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転生石好き令嬢の生存戦略<後編の後編の後編の後編の後編の後編の後編の後編の前編>
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「お父様とお母様はたまにレナって呼ぶわ。」
だからそれで良いのでは無いかしら?
あまり、呼び方にこだわりは無い。
「では、ディーで。」
こ、こだわるのね?
グレナディアにとって、相変わらず、何を考えているかさっぱりわからない婚約者なのであった。
まあ、お任せするわ。
「……シオン?」
「なあに?ディー」
試しに呼びかけたら、ちょっと考えた様子を見せたけれど、
すぐに薄紫色の瞳を緩ませ、花がほころぶ様な笑顔で呼び返してきた。
「いちゃいちゃしないで!僕の存在、忘れてないよね!」
声のする方を振り返ると、おこなステータスのベルが、腕を組んで立っている。
……いちゃいちゃって、おませさんね。
「僕も姉上の事、今度から、ディ……」
「駄目だよ。」
ベルに気をとられて居たらいつの間にか後ろに立っていたリュシオル様改めシオンが、
ソファーごとぐいぐい抱きしめてきます。
「駄目だよ。ディーって呼んで良いのは僕だけだから。」
耳元で、甘い声出さないで下さい!
なんだか力が抜けてしまいます。
「と、取りあえず、今日は、ボツ庫に行くわよ!」
このままでは、心臓が持ちません。
取りあえず、今日の目的地はボツ庫です。
初期のボツ庫が良いでしょう。
私が決めました。
さあ地下室に向かいますよ!
カンテラに魔力を少し注ぐと、薄く灯りが灯ります。
横からシオンが、そっと手を出してきましたが、するりと猫のようにベルが割り込んできました。
「地下に行くんでしょ?シオン、道わかんないんだから、これは僕が持つね。」
私とシオンは先導役をベルに譲り、二人並んでベルについて行くことになりました。
「自分から言い出したことだけど、なんだか納得いかない!!」
肩を並べる私たちを振り返って、突っかかるベル。
可愛いけど、ここで押し問答する気はありません。
もう!いいから移動するわよ!
部屋から追い出す様に、無言のままベルの背中を軽く押すと、遊んで居ると思ったのか少し体重を乗せてきた!
こらこら、もうすぐ階段なんだからちゃんと歩いて!
「……階段の手すり、すべってみても良いだろうか?」
間を置かず、隣から微妙な発言が降ってくる。
そろそろ怒ってもいいかしら?
何とか、怒りの鉄拳が炸裂する前に地下室にたどり着いた。
「階段の陰の物置に見せかけた小さい扉が入り口なのか、秘密基地みたいで良いな!」
秘密基地ですもの!
異世界でも秘密基地は永遠のロマンなのね!
そして、シオンみたいに先天的な空間転移が使えない私達は先達の知恵、魔方陣を使います。
ただこの魔方陣、少し仕掛けがあるのです。
まず最初に、部屋の入口に近いニス掛けしてある重厚な棚の前で立ち止ります。
この棚に並んでいるダチョウの卵みたいな大きさと形の色とりどりの魔石は、目的地への鍵です。
そして、今日の目的地は、黒いトカゲが閉じ込められたオレンジ色の魔石の横の、
赤い花の蕾が閉じ込められた桃色の魔石です。
デザインに意味や法則性はありません。
この館にあるものも、全て私とベルが思い思いに手当たり次第作ってみた試作品なのです。
ですが、この転送装置が商品化される事もありません。
軍事利用されると困るからだそうです。
つまり国家機密級装置なのです。
仕組みを説明しますと、この部屋にはまず、未完成の魔法陣が床に刻まれています。
そして、中央の高さ1メートルくらいあるエッグスタンドに、棚の魔石を選んで載せると
目的地が固定され、移動できるようになります。
ベルは、カンテラを持っているので、大きさの割に軽い魔石は、私が運びます。
装飾性の高いインペリアル・イースター・エッグをイメージし、
置きやすいように若干下部を加工してある桃色の魔石を
中央のスタンドに据える前にシオンを呼びよせます。
……面白いものが好きなら、きっと気に入るはず。
3人でエッグスタンドを囲み、そっと真ん中にはめると、魔石の中の赤い花が、ふんわりとほどけるように開き始めます。
そして、花の内側から優しく輝く魔石の表面に、魔法言語が勢いよく滑り落ち、光のリボンの様に広がり、
そのまま床まで広がって伸び、外円の魔法陣に触れ床に予め刻まれていた文字と絡まり、リンと光る。
「……美しいな。」
そう言って光を受けて微笑む婚約者殿が一番美しい。
「そろそろきますよ?」
フワッとした重力の揺さぶりの後、私たちは場所を移した。
*************
お久しぶりです。
お待ちいただいて居た方、いらっしゃいましたら有難うございます。
だからそれで良いのでは無いかしら?
