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手札
急に食べ物の話が出て来たアンセムは、何の話か理解できなかった。オーランとクイオも若干、身体を身を乗り出していた。
「アーティチョークはダイヤの娼婦の頃の名前」
「え?アーティチョークが?あれは食べ物じゃないか」
「たべもの?」
いつのまにかアンセムの横で小首を傾げた末娘が輝く眼差しを向けていた。
「っあ!いや、ここにあるわけではない」
「でも、たべものなんでしょう?」
「そうだが……アーティチョークは少し苦みがあるんだ、だからケイトはまだ美味しさを分からないかもしれない」
「ケイトはしたにはじしんがあるのよ、どんなものでもおいしくたべれるわ」
ソアリスとケイトの最大の共通点は、好き嫌いがないことである。好きな物はあるが、出された物を美味しくいただくことが、この二人のいいところであり、料理長に好かれるところである。
「そ、そうだな」
「まあ、ケイトは食べたことがなかったかしら?いえ、食べているはずよ」
「そうだったか?」
「茹でて食べたり、フリットもあったし、煮込み料理もあったはずよ。多分、美味しそうに食べていたでしょう?お花の蕾みたいなの、覚えていない?」
ソアリスが食べているのだから、ケイトが食べていないはずがない。
「おはなのつぼみ?あっ!ひらひらになったやつ?ほくほくしたやつ?」
「そうそう」
「あれがアーティチョーク?」
「そうよ、食べるのに夢中で名前を教えていなかったわね」
ケイト以外の子どもたちは好き嫌いもあり、ゆっくり食べるために、これは何かと言いながら食べさせていたが、ケイトの場合は早く早くとバタつき吸い込まれていくために、そのような余裕はなかった。
「カイルスおにいさまに、ずかんをかりるわ」
「それがいいわね」
納得したケイトは元の席に戻って、ちょこんと座ってお茶を飲むことにした。
「それで、界隈では普通の名前なのか?」
「一応、花ではあるから」
「そ、そうか」
ケイトが言ったようにホクホクとした食感のアーティチョークに、名前には納得いかなかったが、気にしていても仕方ないので、受け入れることにした。
「ダイヤで、アーティチョークで、今はミリス・エザン。手札が揃いつつあるわ」
「手札?」
「ええ、会長にアーティチョークができればいつから、最悪いつまで娼婦をしていたのか調べてもらっているわ。後、リーリーから辞めてから親しくしていた男性が何人かいたとも聞いたの」
「それは……」
「そう、お腹の子はルックソ野郎の子ではないかもしれない。それに関してはバーセム公爵に話を聞くようにしてもらったわ」
ルックリンツソルはいまだにステイ状態だが、ダイヤとの関係は訊ねてもらうことにした。
「完全な被害者ではないかもしれないということだな?」
「ええ、そういうことね。だから手札が揃えば、追い込めるわ」
「君ならうまくやるだろうな」
「手札は多い方がいいですからね」
にやりと笑ったソアリスは企み満タンだが、この手のことは右に出る者はおらず、本人もいびるなどと言っていることから得意分野である。
「おかあさま、おかわりはまだですの?」
「おかわりはしません」
「なんてこと……!」
ケイトは酷くショックを受けた顔をしているが、その表情がソアリスにそっくりである。珍しく大人しくお茶を飲んでいると思ったら、おかわりを待っていたらしい。
「お母様はちょっとマッシュルームの散歩がてら走って来るわ」
「たべすぎましたものねぇ」
「そうです!完全に食べ過ぎました、認めます!樽になって茶色のドレスしか着れなくなりますからね」
ソアリスも山盛りのクッキーと揚げ芋は食べ過ぎたと理解しており、侍女たちもおそらく走りに行くだろうなと思っており、その間に情報を纏めようと考えていた。
「アーティチョークはダイヤの娼婦の頃の名前」
「え?アーティチョークが?あれは食べ物じゃないか」
「たべもの?」
いつのまにかアンセムの横で小首を傾げた末娘が輝く眼差しを向けていた。
「っあ!いや、ここにあるわけではない」
「でも、たべものなんでしょう?」
「そうだが……アーティチョークは少し苦みがあるんだ、だからケイトはまだ美味しさを分からないかもしれない」
「ケイトはしたにはじしんがあるのよ、どんなものでもおいしくたべれるわ」
ソアリスとケイトの最大の共通点は、好き嫌いがないことである。好きな物はあるが、出された物を美味しくいただくことが、この二人のいいところであり、料理長に好かれるところである。
「そ、そうだな」
「まあ、ケイトは食べたことがなかったかしら?いえ、食べているはずよ」
「そうだったか?」
「茹でて食べたり、フリットもあったし、煮込み料理もあったはずよ。多分、美味しそうに食べていたでしょう?お花の蕾みたいなの、覚えていない?」
ソアリスが食べているのだから、ケイトが食べていないはずがない。
「おはなのつぼみ?あっ!ひらひらになったやつ?ほくほくしたやつ?」
「そうそう」
「あれがアーティチョーク?」
「そうよ、食べるのに夢中で名前を教えていなかったわね」
ケイト以外の子どもたちは好き嫌いもあり、ゆっくり食べるために、これは何かと言いながら食べさせていたが、ケイトの場合は早く早くとバタつき吸い込まれていくために、そのような余裕はなかった。
「カイルスおにいさまに、ずかんをかりるわ」
「それがいいわね」
納得したケイトは元の席に戻って、ちょこんと座ってお茶を飲むことにした。
「それで、界隈では普通の名前なのか?」
「一応、花ではあるから」
「そ、そうか」
ケイトが言ったようにホクホクとした食感のアーティチョークに、名前には納得いかなかったが、気にしていても仕方ないので、受け入れることにした。
「ダイヤで、アーティチョークで、今はミリス・エザン。手札が揃いつつあるわ」
「手札?」
「ええ、会長にアーティチョークができればいつから、最悪いつまで娼婦をしていたのか調べてもらっているわ。後、リーリーから辞めてから親しくしていた男性が何人かいたとも聞いたの」
「それは……」
「そう、お腹の子はルックソ野郎の子ではないかもしれない。それに関してはバーセム公爵に話を聞くようにしてもらったわ」
ルックリンツソルはいまだにステイ状態だが、ダイヤとの関係は訊ねてもらうことにした。
「完全な被害者ではないかもしれないということだな?」
「ええ、そういうことね。だから手札が揃えば、追い込めるわ」
「君ならうまくやるだろうな」
「手札は多い方がいいですからね」
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「おかあさま、おかわりはまだですの?」
「おかわりはしません」
「なんてこと……!」
ケイトは酷くショックを受けた顔をしているが、その表情がソアリスにそっくりである。珍しく大人しくお茶を飲んでいると思ったら、おかわりを待っていたらしい。
「お母様はちょっとマッシュルームの散歩がてら走って来るわ」
「たべすぎましたものねぇ」
「そうです!完全に食べ過ぎました、認めます!樽になって茶色のドレスしか着れなくなりますからね」
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