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その8
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ついに期末試験が始まってしまった。
とはいえ始まってしまえばどうということもない。つまるところ試験に備えて勉強するのが億劫なのであって、準備の余地がなくなってしまえば、あとはもう、座して処断を待つのみに過ぎないのである。
そんなわけで試験初日を終える。無論、手応えなどない。霞を掴むがごとし。
こざかしいことに試験は数日にわたって実施されるので、開き直るにはまだ早い。かたちだけでも、最後の悪あがきをしなければいけない。
放課後、昼過ぎ。俺はあーちゃんを伴って帰宅した。勉強会という名目である。夏目にも声をかけたが、あくまで名目でしかないことを敏感に察知され、断られてしまった。秀才にも参加してもらったほうが体裁は良いのだが、しかたない、奴は真面目なのだ。無理強いはできない。
家には誰もいなかった。鍵を開けて中に入る。
「シル坊は?」
慣れた感じで靴を脱ぎながら、あーちゃんが聞いてくる。
「母さんたちと出かけてる」
と、そういえば今朝方聞かされていたことを思い出して答える。祖母も一緒に、母の実家に行くという話だった。母の実家は畑をやっていて、ときどき顔を出して野菜やら何やらをもらってくる。昔は俺や紗莉も付き合わされたものだったが、最近は遠慮させてもらうことが多い。けっこう遠いし。
「ずいぶんなじんでるな」
「なんか用あった?」
「いや……まあ、いないほうが話しやすいか……?」
なんだか思わせぶりなあーちゃんを自室に通してから、麦茶を取りに行く。部屋に戻ると、勝手知ったるあーちゃんはベッドに腰掛け、エアコンにリモコンを向けているところだった。雑然とした室内において、この短時間でリモコンを発見するのは簡単なことではない。鋭い洞察力のなせる業であろう。
ややあって、ゴアアーとぬるい風を吐き出し始める。
「で、どんな話?」
麦茶をおかわりして一息ついたところで促した。あーちゃんはうなずいてから口を開くまで、だいぶ間を置いた。
「シル坊さ、ちょいちょい凶暴になるだろ」
「ああ、なるねえ、なるなる」
「やっぱそう思うよな。リゼリヤお姉さまとやらが、魔女の身内って知られた途端に恋人にフラれたとか言ってたろ? まさか地雷女の代名詞にでもなってんのかと勘ぐったけど」
俺も以前から気になっていたことだった。シルシュはときどき様子がおかしいことがある。先日はいきなり杖で殴りかかったり、やめろって注意したのに拷問を強行したり、それが顕著だった。初めこそ暴力的で見境のない魔女っ子としか思えなかったものの、それは仕事をバックレている師匠を力づくでも連れ戻すという使命感が高じたためであって、根はおとなしめの子供なのだと印象を改めていたのだが。
魔女に造られたホムンクルスの性質なのか、あるいは魔女に接していると誰もがかんしゃく持ちになってしまうのか。ただ、シルシュに関しては、それ以外の要因も考えられるとあーちゃんは言う。
「こないだ、魔女の悪行を聞かせてもらったろ?」
「悪行っていうか、弟子いびりのやつね」
「そうそれ。リゼリヤから過去の弟子たちの記憶やらをまとめて受け取ったって話だったが、そのせいじゃねーのかな」
「お姉さまがたのうらみつらみに引っ張られて自分までうらめしくなっちゃったってこと?」
「それだけのことならたいしたことじゃないんだが、自分の記憶と混同しちまう、みたいなことも言ってたんだよな。実際、魔女と話してたときにもシル坊じゃなくて弟子本人なんじゃないかって思える言動があったし」
「たとえば?」
いくつかあったが、と前置きしてから、あーちゃんは短く告げる。
「『お母さま』」
はて、と俺は首をひねる。察するに、シルシュが魔女をそう呼んでいた、ということか。特に気に留めなかったけど、学校の先生を間違って呼んじゃって恥ずかしいやつじゃないの?
