41 / 41
:第41話 「アラン・フルーリーは兵士になった」
しおりを挟む
:第41話 「アラン・フルーリーは兵士になった」
アラン・フルーリーは、決意した。
必ず、あの戦車を生かしてはおかないと。
ベイル軍曹が刺し違えようとした敵。
軍曹だけがいなくなって、戦車だけが生きている。
そんなことは到底、許すことはできなかった。
だが、戦車を倒すことは、生身では不可能だ。
小銃など役には立たないし、手榴弾も、残念ながら使い切ってしまったために持ち合わせがない。
「アラン! どうするつもりなの? 」
きょろきょろと周囲を見渡して使えるものがないかどうかを探すアランの様子に気づいて、G・Jが心配そうに問いかけて来る。
その間に、見つけていた。
まだ一門だけ、使えそうな対戦車砲が残っている!
それは、B分隊の陣地にすえつけられていたものだった。
一撃必殺(ワンショット・ワンキル)。
その信念を身にまとった、戦友。
「あの戦車を、撃破する。……それが、軍曹の命令だから」
振り返ることもなく、アランは告げる。
「G・J。手伝って欲しい」
そう言うと彼は連邦軍の様子を観察する。
敵の将兵の目は、どうやら爆破された橋の方へ集中しているらしかった。
それ以外の者も残敵を徹底的に探すように命じられて散らばっていく。
その様子を確認すると、アランは姿勢を低くしたまま駆け出していた。
G・Jがついて来てくれているかどうかの確認は取らなかった。
その必要はないと思ったからだ。
ここはもはや敵地だった。
それなのに、アランは敵に気づかれることなく対戦車砲の下にまでたどり着く。
不気味なほど運が良かった。
しかも、思った通り砲も動作する様子だった。
その使い方について正式に訓練を積んでいたわけではなかったが、使用法も分かる。
側でずっと見ていたからだ。
だが、砲弾が装填されていない。
「G・J! 徹甲弾を探して! 」
思った通りついて来てくれていたG・Jにそう言いながら、自分自身も周囲を探す。
目につくのは、空薬莢ばかりだ。
塹壕の底にじゃらじゃらと転がっている。
「アラン、これ! 」
その時、G・Jが使えそうなものを見つけてくれた。
それは息絶えて横たわっているミュンター上等兵の顔の、すぐそばに、彼の血糊(ちのり)をまとって置かれている。
これを、使え。
そう言われているような気がして、アランはすぐにその砲弾に手をのばしていた。
タングステン合金を弾芯に用いた、特殊徹甲弾。
その、最後の一発。
榴散弾を発射するために急いで交換した時に引き抜かれたものだった。
開かれたままの砲尾に押し込むと、ぴったりと隙間なく納まる。
そして尾栓を閉じて閉鎖を確認したアランは、簡易照準器を利用して目視しながら、ハンドルを操作して砲を戦車へと向けていく。
敵は、すでに小川を脱出しつつあった。
さすがに不整地での走行能力に長けた兵器だ。
しっかりとキャタピラがかみ合い、段差に運悪くはまってしまったりしない限りは、止められない。
(射撃距離は……、どのくらいだ!? )
照準器の中に敵の姿を捕えることができたものの、目標までの正確な距離がつかめない。
残っている特殊徹甲弾は、たったの一発。
その一発を、万一にも外したくはない。
距離と言っても、数百メートル。
適当に撃ってもどこかには命中をさせられるのに違いなかったが、アランはこの一撃で勝負を決めたかった。
その時、不意に声がした気がした。
目標、左前方、十時の方向。
距離、二百メートル。
目標、敵戦車———。
(ベイル軍曹! )
もう二度と聞くことができないはずのその声に懐かしさを覚えながら、アランはその指示に従って砲を操作する。
祝福。
福音。
仲間たちが、力を与えてくれている。
後は、発射するだけ。
そう思って引き金に指をかけたが、———その手が震えていることに気づく。
(本当に、撃ってもいいのか? )
これで、命中させられるのか。
そんな疑問が頭をよぎるのと同時に、忘れていたはずの感覚が蘇って来る。
生存本能。
捨て去ったと思っていた衝動が、にわかに湧き上がった。
せっかく生き残ったのに。
ここで対戦車砲を発砲してしまえば、敵は、こちらに気づくことになる。
そうなれば、生還はきっと、できないだろう。
(今さら、なにを! )
アランは小さく首を振って、歯を食いしばり、その、生物としての自然な、あって当然の欲求を振り払おうとする。
そんな彼を促すように、なにかが肩に触れた気がした。
まるで、誰かがそっと手を添えるような感覚。
カルロ・パガーニ伍長。
マリーザ・ルッカ伍長。
ダニエル・ミュンター上等兵。
亡くなっていた者たちが、そこに[いる]。
そんな感覚に囚われたアランは、背筋に悪寒を覚えていた。
自分は、彼らの霊に取りつかれているのか。
取りついた彼らが、戦えと、そう言っている。
そんなふうに思えたからだ。
まるで、呪いのようだと感じる。
死者が生者を呼び寄せているかのように、戦え、戦えと、催促(さいそく)されている!
