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王妃陛下のありがたい取り調べ6
ダイヤにも本当はマリーという名前だったと伝えなかったように、ルックリンツソルにもマリリアのこともこのまま教えるつもりはない。
もし分かったとしても、渾名かと思ったと言えばいい。
「彼女に好意は持っていなかったの?」
「持っていません!言い寄って来ることはありましたが、娼婦だったのなら納得です。ですが、私とはそのような関係ではありません」
ルックリンツソルは不愉快な顔をして首を振った。
「ただ単に使えると思って雇ったということ?彼女でなくとも良かったの?」
「そうですね、彼女ではなくても良かったです」
「そう、でもマリリアはマリリアでないといけなかったのよね?」
「い、いえ……」
「マリリアも彼女でなくても良かったの?」
「いえ、それは」
マリリアが何と答えているのか分からないために、どう説明すればいいかと頭を働かせた。ただの平民だったら違ったが、今となってはマリリアの後ろにはセザンアース侯爵がいる。から弾みなことは言えない。
「ハッキリと答えてちょうだい」
「彼女が困っているようだったので、手助けしようと思っただけで、傷付けるつもりも疚しい気持ちはありません」
「それで監禁と暴力?おかしいだろ!」
「そんなつもりはなかったんです」
言うことをきかなかったからが答えだが、もう言うことはできない。
「じゃあどんなつもり?私は罪もない方に監禁も暴力も行ったことはないけど?」
ソアリスにとってやられたことはあるがやったことはなく、やることがあれば余程のことになる。
「コンパル伯爵家では普通のことなの?家訓が監禁上等、暴行万歳、犯罪隠蔽ならあなたもそれに習ってと言うのなら、親が悪いと思うけどいかがかしら?」
酷い家訓だが、もしもそうであればルックリンツソルではなく、コンパル伯爵家に問題があると言える。
「い、いえ!そうではありませんが……」
「なんだ、違うの?じゃあ、あなたのせいってことよね?」
「いえ」
「だったら誰が悪いと言うの?マリリアが悪いの?」
「彼女に誤解があったと思うのです。話をさせてもらえませんか?」
「監禁した相手と会いたいわけがないだろう?会ってもいいと言っても、セザンアース侯爵の同席の上だな。平民だったら言いなりになると思っているのか」
ソアリスは怒るでもなく淡々と、ルックリンツソルに問い掛けた。
「違います」
「そうよね、貴族が言っていいことではないわよね?平民がいるから貴族もいるのよ?領民がいなくなったら、働き手もなくなるわ。農業だって建設だって、貴族だけではできないものね」
「その通りでございますね」
「皆で支えてもらっている王国だものね」
誰もが言えることではないが、ソアリスと他にはアンセムくらいだろう言葉に、ルックリンツソルも思わず口籠った。
「まあいいわ、今日はここまでにしましょう」
「そうでございますね、貴族牢に戻してくれ」
「「は!」」
二人の屈強な騎士たちが両腕を持ってルックリンツソルを立たせた。
「まだ家には帰れないのですか!」
「それだけのことをしたと思っていないの?」
「っ」
セザンアース侯爵のことがよみがえって、ルックリンツソルも大人しく連れて行かれることになった。
「はあ……バーセム公爵、どんな人間だと思う?」
「そうですね、まだ幼いと言いますか。何とかなる、親が何とかしてくれるとでも思っているのかもしれませんね」
「まあ、19歳なのにね」
「ええ、結婚していても珍しくないですからね」
クロンデール王国では18歳までに婚約者がいる場合は、どちらもが学校を卒業後に結婚することが一般的である。
ソアリスもバーセム公爵もそうであった。
「やっぱり変態小童だったということね」
「見事な名付けでございます。さすが、ソアリス様」
バーセム公爵は大きな手でゆっくりと手を叩き、ソアリスは満面の笑みになった。
もし分かったとしても、渾名かと思ったと言えばいい。
「彼女に好意は持っていなかったの?」
「持っていません!言い寄って来ることはありましたが、娼婦だったのなら納得です。ですが、私とはそのような関係ではありません」
ルックリンツソルは不愉快な顔をして首を振った。
「ただ単に使えると思って雇ったということ?彼女でなくとも良かったの?」
「そうですね、彼女ではなくても良かったです」
「そう、でもマリリアはマリリアでないといけなかったのよね?」
「い、いえ……」
「マリリアも彼女でなくても良かったの?」
「いえ、それは」
マリリアが何と答えているのか分からないために、どう説明すればいいかと頭を働かせた。ただの平民だったら違ったが、今となってはマリリアの後ろにはセザンアース侯爵がいる。から弾みなことは言えない。
「ハッキリと答えてちょうだい」
「彼女が困っているようだったので、手助けしようと思っただけで、傷付けるつもりも疚しい気持ちはありません」
「それで監禁と暴力?おかしいだろ!」
「そんなつもりはなかったんです」
言うことをきかなかったからが答えだが、もう言うことはできない。
「じゃあどんなつもり?私は罪もない方に監禁も暴力も行ったことはないけど?」
ソアリスにとってやられたことはあるがやったことはなく、やることがあれば余程のことになる。
「コンパル伯爵家では普通のことなの?家訓が監禁上等、暴行万歳、犯罪隠蔽ならあなたもそれに習ってと言うのなら、親が悪いと思うけどいかがかしら?」
酷い家訓だが、もしもそうであればルックリンツソルではなく、コンパル伯爵家に問題があると言える。
「い、いえ!そうではありませんが……」
「なんだ、違うの?じゃあ、あなたのせいってことよね?」
「いえ」
「だったら誰が悪いと言うの?マリリアが悪いの?」
「彼女に誤解があったと思うのです。話をさせてもらえませんか?」
「監禁した相手と会いたいわけがないだろう?会ってもいいと言っても、セザンアース侯爵の同席の上だな。平民だったら言いなりになると思っているのか」
ソアリスは怒るでもなく淡々と、ルックリンツソルに問い掛けた。
「違います」
「そうよね、貴族が言っていいことではないわよね?平民がいるから貴族もいるのよ?領民がいなくなったら、働き手もなくなるわ。農業だって建設だって、貴族だけではできないものね」
「その通りでございますね」
「皆で支えてもらっている王国だものね」
誰もが言えることではないが、ソアリスと他にはアンセムくらいだろう言葉に、ルックリンツソルも思わず口籠った。
「まあいいわ、今日はここまでにしましょう」
「そうでございますね、貴族牢に戻してくれ」
「「は!」」
二人の屈強な騎士たちが両腕を持ってルックリンツソルを立たせた。
「まだ家には帰れないのですか!」
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「っ」
セザンアース侯爵のことがよみがえって、ルックリンツソルも大人しく連れて行かれることになった。
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「そうですね、まだ幼いと言いますか。何とかなる、親が何とかしてくれるとでも思っているのかもしれませんね」
「まあ、19歳なのにね」
「ええ、結婚していても珍しくないですからね」
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ソアリスもバーセム公爵もそうであった。
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「見事な名付けでございます。さすが、ソアリス様」
バーセム公爵は大きな手でゆっくりと手を叩き、ソアリスは満面の笑みになった。
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