「ちょっと話それるけど、前から気になってんだよ。師匠である魔女のことは『お師匠』、姉弟子のリゼリヤは『お姉さま』。なんか違和感ないか?」
「ふむ。偉いはずの師匠に『さま』を付けてない」
「そう。それに、仮に『お師匠さま』だったとして、姉弟子を『お姉さま』って呼ぶか?」
「『ねえさん』とかのほうがしっくりくるけど、でもなくはないって気もするし、そもそも翻訳されてるんでしょ? 細かいところまで正確ってわけにはいかないんじゃない?」
「いや、でもよ、『お師匠さま』じゃなくて『お師匠』、それなのに『お姉さま』だぞ? むしろ、かなり律儀に意訳されてるように僕には思える」
まあ確かに、シルシュと話が噛み合わなかったり語句に違和感があったりしたおぼえはない。ただ、実際に翻訳がどうかということよりも、あーちゃんが何を言おうとして妙に細かいところに着目しているのかが気になった。
「仮に、翻訳のまま『お師匠』、『お姉さま』と呼んでるとして。師匠に対して敬称を付けないのに、シル坊のほうから『お姉さま』なんて呼ぶとは思えないから、たぶんリゼリヤがそう呼ばせたんだろう。つまり、リゼリヤにとっては、シル坊とは『姉妹』の関係のつもりなんだろうよ」
「ああ、そうか。だから『お母さま』って」
あーちゃんがうなずく。魔女はシルシュたちホムンクルスの生みの親のわけだから、ホムンクルス同士は『姉妹』とみなすほうが断然自然だ。魔女とシルシュが『師弟』だというから、これまでは『弟子同士』と認識してきたけど。
しかし、それならどうして魔女とシルシュは『師弟』なのか。普通に考えれば『親子』になるわけで、実際リゼリヤやそれ以前のホムンクルスたちとは『親子』だったのだろう。だからこそ、リゼリヤたちの記憶に影響されたシルシュは、魔女を『お母さま』と呼んだわけで。
聞いたかぎりでは、特に魔法を教わったりもしていないらしいし、謎だ。
「たぶん、『師弟』である理由なんてないんだと思う。なんか心境の変化があって、ホムンクルスへの態度を改めようと思った。その意思表示みてーなもんじゃねーかな」
「態度を改めるって、弟子いびりはやめるってこと?」
「とりあえず、魔女の態度で、シル坊とリゼリヤたちとで違うところはそれくらいしか思いつかんな」
なるほど。となるとひょっとして、辺鄙な場所に引きこもって『全宙連』とやらの依頼もほとんど受けなくなったというのも、その心境の変化と関係あったりして。
「こっからは、ちょっとばかり飛躍した話になるんだが」
そう前置きして、あーちゃんは突飛な推理を繰り出す。
端的に表現すると、魔女は人間に従属しなければいけない性質があるのではないか、というもの。『全宙連』からの頼まれごとをほっぽらかして逃亡したにもかかわらず、わざわざ見知らぬ土地で女子供の願いを叶えてやっていたのは、そのせいではないのか、と。
シルシュが言うには、魔女はマナから生まれるものだという。マナは魔法を媒介し、世界を変容させる。翻って、世界とはマナのありようだとも。
ということは、マナから生まれる魔女もまた、同様の性質をもつのではないか。つまり、魔女はマナによって変質しうる。
自我をもつ存在であれば、外部からの影響で自身が変化させられるというのは大変な恐怖だろう。性格や価値観が変わるだけでも相当なことだし、記憶が連続していないとも限らない。ある日突然、自覚のないまま別人になるようなものだ。以前の自分から見れば、死んだのと大差ない。
変化させられないためには、マナから受ける影響の方向性をコントロールすることが方法として考えられる。それこそが、『人間の言うことを聞く』、『人間のために働く』ことなのだとしたら。
つまり、魔女には『人間に従順な存在』というイメージが先行してあって、それに反する行動はイメージを崩してしまいかねず、ひいては魔女自身を脅かすことになる。だからしかたなく、人間の手助けをしているのではないか。
魔女にとっては不本意なことで、不満もたまる一方。そこで、不満のはけ口として、ホムンクルスをつくることにした。人間を模してはいるが人間ではないホムンクルスに対しては、従順である必要はない。
「――と考えると筋は通るし、シル坊と魔女の会話の内容も意味が通る。リゼリヤたちが魔女をうらんでる原因も、嫌がらせそのものじゃなくて、嫌がらせを受けさせるために生み出されたっていう部分なんじゃねーのかな」
「うぅ~む……た、確かに?」
俺は電池の切れかけたおもちゃのようにうなるばかりで気の利いた返事ができない。つーかあーちゃん、なんでそんなんすらすら出てくるの? なんかズルしてるでしょ絶対。攻略本見てるとかさぁ。
「要するに、シル坊に嫌がらせしなかったのは、頼まれごとが減ってストレスがなくなったか、逆に嫌がらせしないために引きこもることにしたのかってことだな」
あ、そういうことですね。なるほどわかりやす~い。
「でもさ、言い合いになってたってことは、心を入れ替えたってわけじゃないんじゃない?」
「どうだろ。僕はむしろ、いじめをする奴ってのはどんなときでもいじめるように思うけどな。それまで好き放題やってきたのが、ストレスがなくなったからって急にしおらしくなるとも思えん。理由なんて後付けだから、なくなりゃ別の理由を探すだけ」
むむ、一理ある。じゃあなんで、と聞く前にあーちゃんは続ける。
「魔女だって、人間と同じように長く生きたからってうまく大人になれなかったりするのかもしれない」
「…………急にどうした?」
「まあ聞けよ。だからさ、どういういきさつがあったか知らんが、これからはホムンクルスにもやさしく接しようと改心したとする。けど、どうしても鬱憤を晴らすために自分でつくりだしたものだっていう考えが抜けなくて、自制が利かないことがあるんじゃねーかってことよ」
「あー……まあ、年をとっても昔からの癖って直らないっていうしね」
「うん? うん、まあ、そんな感じか?」
「なんかあーちゃん、魔女の肩もつね?」
「そんなつもりはねーよ」
と、鼻を鳴らすあーちゃん。ふむ、ツンデレとは違うか。なんていうか、しのぎを削ったライバルを讃える感じ?
