落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす

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第一部

第21話


 隣の二人が競うように質問をしてくるのも怖いし、何も言わないのに絶対に向かい側の席から立ち上がろうとしない瀬尾君も怖い。助けを求めようと三目君の方を見てみるが、こちらのことはアウトオブ眼中といったように桝田君と一緒にグビグビとビールをあおっている。幹事だと言うのにその態度はいかがなものだろうか。自分は合コン初心者なのだからもっと手取り足取り教えてほしい。というかとにかく助けてほしい。


「ん、どうかした?具合でも悪いの?」


 下を向いたままで固まっている自分を心配したのか、持永さんが肩に手を置いてくる。


「っ触るな!!」


 その瞬間、顔を怒りでゆがめた瀬尾君が立ち上がり大きな声で叫んだ。鋭い目つきで持永さんをにらみつけ、今にも殴りかかりそうな勢いだ。いきなり怒り出した瀬尾君についていけずに、口をぽかんと開けたままただ彼を眺めていることしかできない。すると桝田君と飲んでいた三目君がこちらに歩み寄ってきた。


「ちょっとうるさいんだけど。瀬尾さーん、いいのそんな態度で?僕、知らないよ?」


「っう!」


 相変わらずグビグビとビールを飲み続けている三目君がにやりと笑って瀬尾君に言葉をかける。それを聞いた瀬尾君は真っ赤な顔を今度は真っ青に変え、慌てて自分の椅子に座りなおした。そして何も言わずに、またこちらにすがるような視線を向けてくる。
 

「うるさくしてごめんなさい。3人ともゆっくり楽しんでね~。」


 三目君がまた自分の席に戻ろうとする。
「ちょっとトイレに!」と持永さんと井上君に告げた後、三目君の腕をとり、お手洗いへと向かった。


トイレの前に来ると、三目君は不満そうに唇を尖らせた。

「ちょっとー。若い女性じゃないんですからトイレで品定めなんてしないですよ、僕。」

 

「そんなことじゃないよ!瀬尾君のこと!三目君、瀬尾君と知り合いだったの?やけに親しげに話してたけど!」


「あぁ、それですか。」


 壁に寄りかかって三目君がクスクスと笑い始める。
 

「山口さんは気にしなくていいんですってば。いいですか?ああいう男には少しお灸を据えてやらないとだめなんですよ。自分にはほかの男の選択肢もある、お前だけじゃないんだぞってね。それが駆け引きってもんなんです。・・・それに山口さん、あいつにひどいこと言われたんじゃないですか?」


 笑っていた三目君が突然真顔になる。いきなり核心を突かれてしまって、言葉に窮してしまった。「やっぱり」と言って三目君が大きなため息をつく。


「なんだか山口さんが以前より瀬尾さんに対しておびえてる感じがしたんですよね。それにちょっと怒ってる感じも。・・・何かあったんだろうなとは思ってましたが、やっぱりそうでしたか。」

 

 後輩に恋愛関係のトラブルを暴かれてしまうというのはなんだか居心地が悪い。何も言うことができずにいると、三目君が突然身体を寄せてきた。彼の花のような甘い香りにクラクラとめまいがしてしまい、一瞬だけふらつく。その隙にいつの間にか壁際に追いやられ、三目君の腕の中に捕らわれてしまった。


「三目君・・・?」


「・・・無自覚っていうのは罪だと思いませんか、山口さん?こっちばっかりドギマギして振り回される。」


「え、あ、あの・・・。」


 三目君の声がグンと低くなる。ふざけているのかと思い、身体を押しのけようとうするが、自分の力では三目君はびくともしない。身体を触ってみて分かったが、細いと思っていた身体にはしっかり筋肉がついていて、今まで意識したことなどなかったのに、彼も立派な男なのだと気付いた。


「Ωだから簡単に払いのけられると思いました?・・・僕は男ですよ。あなたが努力してきたように、僕も自分の身ぐらい自分で守れるように努力してきただけの話です。」

 

「ひゃあ!ちょちょちょ、三目君!手が!手が!」

 

「んー?」

 

 三目君が首筋に頬をすり寄せてきたと同時に、腰に両手を回してより身体を密着させてくる。なんとか離れるように説得してみるも、すっかり酔っ払ってしまっているために全く言うことを聞いてくれない。それどころかさらに身体をすり寄せてくる。


「山口さん、良い匂いです。安心します・・・。」


「うひゃあ!」

 

 首筋に軽くキスをされて、大きな悲鳴を上げてしまった。慌てて口をふさぐももう手遅れで、遠くから「山口さん?」と自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、足音がどんどん近づいてくる。誰が来るのかは分からないが、こんな場面を見られて困るのは三目君のほうだ。自分と恋仲だなんて誤解されたら三目君の将来に傷がついてしまう。

 

「ちょ、三目君!本当に・・・っわぁ!」

 

 三目君ともみ合っているうちにバランスを崩してしまい、そのまま床に倒れ込んでしまった。

 

「山口さん、結構大胆ですね。」

 

「うひゃあ!」

 

 耳元で囁かれて、慌てて顔を上げると、なんと三目君に覆い被さるような体勢になってしまっていた。彼の整った顔が至近距離まで迫っていて、顔が赤くなってしまう。

 

「いいですよ、僕。そんなに山口さんが僕のことが好きって言うのなら・・・。」

 

「うわーー!ちょっとストップストップ!!」

 

 また自分を抱きしめようとする三目君を制止していた時。

 

「なにを・・・してるんですか・・・?」

 

 背後から低い低い声が聞こえてくる。おそるおそる後ろを振り返ると、そこにいたのは瀬尾君。その手からスマートフォンが滑り落ち、床に当たってゴトンと鈍い音が響いた。

 

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