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第3章 魔導帝国ハビリオン編

もう死ぬんじゃない?マジで

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 このままだとこの国は滅びてしまう。
龍脈は魔素を放出している。
魔素が溜まり過ぎればアルバと会った場所にあるあの湖のようになってしまうかもしれない。
魔物も生まれると思う。
それが国の中で発生すれば滅びるのも時間の問題となってしまう。
それはダメだ。

 そんな事を考えているとハティオさん達がこちらに歩いてくるのが見えた。
ただ、無理矢理頭を上げているのでこの体勢は結構つらいです。
まあもう確認するものも無いので力を抜いて頭を床につけた。

「…ッ!?」

 息を呑んだ音がしたと思ったら俺のそばに誰かが駆け寄ってきたのがわかった。
なんだろう?と思い、もう一度頭を上げようとすると誰かが俺を抱き上げてくる。
と言っても、座った誰かの膝の上に乗せられたんだけども。

「生きてる…のか?」

「まさか…死の呪いですよ…?」

 話を聞いて思い出した。
俺が受けた呪いって死ぬ系の呪いだったやん…と。
一応生きてるよという事を知らせるために重い瞼を開けて身じろぎする。
すると生きてる事がわかったのか2人が安心したような声を上げる。
視界の端にカプラさんがアスキルの安否を確認しているのが見えた。

「…っ!ハティ…オ…さん、あれが壊れ…」

 大事な事を思い出し、グランスピネルの事を必死に伝えようとするが、ハティオさんはグランスピネルを見てから俺をもう一度見て首を傾げる。

「……ああ、壊れたみたいだが…なんの目的が…」

 それを聞いて納得。
四天魔道士もあれがどんなものなのかわかってないんだ。
ウィアベルさんが入った事無いって言ってたから仕方ないかもしれないけど…。
まずい…早く説明しなくては…!

 俺はあの部屋の中央にあったものがグランスピネルな事、そのグランスピネルがこの国の地下にある龍脈を安定させていたことなどを必死に説明した。
口も中々動いてくれなくてイライラしてくる。
けど何とか全部説明し終えて脱力しているとハティオさんが真剣な顔で考えながらゆっくりと俺を床に降ろした。

「……わかった、…カプラ聞いていただろ」

「…ええ」

 俺に頷いてカプラさんにそう話すとカプラさんは困惑しながらも頷いた。
風の魔法使いだけあって少し離れていてなおかつ聞き取りにくい俺の説明もちゃんと聞こえていたらしい。
これで何とかなる…と思いきや。

「……だが」

「ええ…解決策が…」


 そんな事を2人が話しているのが聞こえる。
もしかして解決策が無いだろうか…。
四天魔道士が解決策出来ないならもうこの場の誰も解決出来ません!
何とか出来る可能性があるのはアスキルとその父親かな?
皇族として、もしもの時のために解決方法とか伝わってるかもしれない。
でも今現在2人とも気絶中。
ダメやん!
あと解決出来るのは…。

 チラッと話し合いをしている2人を見てからゆっくりと息を吐く。
もしこれで解決策が無ければ詰む事になるかもしれん。
まぁそれでも対処が出来なくなる訳では無いから最悪ではないけど…。

 俺が考えつく、そしてこの場にいて何とか出来る可能性を持つ人物…。
それは一人しかない。
いや、正確には一つ?
…まぁでも俺自身の事だし一人でいいのかね?

 そう、それは俺が今まで最も頼ってきた親友…のようなもの。
その御方はずばり!賢者先生です!
わかってたとか言わないようにね?

 どうか…賢者先生に解決策がありますように!
と思いながら俺は賢者先生にお伺いを立てる。

《解決策を提案します》


・・・

(本当に上手くいくんでしょうね!)

「……ユウト?動いて大丈夫か?」

(大丈夫なわけないでしょ!)

 ハティオさんが心配するような声をかけてくる。
そんな中、俺は四つん這いで球体があった場所に進む。
すんごい恥ずかしい格好だが歩けるほど負担が軽くないのでこれしか移動手段が無い…。
羞恥プレイってやつだ…。


 そんなこんなでヒーヒー言いながら進み続ける事数分…。
ついに球体の欠片が散らばる場所に到着した。
歩けば短い距離なのに四つん這いで進むともの凄く距離が長く感じるな…。

 今すぐにでも床に倒れて寝てしまいたいという欲求を振り払い更に進む。
欠片を避けながら進むので少しフラフラしてしまう。
2人は俺の奇行を少し離れたところで観察している。
手伝えよ!とも思うが俺がしようとしてる事は手伝う事が出来ないものなので気にしない事にする。

 そしてやっとの思いで辿り着いたのは球体があったその場所…中央部分。
俺はその場で止まり、賢者先生が説明した通りに力を行使する。

(これ下手すると死ぬんじゃ?…まあもうここまできたらやってやるけどさ…)

 俺がしている事は【精神化】というノルス先生が龍脈の授業で一緒に説明していたものだ。
存在を精霊に近付ける事で龍脈を【見る】事や近付く事が可能になるという力だ。

 しかし危険もありありありまくる。
国際法で制限されている上に近付き過ぎればエネルギーに呑まれてしまうのだ。
というか、その授業聞いた時に俺、精神化なんてやりたくないと思っていたはずなんだけど…。
なんでこうなってるの?
いや、ここまで来たら賢者先生を信じるしかないからいいんだけど。

「……ユウト何を…っ!それは!」

 最初に気付いたのはハティオさんだった。
【精神化】は体から意識を切り離すもの。
だから察しの良い人にはバレてしまうらしい。
ハティオさんは慌てて近付いてきたが何かする事はない。
なぜなら精神化中に体を揺さぶったりすると精神と肉体にズレが生じてしまうとかなんとか。
待て、それだと俺ヤバイんじゃないの?
誰も触らないでね?ね?

「…ダメだ!危険すぎる!」

「ユウト君!死んでしまいます!」

 2人が必死で説得してくれてる時、俺は自分の体の違和感を感じていた。
それはまるで体から意識が薄れていくような不思議な感覚。
でも眠いとか気絶とかじゃなくただ体から抜け出るような言い難い感覚だ。
不意に俺の体が地面に倒れた。
近くにいた2人が慌てて体を抱き起こしてるのが客観的に見える。
その時、初めて精神化が成功した事を認識した。

《精神化の成功を確認…不具合はありません》

 賢者先生の言葉で俺は振り向く。
正確には龍脈があるだろう床の方を向いた。

 そして言葉が出なくなった。


 大きな、とてもつもなく大きな川が見えた。
それは一つ一つが線のような糸のようでしかし一つの液体のようにも見える不思議な光景。
そんな流れが視界の端から端に視界の先の先まで存在している。
そんな美しい光景に魅入られてしまった。

《時間がありません》

(…っ!そうだった!)

 まるで美しい星空を見ているような感覚だったのが賢者先生の声で我に返る。
今はやることがある。
意を決してその川へと進んでいく。
その川こそが龍脈なのだから。




 浮かんでいるような、それでいて泳いでいるような不可思議な感覚の中、俺は龍脈へ進んでいく。
それに比例するかのように体から軋む音が増えている気がする。
いや気のせいではないな。

 龍脈は近付き過ぎると呑まれてしまう。
その影響がもうすでに始まっているのだ。
だがしかしそう簡単にやられる俺じゃない、対策はしてある!
賢者先生が。

 肉体が無くてもスキルは使える。
なので賢者先生がスキルを使って影響を抑え込んでいるのだ。
それでも使用不可になっているスキルが多いので完璧とは言い難いけど。
それと…。

『ユウト!大丈夫なのか!?』

『グアァ?グァァ』

 アルバの叫び声とウィリーの声が聞こえる。
それを聞いて自然と後ろを振り向いた。
そこには細い線が2本、上に向かって伸びているのが見える。
1本は近く、もう1本はすごく遠くまで伸びている。
その線が俺と繋がっているのだ。

 これも対策の一つ。
契約により繋がった回路を用いて命綱とするもの。
まさに生命線ってやつだ。
これにより流される心配も無くなった。
龍脈に近付くと潮の流れみたいにどこかに流されちゃうらしい。
それを解決してくれてる。
それに帰る時にこの線を伝って帰ることも出来るのだ。
魔物と契約してて良かった。



《それでは開始します》

(わかった、それじゃあお願いします!賢者先生!)


 さて、これでどうなるか。
賢者先生に任せるのだから不安は少ないけど、どうなることやら。




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