そういえばシルシュが、魔女とはあまり話すこともなかったと言っていたような気がする。そうしないとついつい理不尽な接し方をしてしまうから、あえて距離を置いていたとも考えられる。さらに言えば、『親子』から『師弟』にシフトしたのも距離感を意識しているように思われる。さらにさらに言えば、そもそもこちらの世界へ出奔してきたのも、『全宙連』からの依頼に不満があってなんやかんやで沸点を超えて、シルシュに八つ当たりしそうになったのをぐっと我慢して飛び出したのかもしれない。
「まあ、そんなところなのかもな」
相槌をうつあーちゃんはあきれたように肩をすくめる。あーちゃんのことだから、俺に思いつく程度のことは当然のように考え進めていたことだろう。そうか、それでちょっと魔女に同情的なのかな。
ガラリッと出し抜けに戸が開いて、びっくりして見るとそこには紗莉が立っていた。制服姿で、カバンも提げたまま。帰ってきて直で俺の部屋に来たらしい。
「……おかえり孝平」
「お前がおかえりだよ。なんだよ急に開けるなよ」
「声がしたから」
だからってノックもなしに年頃の弟の部屋を開けていいはずがない。まあ、変に静かなときよりは事故発生確率は低いかもしれないけども。
おそらくそんな計算はしていない紗莉は、いつもどおりの情報量が少ない表情をあーちゃんに向ける。
「あーちゃんいらっしゃい」
「おかえり紗莉さん。おじゃましてます」
軽い会釈を受け、わずかに口元が弧を描く。あーちゃんが、その小さな変化を注視しているのを俺は見逃さない。
「麦茶ちょうだい」
紗莉は部屋に入ってきて、テーブルの前に膝をついた。借りるね、と手に取ったコップはあーちゃんのもの。単に手前にあっただけで他意はない。しかしかつてのあーちゃんなら、こんなことがあったら目を白黒させて踏み台昇降運動を始めただろうに、今はまったく動じる素振りもない。いつのまに、紗莉を前にしてもこんなふうに落ち着き払っていられるようになったのだか。
ただ、麦茶を注ぎ、コップに口をつけ、喉を上下させる様子をじっと見ている。別に冷めたわけではないのだ。それはまちがいない。
コップを半分空けたところで、紗莉が俺のほうを向く。
「明日もテストなんだから、遊んでちゃだめじゃない」
「これからやるとこ」
「うそ」
短く言って、眉根を寄せる。だがそんな非難がましい視線もどこ吹く風。そらとぼける俺に、紗莉はため息をひとつ。
「今日、お母さんがあの子を連れて出かけたの、孝平に勉強させるためなんだから。面倒見がいいのはけっこうだけど、肝心なことをおろそかにされちゃあ困る、って」
「ぐう……」
そう言われると、ぐうの音しか出ない。ただでさえ、先日のジャコスン異界探索の件で、試験前にもかかわらず外泊してお小言をいただいたところだった。
さすがに、在りし日のジャコスンに迷い込んでなんやかんやで朝だったなどとは説明していない。わけあって友達の家に泊まったとだけ。しかし子連れはいくらなんでもまずかった。
一応、ウチの家族は俺がシルシュを手伝っていることを把握してくれている。初っ端に魔法のことも明かしたし、ざっくり親探しとだけで細かくは伝えていないが、かなりファンタジー寄りの話であることは説明してある。ただ、それがどのように受けとめられているのかは正直よくわからない。何考えてんだろね、大人たちは。
俺の渋面をしばらくにらんで、紗莉はあーちゃんへ水を向ける。
「あーちゃんも。本当は賢いんだから、しっかり勉強したほうがいいよ。あーちゃんがやれば孝平だってきちんとしてくれるだろうし」
「まるで俺があーちゃんの腰巾着かのような言い草」
「そうじゃないの」
そうだけどさ。
「紗莉さん、進学して家を出るんだってね」
と、あーちゃんが話をそらす。でもちょっと待って。そらす方向、そっちでいいの?
