私のバラ色ではない人生

野村にれ

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平民5

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 カレッツ修道院は、問題のある王族・高位貴族を優先的に受け入れることになっている。なぜなのかと言えば、偉そうに踏ん反り返っていたような令嬢を躾けることを好んでいる職員ばかりだからである。

 私怨がある者もいるが、無意味に加虐をするわけではない。

 ただ、まともな者がやって来ることはまずないので、正当な理由で、厳しく躾けることが出来るのである。

 フローラは格好の獲物であった。サブリナにとっても、修道院に入れるのであれば、カレッツ修道院一択であった。

「私は王女だったのよ?」
「ええ、存じておりますが、今は平民でしょう?」
「でも、王族だったのだから」
「王族というのも烏滸がましいと思わないの?」
「おこがましい?」

 フローラは可愛らしく見えるでしょうと言わんばかりに、こてんと首を傾けた。その様子に職員の嫌味センサーが作動した。

「まさか!烏滸がましいという言葉も分からないの?」
「まさか」

 職員の二人は、フローラをじっと見つめた。

「分かっていないみたいよ?それで王族などとよくも言えたものですわ」
「頭が弱いのでしょうか?もしかして、性病のせいかしら?」
「あら、そうかもしれませんわね」

 馬鹿にされたことに気付いたフローラは、キッと目を吊り上げた。今までも同じような質問をして、馬鹿にされてはいたのだが、王女だったこともあり、口には出さなかっただけである。

 だが、カレッツ修道院の職員は口にしないという選択肢はない。

「何てことを言うの!別の修道院にして貰うわ」

 フローラは生きて来て、修道院について考えたこともなかったが、他にも修道院はあるだろうとくらいは頭が働いた。

「誰に?罪人の母親に頼むの?」
「お父様に」
「連絡が取れるの?」
「取れるわ」

 病院から手紙を送ったこともあったが、返事はなかった。それでも悲痛な思いを書けば、きっと助けてくれるだろうと思っていた。

「だったら、連絡してみたら?」
「便箋を用意して頂戴」
「事務室に行って頼んだら?一応教えて置くけど、お金がかかるわよ?」
「な、どうして?」

 フローラは便箋を用意して貰い、出して貰うことが当たり前で、お金が掛かることも知らなかった。

「送って貰うのだから、お金が掛かることなんて当然でしょう?」
「そんなことどうにかしなさいよ」
「そもそもね、まともな修道院が、性病だった罪人の娘を受け入れるわけがないでしょう?あなたを受け入れる修道院はここしかないのですよ」
「な、なな」
「言われたことをきちんとしなさい、さもなければ食事は一日一食になるわよ?」

 死に至らしめることが目的ではないので、罰を受けても一食は食べられるが、罰は基本的に食事となっている。

「何よ!食事なんて」
「ここでは食事が一番の楽しみですからね、奪うとすれば食事なのです」
「ええ、あなたのお好きな男性もおりませんからね」
「っ」

 最初はフローラと同じで食事なんて、たいした食事でもないのだろうと思うが、カレッツ修道院の食事は美味しいのである。

 それを罰として抜かれ、別の者で分けることになることが、悔しくなって来て、きちんと行うようになることも多い。

 フローラも馬鹿にされたことで反発心を持っていたが、食事は悪くないわねと思うようになった。だが、出来なくて罰を受けることの多いフローラは、三食を食べれることはなかなかない。

 ある意味、王女であることを捨ててロンド王国に行ったシシリーヌと、ロンド王国の王女であったはずのフローラは同じような運命を辿ることになった。

 ただシシリーヌは褒めて伸ばされたことで、順応することが出来たが、フローラは嘲笑われ、いつまで経っても順応することはなく、結婚するんだからと言っては、職員たちに馬鹿にされ続けることになる。


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本日もお読みいただきありがとうございます。

本日、同時刻より新しいお話「永遠の愛にはイロドリを」投稿をしております。
よろしければ、お読みいただければと思います。

こちらは終わる終わる詐欺のようですが、
まだしばらく続く予定です。

よろしくお願いいたします。
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