私のバラ色ではない人生

野村にれ

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娼婦2

「一つ聞きたいのだけど、アーティチョークは濃い化粧をしていなかった?」
「していましたわ。でもお客様がつかなくて、指導が入って薄くするようにしておりましたの。それでも濃かったですけどね」
「今のような姿ではなかったということね?」
「そうですわ、地味な顔立ちでしたから、それでもそういった方を好む方もいるのですけどね。コンプレックスだったのかもしれませんわね」

 リーリーならば、地味な部分を強みにすればもっとお客がつくのではないかと思うが、アーティチョークには譲れない部分だったのだろう。

「それはあるかもしれないわね。それで、アーティチョークは今、ミリス・エザンと名乗っているのだけど、何か思い当たることはあるかしら?」
「ミリス・エザン?聞いたことがないわ」
「ミントと会長はどう?」
「私は聞いた覚えはございませんね」

 会長はすぐに答えたが、今度はミントが考え込む番となった。

「何か聞いたことはあるのですが、誰のことだったか、少しお待ちください」
「ゆっくり考えてちょうだい」

 うーんと唸っているミントをよそに、お茶を入れ直してもらい、皆で楽しんだ。

「ミント、どちらに引っ掛かっているの?ミリス?エザン?」
「ああ!そう考えればよろしいのですね」

 リーリーに助言されたミントは、ミリスかエザンかと考えていると、ミントはハッとしたような顔をした。

「フリージアよ、彼女の本名のファミリーネームがエザンだったはずよ」
「フリージアの?」
「そうそう、フリージアはアーティチョークと同じレゾナンスでしょう?でもミリスではなかったような……私も店の子から聞いたのです」

 本名はなかなか親しくならない限りは聞くようなことはない。親しくなっても言わない者は言わず、貴族でもない限りはそれが本当とも限らない。

「では、その名前を借りたのかしら?フリージアは他国に渡ったのよね?」
「そうらしいですわね。親の母国だとも聞きましたけど、噂ですからどこまで本当かどうかは」

 ソアリスはその話からフリージアという娼婦がおり、ミリスという名前ではないが、エザンというファミリーネームであった。

「元貴族だったりするのかしら?」
「いいえ、平民だったと思います。その時に貴族なのかと聞きましたから」
「そう」

 ソアリスは念のために他国にエザンという貴族がいないか調べてみようと考えた。

「ありがとう、十分助かったわ。クッキーをお土産に持って帰って」
「まあ!王宮のですの?」
「ええ、王妃陛下大好きクッキーです。さすがに揚げ芋を持たせるわけにはいきませんからね」

 何か買ってこようかとも思ったが、皆の方が王都の店事情には詳しいために料理長に頼んで、クッキーを焼いてもらった。

「ありがとうございます」
「嬉しい!ありがとうございます」
「ありがとうございます」

 学校やビリジュ伯爵家には一方から有利な情報を得たなどと言われては困るために、渡すことはできないが、三人なら問題ない。今日も馬車の迎えを行かせて、送り届ける。

 これがある意味で貴族と平民の差である。

「会長、レゾナンスをよろしくお願いいたします」
「はい、分かったらすぐに若いのを走らせますから」
「よろしくね」

 三人は護衛に守られながらクッキーを大切そうに抱えて、帰っていった。

「今頃、廊下は三人に釘付けでしょうね」
「はい、会長さんもまだまだお美しいですからね」

 会長は40代後半で二人とは迫力が違うが、それでも見た目は今でも振り返るほど美しい。

「残り香がまた良いわね、これが本来の香水というものだわ」

 ソアリスは三人のいた場所からふんわり漂う香りに目を瞑り、侍女たちも鼻を動かすと頷きながら微笑んだ。特にメディナはパールのせいで、強めに頷いている。

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