紗莉はすこしだけ目を大きくして振り返る。高い位置で結んだ髪が、大きくスイングした。
「そう。孝平から聞いた?」
「親伝いに。けっこう広まってると思うよ」
「えぇ……それはいやだなぁ」
そうして二人、苦笑を見合わせる。まあ、なにせご近所でも評判の美人さんのことですからね、知れ渡るのもしかたのないところでしょう。ついでに父の悪評も立っていやしないかと、そっちのほうが心配。
「でも、今ね、やっぱり考え直そうかと思ってるんだ。家から通えるところのほうがいいかなって」
「どうして?」
「うん……ちょっとね」
「でも、この近辺だと限られるんじゃない? 理系なんて特に」
しばらくの間、あーちゃんと紗莉は大学について話をする。俺は口を挟まずにいたけれど、会話についていけないからではない。あーちゃんに、二人で話す時間を邪魔しないよう気を遣ったというのとも、少し違う。
紗莉と話すとき、あーちゃんはいつものべらんめえ気味の口調が出なくなる。声色もやさしい。たぶん、意識してそうしているのだと思うけど、俺にはどうにも鈍重に感じられて、らしくないなと思ってしまう。はっきり言うと、気に入らない。
「それじゃあね、あーちゃん。孝平、今さらどうにもならないとか言わないで、ちゃんと勉強しなよ」
紗莉が立ち上がって、部屋を出ていく。あーちゃんの目はその背中を追い、戸が閉められたあとも離れない。放っておけば半日くらいそうしてそう。
ちょっとからかってやろうと思いついた。
「あーちゃん、告白とかしないの?」
「誰に?」
「紗莉に」
「もうした。フラれた」
「あ、そうだったんだ。ふーん……」
あーちゃんが、ようやく向き直って、おもむろに麦茶を注ぎ始める。
「えっ、マジで!!!?」
「うるせーな。麦茶こぼしちゃったじゃねーか」
「えぇぇ……で、でもさぁ、えぇぇぇ……」
動揺のあまりそのへんに落ちてた靴下でテーブルを拭いてしまう。だって、なんとなく、あーちゃんと紗莉って未来永劫進展しないものだと思っていたのだ。いやまあ俺の勝手な思い込みなんだけど。だって、二人とも何を考えているかわからないし、それにあーちゃんはこの手のことには絶対に二の足を踏むタチとばかり……
「ねえそれ、いつのこと?」
「紗莉さんが中学を卒業する直前」
「そんなに前……」
俺は絶句する。同時に理解した。あーちゃんが紗莉のことをどう思っているか、道理で俺には計り知れなかったわけだ。俺の知らない展開が、二人の間にはあったのだ。そのうえそれに伴う変化にも気づけずにいたとは……この西山、一生の不覚。
というか、そんな展開があったわりには気まずい雰囲気とか全然ないし。もうだいぶ時間が経ってるから? 当時はそれなりにぎくしゃくしてたのだろうか。しかも傷心のあーちゃんを放置してしまってもいたわけで。うむむ、俺が鈍感なばかりに、なんてことだ。
「あーちゃん! その、あれだ、元気出せ!」
「おせえし。それより、僕のほうがむしろすまんかった。友達に自分の姉ちゃんをそういう目で見られるの、嫌だろ。まして告白するとか」
「いやー、なんつうか、現実感がないね」
「なんだそのふわっとした感想は」
「でもホントそんな感じなんだって。嫌とかじゃなくて、考えらんないっていうか」
ふ―――ん、とあーちゃんは長めに鼻を鳴らす。それから何か合点がいったように口元を歪めて、仰向けに倒れる。肩から上がベッドの横幅をはみ出て、壁に後頭部をごちりとぶつける。
「紗莉さんも、恋愛とか考えられないって言ってたんだよなぁ。西山が紗莉さんに対してそういうふうに思うっていうのは、案外当たってるのかもしれん」
「へー……」
なんか、妙にほっとしてしまった。そして、そんな自分にちょっとおどろいている。
実際、紗莉のやつはべらぼうにモテるというのに、これまで誰とも付き合ったりしなかった。今まで、そこに理由があるとか、まったく意識していなかったけれども、それらしい理由が示されて安心している。俺は、考えないようにしていただけで、ずっと気にしていたのかもしれない。
「思うに、ずっと前から紗莉さんには目標があったんだろう」
「なに、どゆこと?」
問い返すと、あーちゃんは上体を起こそうと踏ん張った。だが腹筋が足りない。しばらくぷるぷるとがんばっていたが、あきらめて脱力。
