言葉の先にあるもの

花@脳内白紙

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第8話 最強コンビ

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   署内の朝。いつも通り、署内は活気がある。
 だが、天城は書類に目を通す手を止めていた。
「天城、出動だ」
 課長の声。天城は振り返ると、課長は既に拳を軽く握っている。
「例の誘拐事件っすか……?」
 課長は頷く。情報はまだ少ない。被害者は小学生、失踪から一時間。
「お前と俺のコンビで行く」
 天城は少し笑った。
「課長、昨日の飲み会の疲れは大丈夫っすか?」
「……関係ねぇ」
 ふたりのやり取りはいつも通り、軽口と皮肉が飛び交う。だが、内心では互いの動きを完全に把握していた。

 住宅街の一角、通報があった家。天城は静かに周囲を観察し、課長は道路の死角を確認。
「右手に抜け道」
「了解」
 互いに一言で連携が取れる。後輩や他の刑事には到底できない動きだ。
 天城が窓から室内を確認、課長は正面から入口を固める。
「……天城」
「いつでも」
 部屋の片隅に小さな足跡。被害者の持ち物を発見。
「足跡っすね」
 天城は小声で報告、課長は即座に判断。
「東方向だな。俺は正面、天城は裏」
「挟み了解。」
 互いの位置取りが、完璧にハマる。ふざけたやり取りをする二人だが、行動は抜群のコンビネーションだ。
 路地の隅、誘拐犯が被害者を連れ走る。天城はゆっくりと距離を詰め、犯人の視線を誘導。
 課長は正面から進入。タイミングを計る二人。息を合わせた一歩。
「行くぞ」
 天城が犯人の腕を捕まえ、課長が後ろから制止。瞬時に手錠をかける。
「逮捕っす!」
 被害者は無事、取り押さえられる。課長と天城の目が合う。無言で互いの腕を軽く叩く。連携の確認。この一瞬に、ふざけた日常の影はない。
 署内に戻ると、後輩たちが拍手を送る。
「課長、天城さん、すごいっす!」
 課長は軽く頭を下げ、天城は小さく笑った。
「……俺たち、普段あんな感じだけど、意外と相性いいんすよね」
 課長が微かに笑う。
「そうだな……本当は、あのふざけた空気が俺らの強みだ」
 天城は、肩をすくめる。
「飲み会であんな絡みしてても、いざって時は息ピッタリっす」
 課長は、ふと真面目な顔で天城を見た。
「……そういう奴だから、頼りになる」
 天城はにやりと笑った。
「ま、課長がちゃんと指揮してくれるおかげっすよ」
 普段のふざけた関係は、いざという時に、誰よりも強い武器になる。この二人のコンビは、誰にも真似できない。
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