15 / 19
第一章
・
しおりを挟む
「ねぇ!ちょっと、千佳子!なんなのよ、あの人!なんなのよ、あのイケメン!!」
「説明するから落ち着いてね、舞。」
不破さんが奥の部屋に消えていくと同時に、舞がカウンターの向こうから身を乗り出して尋ねてくる。まるで子供のように目を輝かせる舞の様子に小さくため息をついた後、目の前にある日本酒を喉に流し込んだ。
「あの人は、ちょっとした知り合いなの。仕事で大変なときに少し良くしてもらったのよ。」
「仕事で大変な時って?何かあったの?」
「いや、そんな大したことじゃないのよ。ただ、落ち込んでるときに励ましてもらったというか、色々してもらったというか。」
「いろいろねぇ……。その色々のところが聞きたかったりするんだけど。けどまぁ、今日はこのぐらいにしといてあげる!せっかく、千佳子がお店に来てくれたんだからね!」
舞が可愛らしいウィンクをして、料理の準備にとりかかる。
(詳しい話、聞かれなくてよかった……。)
もし追求されれば、電車に飛び込もうとしたいたことがバレてしまう。そんなことは舞に知られたくなかった。無駄に心配をかけたくないからだ。
「千佳子、ちょっとあっちのお客さんの相手してくるから、ちょっと一人で飲んでてね!はい、これ、鴨のロースト!」
「きゃあ、ありがとう!」
テーブルの前に置かれた大好物を見てテンションが上がってしまう。舞に笑顔でお礼を言うと、お通しをいくつか乗せたお盆をもって微笑んでくれた。
「んんぅー!おいしい!すっごくおいしい!」
脂が乗った鴨の肉を噛むと、旨味がじゅわぁとしみだしてくる。あまりの美味しさに一人で頬を押さえてしまった。美味しいお酒のあてもできて、ますます日本酒が進んでしまう。
「千佳子?鴨のローストどう?」
「おいひいです!最高でふ!」
そのためか、舞の仕事が一段落した頃には、先程よりもお酒が回ってしまい、呂律も若干回らなくなってしまった。
「鴨がじゅわぁってするし、お酒も美味しいし、舞はかわいいし! もぉ、最高でございます!」
「……これはちょっと飲ませすぎてしまったな。美味しいおつまみを作りすぎたか。」
「すいませーん、注文お願いしまーす!」
「はーい!千佳子、そこで寝ててもいいからちょっとお酒飲むのストップして!あんまり飲みすぎると明日が大変だよ!」
「もうお仕事やってないから、明日のことなんて考えなくてもいいんですぅー!」
「はいはい、じゃあちょっと待ってて!」
舞の呆れ顔を見た後、私はテーブルに突っ伏してしまったのだった。
新名side
「不破さん、さっきの人ってお知り合いか何かですか?」
「あぁ、まぁな。最近知り合ったんだ。」
「えぇー、さっきの女の人のことですか?まさか合コンとかで知り合った訳じゃないですよね、社長?」
俺が社長に質問すると、若い女性社員が間髪入れずに尋ねていた。笑顔を浮かべてはいるが、その瞳には不安と少しの敵意が混ざっている。
「合コンなんかじゃないさ。ただの知り合いだ。」
社員が笑ってビールを飲むと、女の子はほっとした表情で「そうですよねぇ!なんか社長が合コンするようなタイプの女の人じゃありませんでしたし!」
きゃっと笑う女の子を見て、不破さんが「そんなに合コンなんかしてないぞ」と苦笑いする。そんな表情すらもかっこよくて、女の子だけじゃなく、男の俺ですらも見とれてしまうほどだ。
「ほら、その話はもういいから!また何か頼もうってあっちで話してたけどいかなくていいの?」
「あ!私も頼みます!ここのご飯すっごくおいしいし!」
女の子はメニュー表を見ている集団の中へと戻っていった。
「すいません、社長。騒がしくしてしまって。」
「いいさ。飲み会なんて騒がしいもんさ。逆に社長なんかがいると盛り下がるだろ?ほら、これ。」
「え?いや、社長こんなにいただけません!」
「なんのために社長してると思ってるんだ。お前たちに還元するぐらいは稼がせてもらってる。受けとれ。」
「すいません……。」
社長が差し出してきた万札数枚を、お辞儀をしてから受けとる。
「俺はそろそろ引き上げる。後は頼んだぞ、新名。」
「え!でもまだ!」
「俺がいない方が話も進むだろ?」
(いや、いなくなると逆に女の子たちからすごく怒られるんですが……。)
そう思うものの、社長はすでにコートを着てしまっている。皆がメニューに夢中になっているうちに帰りたいのだろう。
(そういえば……。)
「さっきの女性のところですか?」
気になってしまって尋ねてみる。すると、タバコに火を付けた社長がくるりと振り返った。
「可愛い女、待たせてるんでな。また会社で。」
「格好いいな、おい……。」
後ろ手に手をふる社長を見て、ときめいてしまったのは絶対に秘密だ。
「説明するから落ち着いてね、舞。」
不破さんが奥の部屋に消えていくと同時に、舞がカウンターの向こうから身を乗り出して尋ねてくる。まるで子供のように目を輝かせる舞の様子に小さくため息をついた後、目の前にある日本酒を喉に流し込んだ。
「あの人は、ちょっとした知り合いなの。仕事で大変なときに少し良くしてもらったのよ。」
