ちょっとだけマーメイド~暴走する魔法の力~

ことは

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7 将来の夢

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 音楽会の練習が少しずつ始まっている。音楽の時間、みんなの合唱に合わせて麻衣ちゃんがピアノを弾いた。

 まだ練習を始めたばかりでみんなの合唱はイマイチなのに、麻衣ちゃんは一曲完璧に弾きこなしている。

 グランドピアノを弾く麻衣ちゃんは、かっこいい。全身で音楽を表現していて、気持ちを込めて弾いているのが音を聴けばよくわかる。

 目を閉じて聴くと、すごく心地よい。どうしてこんなにも素敵な音を出すことができるのだろう。

「宮坂さんは、すごいわね。これならピアニストも夢じゃないわ」

 先生も、麻衣ちゃんのことを絶賛している。

 麻衣ちゃんは、ピアニストになりたいといつも言っている。

 麻衣ちゃんの夢は、すごく現実に近いところにあると思う。麻衣ちゃんなら、絶対になれると思う。得意なことが将来の夢だなんて、なんて幸せなことなんだろう。

「みんなの声、宮坂さんのピアノに負けてるわよ。もっと大きな声で、最初から歌ってみようか」

 先生が指揮棒を振り上げる。

 担任は若い女の先生で、音楽会に向けてすごく張り切っている。

 先生の指揮に合わせて、麻衣ちゃんの伴奏が始まった。みんなが一斉に歌いはじめる。

 歌を歌うのは嫌いじゃない。どちらかといえば好き。だけど、特別歌の才能があるかといえば、まあ人並みってところ。歌手になれるわけがないし、なりたいとも思っていない。

 でも、わたしにだって得意なことはある。

 本当はわたし、泳ぐのが得意。みんなに見せたらびっくりするだろうな。今すぐオリンピック選手になれちゃうくらいだけど、人前で泳げないんだからそんな夢は現実的ではない。

「星野さん、もっと大きな口を開けて歌って」

 考え事をしていたら、先生に注意されてしまった。

 浩太くんが、声を出さずに「バーカ」と口を動かすのが見えた。隼人くんがそれに気づいて、浩太くんの頭をこづいた。隼人くんが、こっちを見てはにかむように笑う。

 すごくはずかしくてカーッと頭に血がのぼる。

 足元がふわっと浮く。

 まただ。そう思ったときには、目の前に火花が散っていた。

 ドーン、とものすごい音がした。

 一瞬、地震でも起きたのかと思った。

 麻衣ちゃんがビクッとして演奏を止めた。

 グランドピアノの屋根が落ちたのだ。誰もさわっていないのに、どうしてグランドピアノの屋根を支えていたつきあげ棒がはずれたのだろうか。

「びっくりしたぁ」

 誰かの声をきっかけに、教室中がザワザワと大騒ぎになった。あまりの騒ぎに、窓ガラスが震える。

「ちょっと、静かにしなさい」

 先生が怒鳴って、つきあげ棒を立て、グランドピアノの屋根を元に戻した。

「宮坂さん、ケガはない?」

「大丈夫です」

 麻衣ちゃんの言葉に、わたしは、ほっと胸をなでおろした。

 目の前に火花が散ったのと、グランドピアノの屋根が落ちたのは同時だった。

 これって、ただの偶然なの? それとも……。

 ふと、滝沢先生の顔が思い浮かんだ。

『自分のせいだと思っているの?』

 先生の言葉が頭の中で渦巻く。まさか、そんなわけ……不安で胸がギューッとしめつけられるようだった。


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