あまり、呼び方にこだわりは無い。
「では、ディーで。」
こ、こだわるのね?
グレナディアにとって、相変わらず、何を考えているかさっぱりわからない婚約者なのであった。
まあ、お任せするわ。
「……シオン?」
「なあに?ディー」
試しに呼びかけたら、ちょっと考えた様子を見せたけれど、
すぐに薄紫色の瞳を緩ませ、花がほころぶ様な笑顔で呼び返してきた。
「いちゃいちゃしないで!僕の存在、忘れてないよね!」
声のする方を振り返ると、おこなステータスのベルが、腕を組んで立っている。
……いちゃいちゃって、おませさんね。
「僕も姉上の事、今度から、ディ……」
「駄目だよ。」
ベルに気をとられて居たらいつの間にか後ろに立っていたリュシオル様改めシオンが、
ソファーごとぐいぐい抱きしめてきます。
「駄目だよ。ディーって呼んで良いのは僕だけだから。」
耳元で、甘い声出さないで下さい!
なんだか力が抜けてしまいます。
「と、取りあえず、今日は、ボツ庫に行くわよ!」
このままでは、心臓が持ちません。
取りあえず、今日の目的地はボツ庫です。
初期のボツ庫が良いでしょう。
私が決めました。
さあ地下室に向かいますよ!
カンテラに魔力を少し注ぐと、薄く灯りが灯ります。
横からシオンが、そっと手を出してきましたが、するりと猫のようにベルが割り込んできました。
「地下に行くんでしょ?シオン、道わかんないんだから、これは僕が持つね。」
私とシオンは先導役をベルに譲り、二人並んでベルについて行くことになりました。
「自分から言い出したことだけど、なんだか納得いかない!!」
肩を並べる私たちを振り返って、突っかかるベル。
可愛いけど、ここで押し問答する気はありません。
もう!いいから移動するわよ!
部屋から追い出す様に、無言のままベルの背中を軽く押すと、遊んで居ると思ったのか少し体重を乗せてきた!
こらこら、もうすぐ階段なんだからちゃんと歩いて!
「……階段の手すり、すべってみても良いだろうか?」
間を置かず、隣から微妙な発言が降ってくる。
そろそろ怒ってもいいかしら?
何とか、怒りの鉄拳が炸裂する前に地下室にたどり着いた。
「階段の陰の物置に見せかけた小さい扉が入り口なのか、秘密基地みたいで良いな!」
秘密基地ですもの!
異世界でも秘密基地は永遠のロマンなのね!
そして、シオンみたいに先天的な空間転移が使えない私達は先達の知恵、魔方陣を使います。
ただこの魔方陣、少し仕掛けがあるのです。
まず最初に、部屋の入口に近いニス掛けしてある重厚な棚の前で立ち止ります。
この棚に並んでいるダチョウの卵みたいな大きさと形の色とりどりの魔石は、目的地への鍵です。
そして、今日の目的地は、黒いトカゲが閉じ込められたオレンジ色の魔石の横の、
赤い花の蕾が閉じ込められた桃色の魔石です。
デザインに意味や法則性はありません。
この館にあるものも、全て私とベルが思い思いに手当たり次第作ってみた試作品なのです。
ですが、この転送装置が商品化される事もありません。
軍事利用されると困るからだそうです。
つまり国家機密級装置なのです。
仕組みを説明しますと、この部屋にはまず、未完成の魔法陣が床に刻まれています。
そして、中央の高さ1メートルくらいあるエッグスタンドに、棚の魔石を選んで載せると
目的地が固定され、移動できるようになります。
ベルは、カンテラを持っているので、大きさの割に軽い魔石は、私が運びます。
装飾性の高いインペリアル・イースター・エッグをイメージし、
置きやすいように若干下部を加工してある桃色の魔石を
中央のスタンドに据える前にシオンを呼びよせます。
……面白いものが好きなら、きっと気に入るはず。
3人でエッグスタンドを囲み、そっと真ん中にはめると、魔石の中の赤い花が、ふんわりとほどけるように開き始めます。
そして、花の内側から優しく輝く魔石の表面に、魔法言語が勢いよく滑り落ち、光のリボンの様に広がり、
そのまま床まで広がって伸び、外円の魔法陣に触れ床に予め刻まれていた文字と絡まり、リンと光る。
「……美しいな。」
そう言って光を受けて微笑む婚約者殿が一番美しい。
「そろそろきますよ?」
フワッとした重力の揺さぶりの後、私たちは場所を移した。
*************
お久しぶりです。
お待ちいただいて居た方、いらっしゃいましたら有難うございます。
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