私のバラ色ではない人生

野村にれ

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アマリリス・トレアン4

「お二人はマリーさんに会っても構わないという解釈でいいかしら?」
「はい、私どもは構いません」
「そう、それならこれから会ってもらえるかしら?」
「はい、アマリリスもいいわよね?」
「はい」

 カラーとアマリリスは頷き合い、ソアリスも断られることはないだろうと考えていたがホッとした。

 そして、アマリリスには聞いておかなければならないことがあった。

「その前にアマリリス嬢はルックリンツソルに何か言いたいことはある?直接が嫌なら別の方法でもいいわ、手紙を書いてくれたら私が目の前で読み上げるわ」
「言いたいことですか……」
「恨み言でも怒りでも、あなたには言う権利があるわ」
「でも……」
「関わりたくないというのなら、それもいいと思うの。関わらないことがあの男にとっては罰になると思うから」

 アマリリスはソアリスとカラーを交互に見つめて、戸惑っているようであった。

「アマリリス嬢があの男を踏みつぶして、これから生きていくために必要ならぶつければいいと思うの。今、答えを出さなくていいわ。でも私の許可があれば、可能だということは覚えておいて」
「はい」
「王妃陛下ですから、ほほほ」

 それからポーリアにマリーを呼びに行かせている間に、ソアリスは一つ聞いてみたいことがあった。

「アマリリス嬢、一つ教えて欲しいのだけど」
「はい、何でしょうか?」
「あのルック何とかを裏でなんて呼んでいたの?」

 もはやソアリスの頭からルック以外は消え去っていた。

「えっ……」
「私だったら酷い渾名をつけていたと思うの。それで、アマリリス嬢もそうではないかなって思ったのだけど」

 ソアリスは今も現役でしているのだが、若い子は何て呼んでいるのか興味があった。だが、アマリリスは否定はしなかったが、動揺している様子であった。

「カラー夫人もピデム王国で令嬢らしからぬ同級生とかいなかった?」

 国は違っても、どこにでもいるのではないかと考えていたソアリスはカラーに質問を振ってみた。

「おりました」
「やっぱりいるわよね、酷い渾名を付けなかった?」
「はい、付けましたね……あの……その、少々言い辛いのですが、トイレです」
「思ったより酷かったわ」

 ソアリスは上品そうなカラー夫人にもう少し甘い渾名だと想像していた。

「も、申し訳ございません。私も今となっては酷いと思っております」
「いいえ、素晴らしいと思うわ。余程だったのね。もしかして、その性に奔放な方だったの?」
「その通りでございます」

 ソアリスはメディナとキャロラインは目を合わせて、納得ねと言わんばかりに頷き合った。

「ちなみに私は変わり種と本人を呼びつけていたの。それで他には娼婦学生、ゴミ女、アブラムシ、股ズレ女、腐り嬢なんかもあるわ」
「おおいに理解できます」

 カラーも渾名だけでどんな女性だったか、何となく想像ができることから激しく頷いていた。

「でしょう?人によって違うのよね、面白いでしょう?トイレも追加ね、ふふふ。それで、アマリリス嬢、教えてはもらえない?」

 ソアリスはアマリリスの庇護欲を真似て、おねだりするようにキラキラした瞳で見つめてみることにした。

「はい……バードと呼んでおりました」
「意味は?」
「あの男が近付いて来ると鳥肌が立つものですから」
「なるほどね」

 部屋中の全員がソアリスと同じように頷きながら納得した。

「それなら万が一聞かれても大丈夫だものね。賢いわ」
「恐れ入ります」

 そこへようやくポーリアがマリーを連れて戻って来た。おそらく二人に会うことで身なりを整えていたのだろう。

 ついにマリーとアマリリスとカラーが対面することになった。カラーとアマリリスは立ち上がり、二人にとっては異母妹で叔母にあたるマリーをじっと見つめた。

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