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【俊視点】第二章
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いつからだろうか。真樹に特別な感情を抱かなくなったのは。ふとした時の笑顔も、Tシャツの裾を掴んでくる癖も、多少愛おしくは思うけれどそれ以上がない。
バリカンが刃先を削る音が、からっぽの頭をいい具合にうるさく埋め尽くしてくれる。梯子に掛ける重心を探りながら一段また一段と上ってはマキの木の形を整えていく。
「無理して進めなくてもいいからね。作業的には巻けてるし」
玄関口でマツを触るヒロキさんが、小気味よくハサミを動かしながら声を張る。聞こえなくてバリカンの手を止めると、シャンと刃の音が閑静な住宅街に響き渡った。
あの日、楓に再開した日からはっきりと俺は焦るようになっていた。それまでは不安になんて全くピントが合わなかったのに、今の楓をはっきりと直視してしまった瞬間から俺は、自分の足元の不安定さに気が付いてしまったのだ。
俺はあいつと、早く肩を並べなくてはいけない。
それはどう足掻いても俺の声で再生されて、脅迫のように何度も頭の中に響いた。
15時には作業も終わり、刈った木くずを捨て終わる頃には、楓との約束の時間が迫っていた。下宿近くのコンビニで降ろしてもらい、急いでシャワーを浴びて着替える。二日溜めた洗い物の匂いから逃げるように玄関から飛び出した。早足で駅前へ向かいBarの扉を引くと、スーツのシルエットを自分のものにした背中が、流れるジャズにそぐわない甲高い声でマスターと話し込んでいる。
隣に腰を下ろすまで楓は俺に気付くことはなかった。
「ごめん。おまたせ」
「あ! 俊だ! いいよー私も今来たところだから。マスター! 梅酒のソーダ割り2つ濃いめで!」
今来たとこ、でこうはならないだろうと思いながら、俺はマスターに軽く会釈をした。
バリカンが刃先を削る音が、からっぽの頭をいい具合にうるさく埋め尽くしてくれる。梯子に掛ける重心を探りながら一段また一段と上ってはマキの木の形を整えていく。
「無理して進めなくてもいいからね。作業的には巻けてるし」
玄関口でマツを触るヒロキさんが、小気味よくハサミを動かしながら声を張る。聞こえなくてバリカンの手を止めると、シャンと刃の音が閑静な住宅街に響き渡った。
あの日、楓に再開した日からはっきりと俺は焦るようになっていた。それまでは不安になんて全くピントが合わなかったのに、今の楓をはっきりと直視してしまった瞬間から俺は、自分の足元の不安定さに気が付いてしまったのだ。
俺はあいつと、早く肩を並べなくてはいけない。
それはどう足掻いても俺の声で再生されて、脅迫のように何度も頭の中に響いた。
15時には作業も終わり、刈った木くずを捨て終わる頃には、楓との約束の時間が迫っていた。下宿近くのコンビニで降ろしてもらい、急いでシャワーを浴びて着替える。二日溜めた洗い物の匂いから逃げるように玄関から飛び出した。早足で駅前へ向かいBarの扉を引くと、スーツのシルエットを自分のものにした背中が、流れるジャズにそぐわない甲高い声でマスターと話し込んでいる。
隣に腰を下ろすまで楓は俺に気付くことはなかった。
「ごめん。おまたせ」
「あ! 俊だ! いいよー私も今来たところだから。マスター! 梅酒のソーダ割り2つ濃いめで!」
今来たとこ、でこうはならないだろうと思いながら、俺はマスターに軽く会釈をした。
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