ドラゴンハンター

ことは

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第二章 ドラゴンハンター02 良知美鈴

2-3

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 月曜日。学校の靴箱で、美鈴は肩を叩かれた。

「イタッ」

 美鈴は、肩に電流でも走ったような痛みを感じた。上履きを履きながら、顔を上げる。

「おっはよー」

 ルイが、元気いっぱいの笑顔で通り過ぎていく。

「お、はよ……」

 美鈴は、ルイの背中を呆然と見つめた。ルイは周りの子たちに、おはよう、おはようと声をかけながら早足に教室に向かっている。

「土曜日はごめん、とかないんだ……」

 美鈴はボソッとつぶやいた。

「それにしても、痛かったなぁ。すごい静電気なんだもん」

 美鈴はルイに叩かれた肩をなでた。

 美鈴が教室に入ると、圭吾の姿が目に入った。後藤祐太と楽しそうに話をしている。

 圭吾の横顔に、美鈴はドキッとした。いつもと印象が違う気がした。自信に満ちあふれているような顔をしている。

 美鈴は、ランドセルを机に置きながら圭吾の方を見た。

(やっぱり、雰囲気がなんか違う)

 圭吾に声をかけたかったが、勇気が出ない。

 ランドセルから教科書を取り出し、机にしまう。その間も、チラチラと圭吾の方を盗み見た。視線を感じたのか、圭吾がふとこちらを見た。

 圭吾が「おはよう」と手をあげる。

 美鈴は待ってましたとばかりに椅子から立ち上がり、圭吾の元へ駈け寄った。

「圭吾くん、おはよう。土曜日、会ったね」

 美鈴が笑いかけると、圭吾が「あぁ」とはにかんだ。圭吾が、なにか話したそうに口を開いた。

 しかし、祐太の顔をチラと見ると口を閉じてしまった。

「土曜日? そういえば土曜日に圭吾、おれんちに一体何しに来たんだよ?」

 圭吾より頭一つ分背の低い祐太が、上目づかいで圭吾を見る。

「べつに。ちょっと寄っただけ」

 圭吾がサラリと答える。

 朝読書の時間を告げるチャイムがなった。

「やべ。おれ、まだ本選んでなかった」

 祐太が頭をかきながら、教室の後ろの本棚へ走っていった。

「わたしもだ」

 美鈴は圭吾に背中を向け、本を選びに行こうとした。

 だが、圭吾に呼び止められ、動きを止めた。

「美鈴ちゃん」

「なに?」

 圭吾は妙に真剣な顔をしている。

「ちょっと話したいことがあるんだけど、昼休み、体育館の裏に来られる?」

 美鈴は胸がキューっとしめつけられるようだった。すぐに返事をしたいのに、声が出せなかった。

 圭吾が不安そうな顔で、美鈴の返事を待っている。

 美鈴はやっとのことで、コクリとうなずいた。

 クルリと圭吾に背を向け、本棚へ向かう。

 圭吾に見られているかもしれないと思うと、歩き方までぎこちなくなってしまう。

(なにこれ。少女マンガみたい。まさか、『こ』がつくやつ?)

 美鈴は本を選ぼうとするが、タイトルが頭に入ってこない。

(次が『く』で、次が『は』……キャー)

 美鈴は両手で自分の頬を包んだ。顔が熱い。

「美鈴ちゃん、どうしたの? なんか表情がクルクル変わってるけど」

 隣で本を選んでいた祐太が、話しかけてきた。美鈴は猛烈にはずかしくなった。

「やだ、祐太くん、まだ本選んでなかったの?」

「自分だって」

 美鈴の手は宙をさまよっていた。

「あ、はは」

 美鈴は作り笑いを浮かべた。

「これにしよーっと」

 美鈴は本棚から適当に、本を一冊抜き出した。

「へー。美鈴ちゃん、爬虫類とか好きなんだ」

「え?」

 美鈴が手にした本を見ると、両生類と爬虫類の図鑑だった。表紙にはカエルとトカゲの写真。美鈴は腕に鳥肌がたった。すぐにでも本を取り換えたかったが、先生が教室に入ってきてしまった。

「チャイムはとっくに鳴っていますよ」

 担任は、40代半ばの女の先生で時間に厳しい。

 美鈴はしかたなく、図鑑を手に席に着いた。

 前の方の席に座っている圭吾を見ると、圭吾もこっちを振り返って見ていた。

 美鈴はドキッとして、すぐに目をふせた。大きなトカゲと目が合う。

(もう~サイアク)

 見たくないが、見るしかない。美鈴は汚いものでも触るように、人差し指と親指でつまんでページをめくった。
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