「仕事で大変な時って?何かあったの?」
「いや、そんな大したことじゃないのよ。ただ、落ち込んでるときに励ましてもらったというか、色々してもらったというか。」
「いろいろねぇ……。その色々のところが聞きたかったりするんだけど。けどまぁ、今日はこのぐらいにしといてあげる!せっかく、千佳子がお店に来てくれたんだからね!」
舞が可愛らしいウィンクをして、料理の準備にとりかかる。
(詳しい話、聞かれなくてよかった……。)
もし追求されれば、電車に飛び込もうとしたいたことがバレてしまう。そんなことは舞に知られたくなかった。無駄に心配をかけたくないからだ。
「千佳子、ちょっとあっちのお客さんの相手してくるから、ちょっと一人で飲んでてね!はい、これ、鴨のロースト!」
「きゃあ、ありがとう!」
テーブルの前に置かれた大好物を見てテンションが上がってしまう。舞に笑顔でお礼を言うと、お通しをいくつか乗せたお盆をもって微笑んでくれた。
「んんぅー!おいしい!すっごくおいしい!」
脂が乗った鴨の肉を噛むと、旨味がじゅわぁとしみだしてくる。あまりの美味しさに一人で頬を押さえてしまった。美味しいお酒のあてもできて、ますます日本酒が進んでしまう。
「千佳子?鴨のローストどう?」
「おいひいです!最高でふ!」
そのためか、舞の仕事が一段落した頃には、先程よりもお酒が回ってしまい、呂律も若干回らなくなってしまった。
「鴨がじゅわぁってするし、お酒も美味しいし、舞はかわいいし! もぉ、最高でございます!」
「……これはちょっと飲ませすぎてしまったな。美味しいおつまみを作りすぎたか。」
「すいませーん、注文お願いしまーす!」
「はーい!千佳子、そこで寝ててもいいからちょっとお酒飲むのストップして!あんまり飲みすぎると明日が大変だよ!」
「もうお仕事やってないから、明日のことなんて考えなくてもいいんですぅー!」
「はいはい、じゃあちょっと待ってて!」
舞の呆れ顔を見た後、私はテーブルに突っ伏してしまったのだった。
新名side
「不破さん、さっきの人ってお知り合いか何かですか?」
「あぁ、まぁな。最近知り合ったんだ。」
「えぇー、さっきの女の人のことですか?まさか合コンとかで知り合った訳じゃないですよね、社長?」
俺が社長に質問すると、若い女性社員が間髪入れずに尋ねていた。笑顔を浮かべてはいるが、その瞳には不安と少しの敵意が混ざっている。
「合コンなんかじゃないさ。ただの知り合いだ。」
社員が笑ってビールを飲むと、女の子はほっとした表情で「そうですよねぇ!なんか社長が合コンするようなタイプの女の人じゃありませんでしたし!」
きゃっと笑う女の子を見て、不破さんが「そんなに合コンなんかしてないぞ」と苦笑いする。そんな表情すらもかっこよくて、女の子だけじゃなく、男の俺ですらも見とれてしまうほどだ。
「ほら、その話はもういいから!また何か頼もうってあっちで話してたけどいかなくていいの?」
「あ!私も頼みます!ここのご飯すっごくおいしいし!」
女の子はメニュー表を見ている集団の中へと戻っていった。
「すいません、社長。騒がしくしてしまって。」
「いいさ。飲み会なんて騒がしいもんさ。逆に社長なんかがいると盛り下がるだろ?ほら、これ。」
「え?いや、社長こんなにいただけません!」
「なんのために社長してると思ってるんだ。お前たちに還元するぐらいは稼がせてもらってる。受けとれ。」
「すいません……。」
社長が差し出してきた万札数枚を、お辞儀をしてから受けとる。
「俺はそろそろ引き上げる。後は頼んだぞ、新名。」
「え!でもまだ!」
「俺がいない方が話も進むだろ?」
(いや、いなくなると逆に女の子たちからすごく怒られるんですが……。)
そう思うものの、社長はすでにコートを着てしまっている。皆がメニューに夢中になっているうちに帰りたいのだろう。
(そういえば……。)
「さっきの女性のところですか?」
気になってしまって尋ねてみる。すると、タバコに火を付けた社長がくるりと振り返った。
「可愛い女、待たせてるんでな。また会社で。」
「格好いいな、おい……。」
後ろ手に手をふる社長を見て、ときめいてしまったのは絶対に秘密だ。
10
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】男装の側近 〜双子の妹は腹黒王子の溺愛からは逃げられない〜
恋せよ恋
恋愛
「お前、なんだか......女っぽいよな?」
病弱な兄の身代わりで、男装し学園に入学したレオーネ。
完璧で美麗な騎士「レオン」として、
冷徹な第二王子・マクシミリアンの側近となったが……
実は殿下には、初日から正体がバレていた!?
「俺を守って死ぬと言ったな。ならば一生、俺の隣で飼い殺されろ」
戦場では背中を預け合い、寝室では甘く追い詰められる。
正体がバレたら即破滅の「替え玉側近ライフ」は、
王子の執着全開な溺愛ルートへと強制突入する――!
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる