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試食会
しおりを挟む「キシュト、ごめんなさいね」
「いいえ、試し切りをしておりましたら、ケイト殿下に見付かりまして」
「またあの子は…」
「ソアリス様から授けられしアンテナが、ピピピとしたそうでございます」
芋をセットして、刃を下ろすだけで、綺麗にスライス出来ることに感心していると、ケイトが危ない真似は一切せずに、じっと見ていたのである。何をしているか訊ねられたキシュトに、誤魔化す選択は出来なかった。
「私のせいみたいに」
「ふふふ。ですが、美味しく出来ましたので、温かい内にどうぞお召し上がりください」
「ありがとう」
ソアリス、カイルス、ケイト、ユリウス一家、マイノス一家の勢揃いである。部屋には美味しそうな匂いが漂っている。
「母上、一応聞きますが、父上は呼ばなくていいのですか?」
見ての通りアンセムは、呼ばれていない。
「陛下は揚げ芋、特別好きではないでしょう?」
「そんなこともないと思いますけど」
「でも、ここにいる皆からは聞いたことがあるけど、陛下から揚げ芋が好きだと言われたことはないわ」
ソアリスが好きなことをきっかけに、子どもたちは勿論、ルルエとエクシアーヌも、孫たちもイレナはまだ幼いため食べられないが、ミオス、ナイルス、エマリーも好きだと聞いている。
だが、陛下が食べているのを見たことはあるが、好きだとは聞いていない。
「それはそうですけど…」
「はやくたべましょう!いただきます!」
待ちきれないケイトが、捲し立てる様に号令を掛けた。
「私の台詞!まあ、いいわ!食べましょう。カイルス、写真を撮ってね。ミフルに自慢するの」
「はい、お母様」
カイルスはカメラを持って来ており、写真を撮っていた。
「ざくざくする~」
「本当だね」
「美味しい」
「私は薄いのよりも、好きかもしれない」
「結構、食べ応えがありますね」
いつもは細長く切ったタイプ、くし切りにしたタイプ、薄くスライスしたタイプだったので、扱っている店はあるだろうが、王宮では初めてのザクザクした触感に皆、嬉しそうに食べており、ソアリスも料理長も満足であった。
「美味しいわね!」
ソアリスもようやく口にすると、いつもとは歯ごたえが違って、面白いと思った。
「ようございました」
「キシュト、あの機械はどう?」
「ええ、よく切れますし、刃を変えれば別の切り方も出来るようです」
「そうだったわね」
波型に出来ることに食いついたために、細切りも薄切りも出来ますという説明が、すっかり失われていた。
「はい、大活躍の予感です」
「ごめんなさいね、我儘を言って」
「いいえ!みるみる切れるので、面白いと、皆がやりたがっております」
「そうなの?それなら良かったわ」
キシュトは一体何を購入されたのかと思ったが、これで波型の揚げ芋を作って欲しいと言われて、さすがだなと思ってしまったほどである。
使い勝手良ければ、追加申請してもいいかとすら考えている。だが、後にも先にもスライスする機械を買って来る王妃陛下はいないのではないかと思う。
ソアリスは流れるように食べ続けており、ケイトとソアリスの前の揚げ芋が物凄いスピードでなくなっている。だが、追加しましょうかとは言ってはいけないことは、キシュトは心得ている。
「おかあさま、すぱいす!どうせかくしているのでしょう」
「スパイス?」
ケイトにスパイスを見付かってから、途中で味変をするようになってしまっている。置いて置くと、危険なので、ソアリスはひっそりと隠し持っている。
「はいはい…」
「はいは、いっかいですよ」
「はい…」
ソアリスは渋々、スパイスを掛け過ぎないのよと渡し、ルルエとエクシアーヌにもこっそり渡そうと思っていたが、食べ過ぎに注意してねと一本ずつ渡した。
「おいしっ!」
楽しい試食会は、大盛況で終わった。
エミアンローズにはお祝いの品を贈り、ララシャについては少し考えると、手紙を添えた。
