死にかけたらご褒美がありました

めろめろす

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第一章

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「うぅーーーん!」
「ちょっと、千佳子大丈夫?ほんとに飲み過ぎよ?」
「らいじょーぶでふ!」

 舞がお冷やを私の目の前に置いてくれたので、一気に飲み干す。お酒で火照った体が冷やされて気持ちよくなり、ほぅとため息を漏らしてしまった。

「もう飲むのはそれくらいにして、先に2階に上がってなよ。ベッドもあるからそこで寝てていいからね?」
「はーーい!」

 確かに自分でもそろそろ本当にヤバイなと思っていたところだ。お水も飲んだことだし、先に自宅に上がらせてもらおうと思い、椅子から立ち上がる。

「はれ……?」

 しかし、足に全く力が入らずにその場に倒れ込みそうになる。

「千佳子っ!」

 カウンターのテーブルが顔面に迫ってくる。これは顔に傷がついちゃうかもなぁなんて呑気に思っていた。

「何をやってるんだ?あまり飲みすぎるなよってさっき言っただろ?」

 無意識に閉じてしまっていた瞳をゆっくりと開けると、カウンターのテーブルは私の眼前まで迫って止まっていた。そして、腰の辺りに他人の腕の感覚。誰かか私の体を抱き寄せて、倒れるのを阻止してくれたようだ。

「全く。自分で立てないのか?ほら、俺に掴まって。」
「しゅいません……。」

 さすがに申し訳なくて、顔をあげて助けてくれた本人の顔を見て謝罪する。

「呂律も回ってないな?困った子だね。」

 呆れ顔をした不破さんが私の顔にかかった前髪を指で払ってくれた。

「あれぇ?不破さん、会社の飲み会じゃなかったんですか?」
「いつまでも社長がいたら、社員が気を使うだろ?俺はもう帰るところだ。」
「おぉ!社長の鏡ですねぇ、えらいえらい!」

 テンションが上がってしまい、ニコニコ笑って不破さんの頭をよしよしと撫でてしまった。その髪は思ったよりも柔らかくてふわふわで、触り心地が抜群だった。

「ふぁー、すごい!気持ちいい!子犬みたい!ふわふわしてるー!」

 調子に乗ってずっと不破さんの頭を撫でていると、舞が「ちょっと千佳子、失礼だよ?」と恐る恐る声を掛けてくる。

「はぇ?」

 あまりに夢中になってしまい、不破さんの様子に気づかなかった。黙ったままの不破さんに怒ってしまったかと思い、慌てて手を頭から下ろす。

「やめるのか?」
「ひぃ!」

 すると、不破さんが腰に回した腕にぐっと力を入れて、私の体を引き寄せてくる。あまりの近さに逃げ腰になるが、不破さんはさらに顔を近づけてきた。

「せっかく大人しく撫でられてるんだから、今のうちに好きなだけ撫でてたらどうだ?」
「いやぁ、そろそろ遠慮しようかなぁなんて思っていたところだったのでもう大丈夫です!」
「そうか。残念だな。」

 にっこりと笑った不破さんがやっと腕の力を緩めてくれたので、急いで腕の中から脱出する。椅子に座り直して、立っている不破さんの顔を見上げた。

「それじゃあ不破さん、気をつけて帰ってくださいね?あんまり酔ってはないみたいだけど、寄り道とかしたらだめですよ?」

 ぶらぶらと右手をふってさようならしようも思ったのだが、なぜだがいつまでたっても不破さんはこの場から立ち去ろうとしない。

「あのー、不破さん?聞こえてます?」

「お姉さん。」
「はいっ!」

 突然、不破さんに声を掛けられた舞が直立不動となって敬礼をした。

「千佳子は今日はどうする予定だったんですか?」
「千佳子さんは、強迫我が家に泊まる予定でありました!!」
「それなら連れて帰っても構いませんかね?」
「どっ!どうぞどうぞ!もう、お好きになさっていただいて結構です!!」
「へっ?ちょ、舞?」

 舞の言葉に驚いて、口に含んでいた飲み物を少しだけこぼしてしまった。

「不破さんが送ってくれるのであれば、とてもありがたいです。私のうちに泊めてもいいんですけど、仕事が遅いので上に上がれるのも何時になるな分かりませんから。……その代わり、絶対にうちまで送り届けてください。」
「……分かってますよ。」

 舞の鋭い視線を受け、真顔に戻った不破さんが軽く一礼する。それを見て、舞は満足そうに頷いた。

「それならオッケーです!もう、飲み過ぎてるんでちゃっちゃと連れ帰ってください!」
「さぁて、それじゃあ帰るぞ千佳子。」

「私抜きで勝手に話を進めないでよーー!舞のバカー!」

 私は不破さんに半ば抱えられるようにお店をあとにしたのだった。

 
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