「だからな、ここを離れる決心が先にあったから、付き合っても置いて行ってしまうことになると、そう思ったわけだ」
「……でもそれ、二年以上前のことでしょ? ポジティブすぎない?」
やっぱり、紗莉が関わるとあーちゃんはらしくない。あるいは、父の症状と類似しているという見方もできる。
なんにせよ、あの姉は人を惑わす。俺も気を付けねば。
とはいえ始まってしまえばどうということもない。つまるところ試験に備えて勉強するのが億劫なのであって、準備の余地がなくなってしまえば、あとはもう、座して処断を待つのみに過ぎないのである。
そんなわけで試験初日を終える。無論、手応えなどない。霞を掴むがごとし。
こざかしいことに試験は数日にわたって実施されるので、開き直るにはまだ早い。かたちだけでも、最後の悪あがきをしなければいけない。
放課後、昼過ぎ。俺はあーちゃんを伴って帰宅した。勉強会という名目である。夏目にも声をかけたが、あくまで名目でしかないことを敏感に察知され、断られてしまった。秀才にも参加してもらったほうが体裁は良いのだが、しかたない、奴は真面目なのだ。無理強いはできない。
家には誰もいなかった。鍵を開けて中に入る。
「シル坊は?」
慣れた感じで靴を脱ぎながら、あーちゃんが聞いてくる。
「母さんたちと出かけてる」
と、そういえば今朝方聞かされていたことを思い出して答える。祖母も一緒に、母の実家に行くという話だった。母の実家は畑をやっていて、ときどき顔を出して野菜やら何やらをもらってくる。昔は俺や紗莉も付き合わされたものだったが、最近は遠慮させてもらうことが多い。けっこう遠いし。
「ずいぶんなじんでるな」
「なんか用あった?」
「いや……まあ、いないほうが話しやすいか……?」
なんだか思わせぶりなあーちゃんを自室に通してから、麦茶を取りに行く。部屋に戻ると、勝手知ったるあーちゃんはベッドに腰掛け、エアコンにリモコンを向けているところだった。雑然とした室内において、この短時間でリモコンを発見するのは簡単なことではない。鋭い洞察力のなせる業であろう。
ややあって、ゴアアーとぬるい風を吐き出し始める。
「で、どんな話?」
麦茶をおかわりして一息ついたところで促した。あーちゃんはうなずいてから口を開くまで、だいぶ間を置いた。
「シル坊さ、ちょいちょい凶暴になるだろ」
「ああ、なるねえ、なるなる」
「やっぱそう思うよな。リゼリヤお姉さまとやらが、魔女の身内って知られた途端に恋人にフラれたとか言ってたろ? まさか地雷女の代名詞にでもなってんのかと勘ぐったけど」
俺も以前から気になっていたことだった。シルシュはときどき様子がおかしいことがある。先日はいきなり杖で殴りかかったり、やめろって注意したのに拷問を強行したり、それが顕著だった。初めこそ暴力的で見境のない魔女っ子としか思えなかったものの、それは仕事をバックレている師匠を力づくでも連れ戻すという使命感が高じたためであって、根はおとなしめの子供なのだと印象を改めていたのだが。
魔女に造られたホムンクルスの性質なのか、あるいは魔女に接していると誰もがかんしゃく持ちになってしまうのか。ただ、シルシュに関しては、それ以外の要因も考えられるとあーちゃんは言う。
「こないだ、魔女の悪行を聞かせてもらったろ?」
「悪行っていうか、弟子いびりのやつね」
「そうそれ。リゼリヤから過去の弟子たちの記憶やらをまとめて受け取ったって話だったが、そのせいじゃねーのかな」
「お姉さまがたのうらみつらみに引っ張られて自分までうらめしくなっちゃったってこと?」
「それだけのことならたいしたことじゃないんだが、自分の記憶と混同しちまう、みたいなことも言ってたんだよな。実際、魔女と話してたときにもシル坊じゃなくて弟子本人なんじゃないかって思える言動があったし」
「たとえば?」
いくつかあったが、と前置きしてから、あーちゃんは短く告げる。
「『お母さま』」
はて、と俺は首をひねる。察するに、シルシュが魔女をそう呼んでいた、ということか。特に気に留めなかったけど、学校の先生を間違って呼んじゃって恥ずかしいやつじゃないの?