そこに、不意に暖かな感触が触れた。
「G・J……」
そこには、アランの肩に手を添え、じっとこちらを見つめて来ているジンジャー・ジョーンズの姿があった。
「いいのかい? 本当、に……? 」
思わず、そうたずねる。
ここで対戦車砲を放てば、アランだけでなく、彼女だって危ういのだ。
それで、後悔はしないのか。
情けない話だったが、アランは自分には導き出せないその答えを、G・Jに問いかけていた。
「はい。……それで、かまいません」
そばかすの痕の残る、まだ幼い雰囲気も感じさせる顔立ちを持った少女は、はっきりとうなずいてみせた。
その姿を目にして、全身の震えが止まる。
恐怖が薄れ、代わって、戦わなければならない、という気持ちが、より強固になって生まれる。
王国は、戦火に見舞われた。
決して望んだことなどない、不本意な戦争。
連邦と帝国という、マグナ・テラ大陸に存在する二大勢力から同時に侵略を受けるという、未曽有の事態だ。
その戦いは、激しいものとなるだろう。
そしてそれに敗北すれば、王国はこの地上から消滅し、そこに暮らしていた人々はそれぞれの居場所を追われることとなる。
降伏したとしても、平和は約束されてはいない。
すでに戦争状態にある連邦と帝国は、今度は王国という場所を戦場として、激しく戦い続けるのに違いないからだ。
そしてそこに生きる人々は戦火の中を右往左往とし、時には、占領者となった連邦や帝国から、その先兵として使われることとなる。
そのような事態を避けるためには、戦わなければならなかった。
少なくとも王国が自立した国家として存続することを認められ、その主権が尊重され、領土が保全されると約束されない限りは。
アランたち王国に暮らす人々が、彼ら自身の意志で、なにかを強制されることなく生きていくことのできる、そんな場所を得られるまで。
きっと、その願いを叶えるのは苦しい道のりになるだろう。
その権利を回復するためには、多くの血を流して、敵に、彼らの思惑通りには絶対にならない、できないのだと、理解させなければならないからだ。
言葉だけでそれができたのならば、どんなに良かっただろうか。
だがすでに侵攻は開始され、血が流され、命が失われている。
自らがいったい、なにを行っているのか。
その痛みを、悲しみを、愚かさを思い出すまで、戦い続ける以外にはなくなってしまった。
もしここで抵抗をやめれば、それを、武力侵略を行った側は自身の成功体験ととらえ、また、武力を用いた侵略をくり返すのに違いないからだ。
今日、大勢がその命の炎を燃やしきったように、アランも、G・Jも、灰となって消え失せてしまうのかもしれない。
それでも、———成さねばならない。
この命がある限り。
身体の中心で、心臓が鼓動を続けている限り。
その覚悟が、強固に出来上がっていく。
迷いが、消える。
(もしかしたら……)
不意に、脈絡のない情景が浮かんでくる。
G・Jと、まだ顔もわからない子供たちと、賑やかに食卓を囲んでいる場面(シーン)だ。
食卓の中央には、ターキー。
きっと、なにかのお祝い事なのだろう。みなが笑っている———。
もし。
もしも生き残ったら。
(こんな未来も、あるのかもしれない……)
すっかり覚悟が固まったはずなのに、それでも自分のどこかに未練が残り続けていることに口の端を吊り上げて苦笑し、アランはその幸せな空想を振り払う。
