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第二部
第16話
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「飛鳥商事でのインターンシップは本当に素晴らしかったです。でも、その次に行った企業が最悪でした…。」
泣きじゃくる小鳥遊君をなんとか落ち着かせると、少しずつ話してくれるようになった。小鳥遊くんの右隣に自分が座り、左には三目君。そしてテーブルを挟んで四宮部長と瀬尾君が座っている。
「その会社でも飛鳥商事の時と同じような仕事の仕方をしてました。その時にいろんなことを教えてくれた先輩がいて…。仕事終わりに飲みにも連れて行ってもらって、本当に尊敬してたんです。でも、ある日…。」
泣き止んだはずの小鳥遊くんの瞳が再び緩む。手が少し震えているのに気づいて優しく握ってあげた。すると小鳥遊君は顔を上げて少し微笑んでくれる。
「…仕事終わりに飲んで、そのままホテルに連れ込まれそうになったんです。」
「っ!」
三目君が息を呑む。同じΩである三目君にも同じような経験があるのだろう。
「もちろん、必死に抵抗しました。そんなつもりじゃないって。そしたら激しく罵倒されました。『Ωがまともに仕事なんかできるもんか』って…。『あんな風に懐かれるようについてこられた、誘ってるって勘違いされてもおかしくないって。…Ωはαに媚びて仕事してればいい』って!!」
「小鳥遊!」
ブルブルと震える小鳥遊君の体を三目君が強く抱きしめる。
「僕、怖くなって…!僕の仕事を褒めてくれた人たちもみんな同じように思ってるんじゃないかって!Ωは媚びて笑ってりゃあいいんだって!」
「そんなことない!そんなことないんだ、小鳥遊!」
三目君が少し鼻声になっているような気がする。もしかしたら泣いているのかもしれない。そして自分も体が震えている。泣いているからではない。湧き上がってくる怒りからだ。
「それから!前みたいなことできなくなっちゃって!Ωなこと,全面に出して媚びてヘラヘラしてることしかできなくなっちゃって!…そしたらホテルに連れ込もうとした先輩、何事もなかったみたいに僕に告白してきたんですよ。可愛くてずっと好きだったって…!好きだから僕に拒否されてあんなこと言ってしまったって。自分はαだから、僕に仕事辞めて家庭に入れって。…好きならなんでもしていいんですか?αなら!何しても許されんですか!!!!」
「もういい!小鳥遊!もういいよ!」
「うわあーーーーーー!」
2人のΩが慟哭している。四宮部長と瀬尾君はいたたまれない顔で2人を見つめていた。
「…小鳥遊君。その先輩ってどこの会社のなんてやつ?」
抱き合いながら泣きじゃくっている2人の輪に無理やり入って尋ねる。
「え?あ、えと。」
「大丈夫。二度と社会復帰できないように俺が叩きのめしてくるから。俺は最近ジムに通ってるから筋肉ついてきたんだ。αにも負けないよ?そいつ営業なら俺が完膚なきまでに叩きのめしてあげる。だから!」
「んふふ!山口さんってバカですよね?」
「んな!」
最初惚けた顔をしていた小鳥遊君は何がおかしいのか、クスクスと笑い出す。
「俺は本気だぞ!仕事も辞めたし、何だってできるんだ!」
「その先輩はちゃんと処罰されたから大丈夫ですよ。ふふっ、本当におかしな人ですね。βがαに立ち向かおうなんて。」
「αとかΩとかいう前に俺は男だよ。男として大切な人を守りたいって思ってる。」
「その大切な人に僕が入るんですか?あんなに酷いこと言ったのに?」
「酷いことだったかな?正論ではあったけど。」
「ふふふ!あはは!」
小鳥遊君がケラケラと笑い始めた。
「なんのためにこんなに容姿に気を使ったと思ってるんですか?Ωの容姿を使って契約をとるのもそうですけど、あんなダサ男が自分ってバレたくなかった。…尊敬する営業マンのあなたに、インターンシップのときに褒めてくれたあなたに、こんな無様な仕事をしてるってバレたくなかった。それが最初からバレてるんだもん!」
腹を抱えて笑い出す小鳥遊君。
「人がいいのが幸尚さんの魅力なんだよ。」
三目君がにっこりと笑う。すると小鳥遊君が目尻に溜まった涙を拭って頷いた。
「あー、久しぶりにこんなに笑いましたよ。…多大な迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。責任をとって僕は…。」
「駄目だよ、小鳥遊君。…人生逃げてもいい時はもちろんある。でもね、今はそうじゃない。…部内での君の評判ははっきり言って悪い。それを覆すような仕事ぶりを見せてくれよ。俺の古巣でね。」
「山口さん…。」
小鳥遊君の瞳がかすかに潤む。
「愚直な仕事ぶりを楽しみにしてるよ。」