「ちょっと話それるけど、前から気になってんだよ。師匠である魔女のことは『お師匠』、姉弟子のリゼリヤは『お姉さま』。なんか違和感ないか?」
「ふむ。偉いはずの師匠に『さま』を付けてない」
「そう。それに、仮に『お師匠さま』だったとして、姉弟子を『お姉さま』って呼ぶか?」
「『ねえさん』とかのほうがしっくりくるけど、でもなくはないって気もするし、そもそも翻訳されてるんでしょ? 細かいところまで正確ってわけにはいかないんじゃない?」
「いや、でもよ、『お師匠さま』じゃなくて『お師匠』、それなのに『お姉さま』だぞ? むしろ、かなり律儀に意訳されてるように僕には思える」
まあ確かに、シルシュと話が噛み合わなかったり語句に違和感があったりしたおぼえはない。ただ、実際に翻訳がどうかということよりも、あーちゃんが何を言おうとして妙に細かいところに着目しているのかが気になった。
「仮に、翻訳のまま『お師匠』、『お姉さま』と呼んでるとして。師匠に対して敬称を付けないのに、シル坊のほうから『お姉さま』なんて呼ぶとは思えないから、たぶんリゼリヤがそう呼ばせたんだろう。つまり、リゼリヤにとっては、シル坊とは『姉妹』の関係のつもりなんだろうよ」
「ああ、そうか。だから『お母さま』って」
あーちゃんがうなずく。魔女はシルシュたちホムンクルスの生みの親のわけだから、ホムンクルス同士は『姉妹』とみなすほうが断然自然だ。魔女とシルシュが『師弟』だというから、これまでは『弟子同士』と認識してきたけど。
しかし、それならどうして魔女とシルシュは『師弟』なのか。普通に考えれば『親子』になるわけで、実際リゼリヤやそれ以前のホムンクルスたちとは『親子』だったのだろう。だからこそ、リゼリヤたちの記憶に影響されたシルシュは、魔女を『お母さま』と呼んだわけで。
聞いたかぎりでは、特に魔法を教わったりもしていないらしいし、謎だ。
「たぶん、『師弟』である理由なんてないんだと思う。なんか心境の変化があって、ホムンクルスへの態度を改めようと思った。その意思表示みてーなもんじゃねーかな」
「態度を改めるって、弟子いびりはやめるってこと?」
「とりあえず、魔女の態度で、シル坊とリゼリヤたちとで違うところはそれくらいしか思いつかんな」
なるほど。となるとひょっとして、辺鄙な場所に引きこもって『全宙連』とやらの依頼もほとんど受けなくなったというのも、その心境の変化と関係あったりして。
「こっからは、ちょっとばかり飛躍した話になるんだが」
そう前置きして、あーちゃんは突飛な推理を繰り出す。
端的に表現すると、魔女は人間に従属しなければいけない性質があるのではないか、というもの。『全宙連』からの頼まれごとをほっぽらかして逃亡したにもかかわらず、わざわざ見知らぬ土地で女子供の願いを叶えてやっていたのは、そのせいではないのか、と。
シルシュが言うには、魔女はマナから生まれるものだという。マナは魔法を媒介し、世界を変容させる。翻って、世界とはマナのありようだとも。
ということは、マナから生まれる魔女もまた、同様の性質をもつのではないか。つまり、魔女はマナによって変質しうる。
自我をもつ存在であれば、外部からの影響で自身が変化させられるというのは大変な恐怖だろう。性格や価値観が変わるだけでも相当なことだし、記憶が連続していないとも限らない。ある日突然、自覚のないまま別人になるようなものだ。以前の自分から見れば、死んだのと大差ない。
変化させられないためには、マナから受ける影響の方向性をコントロールすることが方法として考えられる。それこそが、『人間の言うことを聞く』、『人間のために働く』ことなのだとしたら。
つまり、魔女には『人間に従順な存在』というイメージが先行してあって、それに反する行動はイメージを崩してしまいかねず、ひいては魔女自身を脅かすことになる。だからしかたなく、人間の手助けをしているのではないか。
魔女にとっては不本意なことで、不満もたまる一方。そこで、不満のはけ口として、ホムンクルスをつくることにした。人間を模してはいるが人間ではないホムンクルスに対しては、従順である必要はない。
「――と考えると筋は通るし、シル坊と魔女の会話の内容も意味が通る。リゼリヤたちが魔女をうらんでる原因も、嫌がらせそのものじゃなくて、嫌がらせを受けさせるために生み出されたっていう部分なんじゃねーのかな」
「うぅ~む……た、確かに?」
俺は電池の切れかけたおもちゃのようにうなるばかりで気の利いた返事ができない。つーかあーちゃん、なんでそんなんすらすら出てくるの? なんかズルしてるでしょ絶対。攻略本見てるとかさぁ。
「要するに、シル坊に嫌がらせしなかったのは、頼まれごとが減ってストレスがなくなったか、逆に嫌がらせしないために引きこもることにしたのかってことだな」
あ、そういうことですね。なるほどわかりやす~い。
「でもさ、言い合いになってたってことは、心を入れ替えたってわけじゃないんじゃない?」
「どうだろ。僕はむしろ、いじめをする奴ってのはどんなときでもいじめるように思うけどな。それまで好き放題やってきたのが、ストレスがなくなったからって急にしおらしくなるとも思えん。理由なんて後付けだから、なくなりゃ別の理由を探すだけ」
むむ、一理ある。じゃあなんで、と聞く前にあーちゃんは続ける。
「魔女だって、人間と同じように長く生きたからってうまく大人になれなかったりするのかもしれない」
「…………急にどうした?」
「まあ聞けよ。だからさ、どういういきさつがあったか知らんが、これからはホムンクルスにもやさしく接しようと改心したとする。けど、どうしても鬱憤を晴らすために自分でつくりだしたものだっていう考えが抜けなくて、自制が利かないことがあるんじゃねーかってことよ」
「あー……まあ、年をとっても昔からの癖って直らないっていうしね」
「うん? うん、まあ、そんな感じか?」
「なんかあーちゃん、魔女の肩もつね?」
「そんなつもりはねーよ」
と、鼻を鳴らすあーちゃん。ふむ、ツンデレとは違うか。なんていうか、しのぎを削ったライバルを讃える感じ?