そしてその直後、彼はついに引き金を引き、解き放たれた牙は敵戦車の側面を射抜いていた。
———その日、アラン・フルーリーは、兵士になった。
過ぎ去って行った者たちの想いを、願いを背負い。
彼らの祝福と、呪いとを、その身に受けて。
鋼鉄の怪物を屠(ほふ)る、狩人(ハンター)に。
戦いが終わるその時まで、命が尽き果てるまで、戦い続けなければならない宿命を背負った、兵士に。
誕歴三千六百九十八年・五月二十四日。
王立陸軍、第二一七独立対戦車砲連隊・第二大隊は壊滅し、その数百名の人員の生命と共に消失した。
だが、生き残った者たちにとっての戦いは、まだ、始まったばかりであった……。
────────────────────────────────────────
開戦から、三日———。
そのわずかな期間の間に戦われた、短く、激しく、悲壮な戦いは、歴史の中にうずもれることとなる。
連邦においては、貧弱な三十七ミリ対戦車砲しか持たない敵に対し、最新鋭の兵器を備えた戦車大隊が壊滅させられ、その後の作戦行動にも影響を被るという、失態と言うしかない出来事を覆い隠すために隠蔽されて。
王国においては、先に脱出した者たちを除いてはほんの数名の生還者しかなく、第二大隊が多大な戦果をあげた戦いについて、語れる者があまりにも少なかったために。
その戦いの様相は、長く明らかになることがなかった。
こうして歴史の中に葬り去られ、忘れ去られた戦いの存在が明らかになったのは、戦後、数十年もの年月が経ってからのことだ。
国際社会の緊張が解け、過去の戦争についての秘密が公開されるようになり、その中で、当時参戦した連邦側の将兵の手記が発表されて、ようやくであった。
アラン・フルーリーは、決意した。
必ず、あの戦車を生かしてはおかないと。
ベイル軍曹が刺し違えようとした敵。
軍曹だけがいなくなって、戦車だけが生きている。
そんなことは到底、許すことはできなかった。
だが、戦車を倒すことは、生身では不可能だ。
小銃など役には立たないし、手榴弾も、残念ながら使い切ってしまったために持ち合わせがない。
「アラン! どうするつもりなの? 」
きょろきょろと周囲を見渡して使えるものがないかどうかを探すアランの様子に気づいて、G・Jが心配そうに問いかけて来る。
その間に、見つけていた。
まだ一門だけ、使えそうな対戦車砲が残っている!
それは、B分隊の陣地にすえつけられていたものだった。
一撃必殺(ワンショット・ワンキル)。
その信念を身にまとった、戦友。
「あの戦車を、撃破する。……それが、軍曹の命令だから」
振り返ることもなく、アランは告げる。
「G・J。手伝って欲しい」
そう言うと彼は連邦軍の様子を観察する。
敵の将兵の目は、どうやら爆破された橋の方へ集中しているらしかった。
それ以外の者も残敵を徹底的に探すように命じられて散らばっていく。
その様子を確認すると、アランは姿勢を低くしたまま駆け出していた。
G・Jがついて来てくれているかどうかの確認は取らなかった。
その必要はないと思ったからだ。
ここはもはや敵地だった。
それなのに、アランは敵に気づかれることなく対戦車砲の下にまでたどり着く。
不気味なほど運が良かった。
