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第二章 ドラゴンハンター02 良知美鈴
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「あっ、戸井圭吾くんだ」
思わずはしゃいだ声が出てしまった。
圭吾はクールでかっこいいと、女子の間でひそかに噂されている。あまり噂話に加わらない美鈴も、圭吾のことが少し気になっていた。
圭吾が振り向いた。突然声をかけられたためか、驚いたような顔をしている。
美鈴は、圭吾から3メートルほど離れたところで立ち止まった。
「土曜日に会うなんてめずらしいね」
美鈴が微笑むと、圭吾が少し照れたように顔を赤くした。
「敦也の家に行くところなんだ」
「敦也君なら、近くの公園にいるのを見たよ」
美鈴は、今来たばかりの道を指さした。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
圭吾は手に虫かごのようなものを大事そうに抱えていた。
「ねぇ、なに持ってるの?」
美鈴は、圭吾に近づいて行った。圭吾と仲良くなれるチャンスかもしれない。自然と足取りが軽くなる。
だが、圭吾の1メートル手前で足がすくんでしまった。
美鈴はきゃっと、小さい悲鳴を上げた。圭吾が持っている虫かごの中身が、はっきりと見えてしまったのだ。
(トカゲだ……)
美鈴は大の爬虫類嫌いだった。
(しかも、コウモリみたいな翼がついているタイプだ。サイアク)
見たくないのに、美鈴は虫かごから目が離すことができない。目を離したスキに、虫かごから飛び出してきたらどうしよう。そんな風に悪い想像をしてしまうのだ。
怖い映画を見た後、お風呂で頭を洗う時に絶対に目をつぶることができないのと同じだ。
「もしかして、見えるの?」
圭吾が一歩前に踏み出してきた。
美鈴は後ずさった。
「かっこいいでしょ?」
圭吾は嬉しそうだ。
ここで、かっこいいねと話を合わせられたら、圭吾ともっと仲良くなれるかもしれない。けど、無理だった。いつの間にか美鈴は首を横に振っていた。
(かっこよくなんてないから。気持ち悪いだけだし)
圭吾の前では、とても口には出せない。
「よく見てよ」
圭吾が虫かごを突き出すように、美鈴に近づいてくる。
「いや。いい、いい」
美鈴は慌てて手を振った。
(圭吾くん、気を悪くしたかな)
フォローするつもりで圭吾に笑いかけようとしたが、無理だった。頬がひきつってけいれんしてしまう。
トカゲが、じっとこっちを見ている気がする。美鈴は寒気がしてきた。今すぐにこの場から離れたかった。喉の奥から、声をしぼり出すようにして言った。
「じゃあね、ばいばーい」
美鈴は圭吾の横を走り抜けた。
「待って、美鈴ちゃん!」
そう言われても、美鈴はなかなか振り返ることができなかった。
(どうしよう。このままじゃ、圭吾くんに嫌われちゃうかも)
十メートルほど走ったところで、美鈴は勇気をふりしぼって振り返った。
「また月曜日に学校でね!」
美鈴はめいいっぱい手を振った。圭吾のことを避けたわけじゃないとわかってもらうために、美鈴は思い切り笑ってみせた。
思わずはしゃいだ声が出てしまった。
圭吾はクールでかっこいいと、女子の間でひそかに噂されている。あまり噂話に加わらない美鈴も、圭吾のことが少し気になっていた。
圭吾が振り向いた。突然声をかけられたためか、驚いたような顔をしている。
美鈴は、圭吾から3メートルほど離れたところで立ち止まった。
「土曜日に会うなんてめずらしいね」
美鈴が微笑むと、圭吾が少し照れたように顔を赤くした。
「敦也の家に行くところなんだ」
「敦也君なら、近くの公園にいるのを見たよ」
美鈴は、今来たばかりの道を指さした。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
圭吾は手に虫かごのようなものを大事そうに抱えていた。
「ねぇ、なに持ってるの?」
美鈴は、圭吾に近づいて行った。圭吾と仲良くなれるチャンスかもしれない。自然と足取りが軽くなる。
だが、圭吾の1メートル手前で足がすくんでしまった。
美鈴はきゃっと、小さい悲鳴を上げた。圭吾が持っている虫かごの中身が、はっきりと見えてしまったのだ。
(トカゲだ……)
美鈴は大の爬虫類嫌いだった。
(しかも、コウモリみたいな翼がついているタイプだ。サイアク)
見たくないのに、美鈴は虫かごから目が離すことができない。目を離したスキに、虫かごから飛び出してきたらどうしよう。そんな風に悪い想像をしてしまうのだ。
怖い映画を見た後、お風呂で頭を洗う時に絶対に目をつぶることができないのと同じだ。
「もしかして、見えるの?」
圭吾が一歩前に踏み出してきた。
美鈴は後ずさった。
「かっこいいでしょ?」
圭吾は嬉しそうだ。
ここで、かっこいいねと話を合わせられたら、圭吾ともっと仲良くなれるかもしれない。けど、無理だった。いつの間にか美鈴は首を横に振っていた。
(かっこよくなんてないから。気持ち悪いだけだし)
圭吾の前では、とても口には出せない。
「よく見てよ」
圭吾が虫かごを突き出すように、美鈴に近づいてくる。
「いや。いい、いい」
美鈴は慌てて手を振った。
(圭吾くん、気を悪くしたかな)
フォローするつもりで圭吾に笑いかけようとしたが、無理だった。頬がひきつってけいれんしてしまう。
トカゲが、じっとこっちを見ている気がする。美鈴は寒気がしてきた。今すぐにこの場から離れたかった。喉の奥から、声をしぼり出すようにして言った。
「じゃあね、ばいばーい」
美鈴は圭吾の横を走り抜けた。
「待って、美鈴ちゃん!」
そう言われても、美鈴はなかなか振り返ることができなかった。
(どうしよう。このままじゃ、圭吾くんに嫌われちゃうかも)
十メートルほど走ったところで、美鈴は勇気をふりしぼって振り返った。
「また月曜日に学校でね!」
美鈴はめいいっぱい手を振った。圭吾のことを避けたわけじゃないとわかってもらうために、美鈴は思い切り笑ってみせた。
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