そういえばシルシュが、魔女とはあまり話すこともなかったと言っていたような気がする。そうしないとついつい理不尽な接し方をしてしまうから、あえて距離を置いていたとも考えられる。さらに言えば、『親子』から『師弟』にシフトしたのも距離感を意識しているように思われる。さらにさらに言えば、そもそもこちらの世界へ出奔してきたのも、『全宙連』からの依頼に不満があってなんやかんやで沸点を超えて、シルシュに八つ当たりしそうになったのをぐっと我慢して飛び出したのかもしれない。
「まあ、そんなところなのかもな」
相槌をうつあーちゃんはあきれたように肩をすくめる。あーちゃんのことだから、俺に思いつく程度のことは当然のように考え進めていたことだろう。そうか、それでちょっと魔女に同情的なのかな。
ガラリッと出し抜けに戸が開いて、びっくりして見るとそこには紗莉が立っていた。制服姿で、カバンも提げたまま。帰ってきて直で俺の部屋に来たらしい。
「……おかえり孝平」
「お前がおかえりだよ。なんだよ急に開けるなよ」
「声がしたから」
だからってノックもなしに年頃の弟の部屋を開けていいはずがない。まあ、変に静かなときよりは事故発生確率は低いかもしれないけども。
おそらくそんな計算はしていない紗莉は、いつもどおりの情報量が少ない表情をあーちゃんに向ける。
「あーちゃんいらっしゃい」
「おかえり紗莉さん。おじゃましてます」
軽い会釈を受け、わずかに口元が弧を描く。あーちゃんが、その小さな変化を注視しているのを俺は見逃さない。
「麦茶ちょうだい」
紗莉は部屋に入ってきて、テーブルの前に膝をついた。借りるね、と手に取ったコップはあーちゃんのもの。単に手前にあっただけで他意はない。しかしかつてのあーちゃんなら、こんなことがあったら目を白黒させて踏み台昇降運動を始めただろうに、今はまったく動じる素振りもない。いつのまに、紗莉を前にしてもこんなふうに落ち着き払っていられるようになったのだか。
ただ、麦茶を注ぎ、コップに口をつけ、喉を上下させる様子をじっと見ている。別に冷めたわけではないのだ。それはまちがいない。
コップを半分空けたところで、紗莉が俺のほうを向く。
「明日もテストなんだから、遊んでちゃだめじゃない」
「これからやるとこ」
「うそ」
短く言って、眉根を寄せる。だがそんな非難がましい視線もどこ吹く風。そらとぼける俺に、紗莉はため息をひとつ。
「今日、お母さんがあの子を連れて出かけたの、孝平に勉強させるためなんだから。面倒見がいいのはけっこうだけど、肝心なことをおろそかにされちゃあ困る、って」
「ぐう……」
そう言われると、ぐうの音しか出ない。ただでさえ、先日のジャコスン異界探索の件で、試験前にもかかわらず外泊してお小言をいただいたところだった。
さすがに、在りし日のジャコスンに迷い込んでなんやかんやで朝だったなどとは説明していない。わけあって友達の家に泊まったとだけ。しかし子連れはいくらなんでもまずかった。
一応、ウチの家族は俺がシルシュを手伝っていることを把握してくれている。初っ端に魔法のことも明かしたし、ざっくり親探しとだけで細かくは伝えていないが、かなりファンタジー寄りの話であることは説明してある。ただ、それがどのように受けとめられているのかは正直よくわからない。何考えてんだろね、大人たちは。
俺の渋面をしばらくにらんで、紗莉はあーちゃんへ水を向ける。
「あーちゃんも。本当は賢いんだから、しっかり勉強したほうがいいよ。あーちゃんがやれば孝平だってきちんとしてくれるだろうし」
「まるで俺があーちゃんの腰巾着かのような言い草」
「そうじゃないの」
そうだけどさ。
「紗莉さん、進学して家を出るんだってね」
と、あーちゃんが話をそらす。でもちょっと待って。そらす方向、そっちでいいの?