しかも、思った通り砲も動作する様子だった。
その使い方について正式に訓練を積んでいたわけではなかったが、使用法も分かる。
側でずっと見ていたからだ。
だが、砲弾が装填されていない。
「G・J! 徹甲弾を探して! 」
思った通りついて来てくれていたG・Jにそう言いながら、自分自身も周囲を探す。
目につくのは、空薬莢ばかりだ。
塹壕の底にじゃらじゃらと転がっている。
「アラン、これ! 」
その時、G・Jが使えそうなものを見つけてくれた。
それは息絶えて横たわっているミュンター上等兵の顔の、すぐそばに、彼の血糊(ちのり)をまとって置かれている。
これを、使え。
そう言われているような気がして、アランはすぐにその砲弾に手をのばしていた。
タングステン合金を弾芯に用いた、特殊徹甲弾。
その、最後の一発。
榴散弾を発射するために急いで交換した時に引き抜かれたものだった。
開かれたままの砲尾に押し込むと、ぴったりと隙間なく納まる。
そして尾栓を閉じて閉鎖を確認したアランは、簡易照準器を利用して目視しながら、ハンドルを操作して砲を戦車へと向けていく。
敵は、すでに小川を脱出しつつあった。
さすがに不整地での走行能力に長けた兵器だ。
しっかりとキャタピラがかみ合い、段差に運悪くはまってしまったりしない限りは、止められない。
(射撃距離は……、どのくらいだ!? )
照準器の中に敵の姿を捕えることができたものの、目標までの正確な距離がつかめない。
残っている特殊徹甲弾は、たったの一発。
その一発を、万一にも外したくはない。
距離と言っても、数百メートル。
適当に撃ってもどこかには命中をさせられるのに違いなかったが、アランはこの一撃で勝負を決めたかった。
その時、不意に声がした気がした。
目標、左前方、十時の方向。
距離、二百メートル。
目標、敵戦車———。
(ベイル軍曹! )
もう二度と聞くことができないはずのその声に懐かしさを覚えながら、アランはその指示に従って砲を操作する。
祝福。
福音。
仲間たちが、力を与えてくれている。
後は、発射するだけ。
そう思って引き金に指をかけたが、———その手が震えていることに気づく。
(本当に、撃ってもいいのか? )
これで、命中させられるのか。
そんな疑問が頭をよぎるのと同時に、忘れていたはずの感覚が蘇って来る。
生存本能。
捨て去ったと思っていた衝動が、にわかに湧き上がった。
せっかく生き残ったのに。
ここで対戦車砲を発砲してしまえば、敵は、こちらに気づくことになる。
そうなれば、生還はきっと、できないだろう。
(今さら、なにを! )
アランは小さく首を振って、歯を食いしばり、その、生物としての自然な、あって当然の欲求を振り払おうとする。
そんな彼を促すように、なにかが肩に触れた気がした。
まるで、誰かがそっと手を添えるような感覚。
カルロ・パガーニ伍長。
マリーザ・ルッカ伍長。
ダニエル・ミュンター上等兵。
亡くなっていた者たちが、そこに[いる]。
そんな感覚に囚われたアランは、背筋に悪寒を覚えていた。
自分は、彼らの霊に取りつかれているのか。
取りついた彼らが、戦えと、そう言っている。
そんなふうに思えたからだ。
まるで、呪いのようだと感じる。
死者が生者を呼び寄せているかのように、戦え、戦えと、催促(さいそく)されている!
