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しおりを挟むお互いに微笑った。
「異世界ではもうすでに死んでるけどね」
カノンがついそんな言葉を発してしまうとスウェンは無表情になった。怒ってしまったかもしれない。
「それとは別の話だろ。今ここでお前は生きてる。ずっとそうして生き続けろ」
「ずっとは無理だよ。さすがに八十とかいったら病気になりそう」
「ならない」
なぜ言い切れる。
「勇者だろ」
「それをここで持ってくる……!」
ははっと笑うスウェンは物珍しかった。
自分の気持ちもやっと落ち着いてきたところでカノンはちょっと真面目な話を切り出す。
「あのね、私、スウェンがいてくれて心強かったんだ。この世界に来た時もその後も。だから、ありがとう」
「なんで今更」
「スウェンが亡くなったって勘違いしたとき、引き止めなかったていうこと以外に一番に後悔したのがそれを言えてなかったことだったから。だから今言っちゃおうと思って」
戦場になっているであろうアトリシアに黒猫姿のスウェンは戻ると言った。まずはカノンを安全な場所に連れて行くからついてこいと。
カノンは断った。自分だけ安全な場所にはいられないと。
それでスウェンは一人でアトリシアに向かってしまった。
力づくに止めることができたかもしれないのにそうしなかった。戦争を止めることを第一に考えてしまっていたから。メヒストに頼み込もうという解決の糸口を見つけることに精一杯で。
スウェンも同じだった。
自分の身を案じることもなく、猫の姿のまま戦場に向かって。イデルにすぐ人の姿に戻してもらえる確証なんてあるはずないのに。
銃で撃たれて重傷で、でもスウェンは誰のせいにもしない。見返りさえ求めない。
皆のことを第一に考えて行動したんだ。
「スウェンは大事な人だって気づかされた」
この世界に来て初めての気を許せる存在となった。
少しの間合っていた視線は外され顔を背けられる。
「スウェン?」
「……俺も思ってるよ。お前は守ってやらないといけない存在だって、カノンがここへ来たときから。今は一層強く感じている」
横顔を見ていたカノンに向けられた誠意のある言い方。
「だから心配する必要はない」
それといつもの真っ直ぐとした眼差し。
それはどういう意味だろうとカノンはじっと見て真意を読もうとする。見つめ合う形になってしまっていることに気づいてから熱が上がる。
頭に血が上った。確実に怒りではない何か。
「心配するよ!ㅤ今守られないといけないのはスウェンの方でしょ。毎日くるから安静にしててね。ちょっとセナ王に用があるからまた明日!」
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