紗莉はすこしだけ目を大きくして振り返る。高い位置で結んだ髪が、大きくスイングした。
「そう。孝平から聞いた?」
「親伝いに。けっこう広まってると思うよ」
「えぇ……それはいやだなぁ」
そうして二人、苦笑を見合わせる。まあ、なにせご近所でも評判の美人さんのことですからね、知れ渡るのもしかたのないところでしょう。ついでに父の悪評も立っていやしないかと、そっちのほうが心配。
「でも、今ね、やっぱり考え直そうかと思ってるんだ。家から通えるところのほうがいいかなって」
「どうして?」
「うん……ちょっとね」
「でも、この近辺だと限られるんじゃない? 理系なんて特に」
しばらくの間、あーちゃんと紗莉は大学について話をする。俺は口を挟まずにいたけれど、会話についていけないからではない。あーちゃんに、二人で話す時間を邪魔しないよう気を遣ったというのとも、少し違う。
紗莉と話すとき、あーちゃんはいつものべらんめえ気味の口調が出なくなる。声色もやさしい。たぶん、意識してそうしているのだと思うけど、俺にはどうにも鈍重に感じられて、らしくないなと思ってしまう。はっきり言うと、気に入らない。
「それじゃあね、あーちゃん。孝平、今さらどうにもならないとか言わないで、ちゃんと勉強しなよ」
紗莉が立ち上がって、部屋を出ていく。あーちゃんの目はその背中を追い、戸が閉められたあとも離れない。放っておけば半日くらいそうしてそう。
ちょっとからかってやろうと思いついた。
「あーちゃん、告白とかしないの?」
「誰に?」
「紗莉に」
「もうした。フラれた」
「あ、そうだったんだ。ふーん……」
あーちゃんが、ようやく向き直って、おもむろに麦茶を注ぎ始める。
「えっ、マジで!!!?」
「うるせーな。麦茶こぼしちゃったじゃねーか」
「えぇぇ……で、でもさぁ、えぇぇぇ……」
動揺のあまりそのへんに落ちてた靴下でテーブルを拭いてしまう。だって、なんとなく、あーちゃんと紗莉って未来永劫進展しないものだと思っていたのだ。いやまあ俺の勝手な思い込みなんだけど。だって、二人とも何を考えているかわからないし、それにあーちゃんはこの手のことには絶対に二の足を踏むタチとばかり……
「ねえそれ、いつのこと?」
「紗莉さんが中学を卒業する直前」
「そんなに前……」
俺は絶句する。同時に理解した。あーちゃんが紗莉のことをどう思っているか、道理で俺には計り知れなかったわけだ。俺の知らない展開が、二人の間にはあったのだ。そのうえそれに伴う変化にも気づけずにいたとは……この西山、一生の不覚。
というか、そんな展開があったわりには気まずい雰囲気とか全然ないし。もうだいぶ時間が経ってるから? 当時はそれなりにぎくしゃくしてたのだろうか。しかも傷心のあーちゃんを放置してしまってもいたわけで。うむむ、俺が鈍感なばかりに、なんてことだ。
「あーちゃん! その、あれだ、元気出せ!」
「おせえし。それより、僕のほうがむしろすまんかった。友達に自分の姉ちゃんをそういう目で見られるの、嫌だろ。まして告白するとか」
「いやー、なんつうか、現実感がないね」
「なんだそのふわっとした感想は」
「でもホントそんな感じなんだって。嫌とかじゃなくて、考えらんないっていうか」
ふ―――ん、とあーちゃんは長めに鼻を鳴らす。それから何か合点がいったように口元を歪めて、仰向けに倒れる。肩から上がベッドの横幅をはみ出て、壁に後頭部をごちりとぶつける。
「紗莉さんも、恋愛とか考えられないって言ってたんだよなぁ。西山が紗莉さんに対してそういうふうに思うっていうのは、案外当たってるのかもしれん」
「へー……」
なんか、妙にほっとしてしまった。そして、そんな自分にちょっとおどろいている。
実際、紗莉のやつはべらぼうにモテるというのに、これまで誰とも付き合ったりしなかった。今まで、そこに理由があるとか、まったく意識していなかったけれども、それらしい理由が示されて安心している。俺は、考えないようにしていただけで、ずっと気にしていたのかもしれない。
「思うに、ずっと前から紗莉さんには目標があったんだろう」
「なに、どゆこと?」
問い返すと、あーちゃんは上体を起こそうと踏ん張った。だが腹筋が足りない。しばらくぷるぷるとがんばっていたが、あきらめて脱力。
「だからな、ここを離れる決心が先にあったから、付き合っても置いて行ってしまうことになると、そう思ったわけだ」
「……でもそれ、二年以上前のことでしょ? ポジティブすぎない?」
やっぱり、紗莉が関わるとあーちゃんはらしくない。あるいは、父の症状と類似しているという見方もできる。
なんにせよ、あの姉は人を惑わす。俺も気を付けねば。
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