そこに、不意に暖かな感触が触れた。
「G・J……」
そこには、アランの肩に手を添え、じっとこちらを見つめて来ているジンジャー・ジョーンズの姿があった。
「いいのかい? 本当、に……? 」
思わず、そうたずねる。
ここで対戦車砲を放てば、アランだけでなく、彼女だって危ういのだ。
それで、後悔はしないのか。
情けない話だったが、アランは自分には導き出せないその答えを、G・Jに問いかけていた。
「はい。……それで、かまいません」
そばかすの痕の残る、まだ幼い雰囲気も感じさせる顔立ちを持った少女は、はっきりとうなずいてみせた。
その姿を目にして、全身の震えが止まる。
恐怖が薄れ、代わって、戦わなければならない、という気持ちが、より強固になって生まれる。
王国は、戦火に見舞われた。
決して望んだことなどない、不本意な戦争。
連邦と帝国という、マグナ・テラ大陸に存在する二大勢力から同時に侵略を受けるという、未曽有の事態だ。
その戦いは、激しいものとなるだろう。
そしてそれに敗北すれば、王国はこの地上から消滅し、そこに暮らしていた人々はそれぞれの居場所を追われることとなる。
降伏したとしても、平和は約束されてはいない。
すでに戦争状態にある連邦と帝国は、今度は王国という場所を戦場として、激しく戦い続けるのに違いないからだ。
そしてそこに生きる人々は戦火の中を右往左往とし、時には、占領者となった連邦や帝国から、その先兵として使われることとなる。
そのような事態を避けるためには、戦わなければならなかった。
少なくとも王国が自立した国家として存続することを認められ、その主権が尊重され、領土が保全されると約束されない限りは。
アランたち王国に暮らす人々が、彼ら自身の意志で、なにかを強制されることなく生きていくことのできる、そんな場所を得られるまで。
きっと、その願いを叶えるのは苦しい道のりになるだろう。
その権利を回復するためには、多くの血を流して、敵に、彼らの思惑通りには絶対にならない、できないのだと、理解させなければならないからだ。
言葉だけでそれができたのならば、どんなに良かっただろうか。
だがすでに侵攻は開始され、血が流され、命が失われている。
自らがいったい、なにを行っているのか。
その痛みを、悲しみを、愚かさを思い出すまで、戦い続ける以外にはなくなってしまった。
もしここで抵抗をやめれば、それを、武力侵略を行った側は自身の成功体験ととらえ、また、武力を用いた侵略をくり返すのに違いないからだ。
今日、大勢がその命の炎を燃やしきったように、アランも、G・Jも、灰となって消え失せてしまうのかもしれない。
それでも、———成さねばならない。
この命がある限り。
身体の中心で、心臓が鼓動を続けている限り。
その覚悟が、強固に出来上がっていく。
迷いが、消える。
(もしかしたら……)
不意に、脈絡のない情景が浮かんでくる。
G・Jと、まだ顔もわからない子供たちと、賑やかに食卓を囲んでいる場面(シーン)だ。
食卓の中央には、ターキー。
きっと、なにかのお祝い事なのだろう。みなが笑っている———。
もし。
もしも生き残ったら。
(こんな未来も、あるのかもしれない……)
すっかり覚悟が固まったはずなのに、それでも自分のどこかに未練が残り続けていることに口の端を吊り上げて苦笑し、アランはその幸せな空想を振り払う。
そしてその直後、彼はついに引き金を引き、解き放たれた牙は敵戦車の側面を射抜いていた。
———その日、アラン・フルーリーは、兵士になった。
過ぎ去って行った者たちの想いを、願いを背負い。
彼らの祝福と、呪いとを、その身に受けて。
鋼鉄の怪物を屠(ほふ)る、狩人(ハンター)に。
戦いが終わるその時まで、命が尽き果てるまで、戦い続けなければならない宿命を背負った、兵士に。
誕歴三千六百九十八年・五月二十四日。
王立陸軍、第二一七独立対戦車砲連隊・第二大隊は壊滅し、その数百名の人員の生命と共に消失した。
だが、生き残った者たちにとっての戦いは、まだ、始まったばかりであった……。
────────────────────────────────────────
開戦から、三日———。
そのわずかな期間の間に戦われた、短く、激しく、悲壮な戦いは、歴史の中にうずもれることとなる。
連邦においては、貧弱な三十七ミリ対戦車砲しか持たない敵に対し、最新鋭の兵器を備えた戦車大隊が壊滅させられ、その後の作戦行動にも影響を被るという、失態と言うしかない出来事を覆い隠すために隠蔽されて。
王国においては、先に脱出した者たちを除いてはほんの数名の生還者しかなく、第二大隊が多大な戦果をあげた戦いについて、語れる者があまりにも少なかったために。
その戦いの様相は、長く明らかになることがなかった。
こうして歴史の中に葬り去られ、忘れ去られた戦いの存在が明らかになったのは、戦後、数十年もの年月が経ってからのことだ。
国際社会の緊張が解け、過去の戦争についての秘密が公開されるようになり、その中で、当時参戦した連邦側の将兵の手記が発表されて、ようやくであった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す
みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための
「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した
航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。
航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。
そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。
現在1945年夏まで執筆
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる