桜の天ーソラー

雨宮 藍

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プロローグ

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桜がはらはらと散り夕焼けが照らす、子成野しなの高校。
その学校の屋上に、一人物悲しげな、儚げな雰囲気を纏った少女。
少女の名は平賀ひらがひとみ。子成野高校の三年生である。
髪は黒く、たおやかで色白で整った顔に彩りを入れる瞳の色はアメジストの様に
深く、透明感のある紫色だ。

しかし、彼女のセーラー服から覗くものは包帯。
整った顔にはガーゼ。
それは彼女の家庭の事情が関わっていた。

ひとみが屋上のフェンスに手を掛け、それを登ろうとする。

その時だった。

「それで良いのか?」

その声にピタリとひとみは動きを止めた。

「手前、死ぬ気だっただろ?」
「……………それで、それが何?」
「手前の噂は聞いてるぜ?言わばいじめられっ子、ついでに親族の奴にも
嫌われてる奴って」
「…………それだけ言いに来たんならほっといて。
私、死ぬなら誰にも見られずに死にたいから。
……あと、いじめられてたのは卒業した先輩からだから。同級生や後輩からじゃない。もう、いじめられる事はない」
「…悪ィ……。俺はその自殺を止めに来たんだよ」
「…何、変な嘘吐いてるの?私に生きる価値は無い。だから死ぬ。
貴方に私を止める理由がない」
「手前、ピアノと歌上手いよな」

ひとみの眉間に皺が寄った。
こっそり、他の生徒が帰宅した後学校に残り、音楽室のピアノで

誰にもバレぬように弾き語り、の様なモノをしていたのだが。
何故その事をこの男子は知っている?、と疑問に思う。

「昨日、ハゲ教師に捕まって仕事しててよ。その時聴こえたんだ」

「手前の音」

そうひとみの目の前の男子は言う。

「それで、何?」
「勧誘だよ、勧誘…………あー、ちょっと来い!」
「はぁ?え、ちょ、ちょっと!? 」

男子生徒の緋色の髪が夕焼けに照らされ、髪の色が一瞬金色に見える。
その様子を見つつも、混乱しているひとみを他所に、
男子生徒はひとみの腕を引っ張り走る。

「あの、私の鞄ーーー……」
「俺が持ってる」
「は?」

何やってんだコイツマジで、と言う目をするひとみ。
男子生徒は全く持って気付かなかった。


❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀


「…………HOUN DSハウンズ?」
「……って言うライブハウスな」
「ライブ………ハウス?」

何でそんなとこに?、とひとみの頭を疑問符が浮かぶ。

「ぇ…………と」
「?ああ、俺は大原おおはら兼理けんり
一応ココでバンドの活動させて貰ってる。因みにお前と同級生な」
「…………バンド?ギターやドラムを弾いて歌う……?」
「ま、そんな感じだ」

先程“勧誘”と言っていた事を、ひとみは思い出す。

「……“勧誘”って………まさかバンドの……?」
「おう!」

兼理はニカッと歯を見せて笑った。

「ウチのキーボードが最近抜けてよォ…。キーボードが目立ってる曲も多いし」
「……それで、私…………?」
「ああ。

………無理な事頼んでんのは分かってんだ。でも、頼む」

深々と兼理が頭を下げる。
ひとみは初めて人に頭を下げられたために困惑した。

「………わかった」

しかし、同時に人に自分を必要とされたのが、嬉しかった。
さっきまで死のうとしてたのに、な……、そうひとみは思う。
でもその位嬉しかった。

「………本当か!?」

バッと上半身を上げてひとみを見る。

ひとみの紫色の目と、兼理の深海色の目が合った。

「……本当。困って、るんでしょ?
元いじめられっ子に頼る位」
「手前、何かなァ………こういうの卑屈って言うのか?」
「私に聞かれても困る」
「…だよな」

兼理は苦笑いを浮かべ、‎またひとみの手を引っ張った。
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