「いいえ、試し切りをしておりましたら、ケイト殿下に見付かりまして」
「またあの子は…」
「ソアリス様から授けられしアンテナが、ピピピとしたそうでございます」
芋をセットして、刃を下ろすだけで、綺麗にスライス出来ることに感心していると、ケイトが危ない真似は一切せずに、じっと見ていたのである。何をしているか訊ねられたキシュトに、誤魔化す選択は出来なかった。
「私のせいみたいに」
「ふふふ。ですが、美味しく出来ましたので、温かい内にどうぞお召し上がりください」
「ありがとう」
ソアリス、カイルス、ケイト、ユリウス一家、マイノス一家の勢揃いである。部屋には美味しそうな匂いが漂っている。
「母上、一応聞きますが、父上は呼ばなくていいのですか?」
見ての通りアンセムは、呼ばれていない。
「陛下は揚げ芋、特別好きではないでしょう?」
「そんなこともないと思いますけど」
「でも、ここにいる皆からは聞いたことがあるけど、陛下から揚げ芋が好きだと言われたことはないわ」
ソアリスが好きなことをきっかけに、子どもたちは勿論、ルルエとエクシアーヌも、孫たちもイレナはまだ幼いため食べられないが、ミオス、ナイルス、エマリーも好きだと聞いている。
だが、陛下が食べているのを見たことはあるが、好きだとは聞いていない。
「それはそうですけど…」
「はやくたべましょう!いただきます!」
待ちきれないケイトが、捲し立てる様に号令を掛けた。
「私の台詞!まあ、いいわ!食べましょう。カイルス、写真を撮ってね。ミフルに自慢するの」
「はい、お母様」
カイルスはカメラを持って来ており、写真を撮っていた。
「ざくざくする~」
「本当だね」
「美味しい」
「私は薄いのよりも、好きかもしれない」
「結構、食べ応えがありますね」
いつもは細長く切ったタイプ、くし切りにしたタイプ、薄くスライスしたタイプだったので、扱っている店はあるだろうが、王宮では初めてのザクザクした触感に皆、嬉しそうに食べており、ソアリスも料理長も満足であった。
「美味しいわね!」
ソアリスもようやく口にすると、いつもとは歯ごたえが違って、面白いと思った。
「ようございました」
「キシュト、あの機械はどう?」
「ええ、よく切れますし、刃を変えれば別の切り方も出来るようです」
「そうだったわね」
波型に出来ることに食いついたために、細切りも薄切りも出来ますという説明が、すっかり失われていた。
「はい、大活躍の予感です」
「ごめんなさいね、我儘を言って」
「いいえ!みるみる切れるので、面白いと、皆がやりたがっております」
「そうなの?それなら良かったわ」
キシュトは一体何を購入されたのかと思ったが、これで波型の揚げ芋を作って欲しいと言われて、さすがだなと思ってしまったほどである。
使い勝手良ければ、追加申請してもいいかとすら考えている。だが、後にも先にもスライスする機械を買って来る王妃陛下はいないのではないかと思う。
ソアリスは流れるように食べ続けており、ケイトとソアリスの前の揚げ芋が物凄いスピードでなくなっている。だが、追加しましょうかとは言ってはいけないことは、キシュトは心得ている。
「おかあさま、すぱいす!どうせかくしているのでしょう」
「スパイス?」
ケイトにスパイスを見付かってから、途中で味変をするようになってしまっている。置いて置くと、危険なので、ソアリスはひっそりと隠し持っている。
「はいはい…」
「はいは、いっかいですよ」
「はい…」
ソアリスは渋々、スパイスを掛け過ぎないのよと渡し、ルルエとエクシアーヌにもこっそり渡そうと思っていたが、食べ過ぎに注意してねと一本ずつ渡した。
「おいしっ!」
楽しい試食会は、大盛況で終わった。
エミアンローズにはお祝いの品を贈り、ララシャについては少し考えると、手紙を添えた。
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