そういうと、小鳥遊君はインターンシップの時のような大声で「はい!!!」と返事をしてくれたのだった。
泣きじゃくる小鳥遊君をなんとか落ち着かせると、少しずつ話してくれるようになった。小鳥遊くんの右隣に自分が座り、左には三目君。そしてテーブルを挟んで四宮部長と瀬尾君が座っている。
「その会社でも飛鳥商事の時と同じような仕事の仕方をしてました。その時にいろんなことを教えてくれた先輩がいて…。仕事終わりに飲みにも連れて行ってもらって、本当に尊敬してたんです。でも、ある日…。」
泣き止んだはずの小鳥遊くんの瞳が再び緩む。手が少し震えているのに気づいて優しく握ってあげた。すると小鳥遊君は顔を上げて少し微笑んでくれる。
「…仕事終わりに飲んで、そのままホテルに連れ込まれそうになったんです。」
「っ!」
三目君が息を呑む。同じΩである三目君にも同じような経験があるのだろう。
「もちろん、必死に抵抗しました。そんなつもりじゃないって。そしたら激しく罵倒されました。『Ωがまともに仕事なんかできるもんか』って…。『あんな風に懐かれるようについてこられた、誘ってるって勘違いされてもおかしくないって。…Ωはαに媚びて仕事してればいい』って!!」
「小鳥遊!」
ブルブルと震える小鳥遊君の体を三目君が強く抱きしめる。
「僕、怖くなって…!僕の仕事を褒めてくれた人たちもみんな同じように思ってるんじゃないかって!Ωは媚びて笑ってりゃあいいんだって!」
「そんなことない!そんなことないんだ、小鳥遊!」
三目君が少し鼻声になっているような気がする。もしかしたら泣いているのかもしれない。そして自分も体が震えている。泣いているからではない。湧き上がってくる怒りからだ。
「それから!前みたいなことできなくなっちゃって!Ωなこと,全面に出して媚びてヘラヘラしてることしかできなくなっちゃって!…そしたらホテルに連れ込もうとした先輩、何事もなかったみたいに僕に告白してきたんですよ。可愛くてずっと好きだったって…!好きだから僕に拒否されてあんなこと言ってしまったって。自分はαだから、僕に仕事辞めて家庭に入れって。…好きならなんでもしていいんですか?αなら!何しても許されんですか!!!!」
「もういい!小鳥遊!もういいよ!」
「うわあーーーーーー!」
2人のΩが慟哭している。四宮部長と瀬尾君はいたたまれない顔で2人を見つめていた。
「…小鳥遊君。その先輩ってどこの会社のなんてやつ?」
抱き合いながら泣きじゃくっている2人の輪に無理やり入って尋ねる。
「え?あ、えと。」
「大丈夫。二度と社会復帰できないように俺が叩きのめしてくるから。俺は最近ジムに通ってるから筋肉ついてきたんだ。αにも負けないよ?そいつ営業なら俺が完膚なきまでに叩きのめしてあげる。だから!」
「んふふ!山口さんってバカですよね?」
「んな!」
最初惚けた顔をしていた小鳥遊君は何がおかしいのか、クスクスと笑い出す。
「俺は本気だぞ!仕事も辞めたし、何だってできるんだ!」
「その先輩はちゃんと処罰されたから大丈夫ですよ。ふふっ、本当におかしな人ですね。βがαに立ち向かおうなんて。」
「αとかΩとかいう前に俺は男だよ。男として大切な人を守りたいって思ってる。」
「その大切な人に僕が入るんですか?あんなに酷いこと言ったのに?」
「酷いことだったかな?正論ではあったけど。」
「ふふふ!あはは!」
小鳥遊君がケラケラと笑い始めた。
「なんのためにこんなに容姿に気を使ったと思ってるんですか?Ωの容姿を使って契約をとるのもそうですけど、あんなダサ男が自分ってバレたくなかった。…尊敬する営業マンのあなたに、インターンシップのときに褒めてくれたあなたに、こんな無様な仕事をしてるってバレたくなかった。それが最初からバレてるんだもん!」
腹を抱えて笑い出す小鳥遊君。
「人がいいのが幸尚さんの魅力なんだよ。」
三目君がにっこりと笑う。すると小鳥遊君が目尻に溜まった涙を拭って頷いた。
「あー、久しぶりにこんなに笑いましたよ。…多大な迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。責任をとって僕は…。」
「駄目だよ、小鳥遊君。…人生逃げてもいい時はもちろんある。でもね、今はそうじゃない。…部内での君の評判ははっきり言って悪い。それを覆すような仕事ぶりを見せてくれよ。俺の古巣でね。」
「山口さん…。」
小鳥遊君の瞳がかすかに潤む。
「愚直な仕事ぶりを楽しみにしてるよ。」
そういうと、小鳥遊君はインターンシップの時のような大声で「はい!!!」と返事をしてくれたのだった。
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