ミラリア様も臭かったでしょう?」
「はい、それも嫌がらせかと思うほどでした」
「確かに身を呈して行う嫌がらせね。ある意味、臭い香りを纏って、隣にじっといるというのは己も犠牲になるけど使えるわね。絶対にやりたくはないけど」

 臭い者を連れていれば、遠巻きにされて避けられて、その者の評価も下がるだろう。前伯爵がいい例である。

 あのことで三人は勿論追いやられることになったが、前伯爵も管理ができないと評価されることになった。

「ふふっ、はい、失礼しました」
「いいえ、私は触れたわけではないけど、あそこで険しい顔をしている侍女が犠牲になりましたから」

 メディナは頷きながら、眉間の皺を伸ばしている。

「申し訳ございません」
「申し訳ございません、身体にも服にも吹きかけていたようですから」
「想像するだけで息が苦しくなるわね、鼻を摘まんで接すれば良かったわ」
「是非そうしてください。ダイヤは臭くないですか?」
「ええ、化粧もしていなかったでしょう?匂いもないわ。そうでなかったら、窓が全開になって、水洗いしなきゃいけなかったわ」

 あの頃のパールような状態なら、他の人たちに不調をきたすために、服をはぎ取って洗われることになっただろう。

「それは被害を受けなくて良かったです」
「ドレスも香水も品位を下げていると思っていなかったのか?」
「出会った時は違ったのですが、猫を被っていたのでしょう。私が見る目を誤り、娘にも嫌な思いをさせ、反省しております」

 謝罪文のような反省っぷりにさすがにソアリスもこれ以上、虐めるのはやめることにした。

 前伯爵とミラリアが帰ると、ソアリスはメディナに話し掛けた。

「匂いを思い出したの?」
「はい……あの甘ったるい香りが……吐き気がしました。ビリジュ伯爵家も臭かったのでしょうね」
「ええ、3倍だもの」
「頭が痛くなりそうですね、ご愁傷様ですとしか言えません」

 午後からはリーリーとミントと会長もやって来て、ミリスを見たことがないか確認してもらうことにした。

 ミントと会長は首をかしげていたが、応接室に戻るとリーリーは「ここまで出ているのだけど」と喉辺りを指差し、渋い表情をしながら思い出そうとしていた。

「お店はレゾナンスだと聞いたのだけど」

 娼婦は態度が悪かったり、娼婦内で争いが起こると、同じ店にいないこともあると聞いたことがあったために、ずっといたかは分からないが、何かの手掛かりにならないかと伝えると、リーリーの目が輝いた。

「レゾナンスということは花の名前ですね、あああああ!アーティチョークよ!」

 レゾナンスの娼婦は花の名前を付けることが決まっている店である。

「ああ!あの子か」
「私は見たことないけど、名前は聞いたことがあるわ」
「そうそう!」
「借金の子だね、返して辞めたと聞いていたけど」

 盛り上がっている三人をよそに、ソアリスはアーティチョークっていくら何でもと思ったが、当人が犬たちにマッシュルームと付けていることは横に置いている。

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