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青い王子と雨の王冠
王宮①
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「うわぁ!」
ハフィは静間に抱えられたまま、街道に出るとそこには見たこともないような豪華な馬車が待っていた。
人が乗る部分は、赤の布を基に金銀の糸で龍が刺繍されていて、その部分を馬のような動物が引っ張るようになっている。そしてその馬の足元と尻尾は透明な水でできていて、キラキラと輝いていた。
「綺麗だろう?この国にしか生息していない水馬だ。では王子、お乗りください。」
「分かった。」
王子はゆっくり頷くと、豪華な馬車に乗り込んだ。それを確認すると、静間はハフィの脇に両手を入れて持ち上げた。
「お前も馬車の中に入っていろ。いいか、暴れるんじゃないぞ?もし暴れたらぐるぐる巻きにしてやるからな!」
至近距離で脅されて、ハフィは慌てて何度も頷いたのだった。
乗り込むと、王子はすでに窓の前の席に陣取っていた。王子の近くに座るのは気が引けて、出来るだけ遠くに座ろうと思ったが、ハフィに気付いた王子は窓に付いていたカーテンを下にさげ、自分の隣をぽんぽんと叩いた。
「君の姿をあまり見られたくない。私の影に隠れてろ。」
そう言って身につけているローブを広げられた。本当はあまり近付きたくなかったが、王子から「頼む」と急かされたので、しょうがなくそのローブの中に体を滑り込ませた。
「静間、出せ。」
「はっ!」
王子が声をかけると、外から静間の声がしてゆっくりと馬車が動き出す。最初、身を固くしていたハフィだったが、馬車の揺れと王子の体の温もりが気持ちよくて、ウトウトしてきてしまった。
それに気付いた王子は、そっとハフィの体を自分側に寄せてくれる。
「眠いなら寝ておいた方がいい。王宮に着いたら忙しくなるよ…。」
王子の低く優しい声にハフィは頷いた後、可愛らしい寝息を立て始める。
そんなハフィを見て、王子はクスッと笑った後、ハフィから回収した王冠を取り出した。
青い石が輝く透明な王冠。王子はそれを自分の頭に乗せようとしたが、後少しのところでやめてそれを膝に置いた。
「…こんなものがあるから。」
憎々しげに呟くと、目の前の王冠を壊れんばかりに強く握りしめる。しかし王冠は全く傷付かず、美しいままだ。
王子は1人で強く強く王冠を睨みつける。どのくらい経ったか、外から「王子、そろそろ王宮です」と声をかけられた。
詰めていた息をゆっくりと吐き出した王子は「分かったよ」と返事をすると、先程とは一転、王冠を大事そうに鞄の中へ仕舞い込んだ。
カーテンを上げて外を見てみると、豪華な王宮が見える。朱色の建物が所狭しと並んだ広い王宮。それだけでも美しいが、本来であれば国全体に白いカーテンのように薄く雨が降り注ぎ、幻想的な都となることを知っている王子は小さくため息をついた。
「王冠は取り戻したんだ。…大丈夫さ。」
まるで自分を元気付けるかのような言葉を吐いた後、王子はブルリと身震いをする。そして、上げたカーテンをもう一度下げたのだった。
ハフィは静間に抱えられたまま、街道に出るとそこには見たこともないような豪華な馬車が待っていた。
人が乗る部分は、赤の布を基に金銀の糸で龍が刺繍されていて、その部分を馬のような動物が引っ張るようになっている。そしてその馬の足元と尻尾は透明な水でできていて、キラキラと輝いていた。
「綺麗だろう?この国にしか生息していない水馬だ。では王子、お乗りください。」
「分かった。」
王子はゆっくり頷くと、豪華な馬車に乗り込んだ。それを確認すると、静間はハフィの脇に両手を入れて持ち上げた。
「お前も馬車の中に入っていろ。いいか、暴れるんじゃないぞ?もし暴れたらぐるぐる巻きにしてやるからな!」
至近距離で脅されて、ハフィは慌てて何度も頷いたのだった。
乗り込むと、王子はすでに窓の前の席に陣取っていた。王子の近くに座るのは気が引けて、出来るだけ遠くに座ろうと思ったが、ハフィに気付いた王子は窓に付いていたカーテンを下にさげ、自分の隣をぽんぽんと叩いた。
「君の姿をあまり見られたくない。私の影に隠れてろ。」
そう言って身につけているローブを広げられた。本当はあまり近付きたくなかったが、王子から「頼む」と急かされたので、しょうがなくそのローブの中に体を滑り込ませた。
「静間、出せ。」
「はっ!」
王子が声をかけると、外から静間の声がしてゆっくりと馬車が動き出す。最初、身を固くしていたハフィだったが、馬車の揺れと王子の体の温もりが気持ちよくて、ウトウトしてきてしまった。
それに気付いた王子は、そっとハフィの体を自分側に寄せてくれる。
「眠いなら寝ておいた方がいい。王宮に着いたら忙しくなるよ…。」
王子の低く優しい声にハフィは頷いた後、可愛らしい寝息を立て始める。
そんなハフィを見て、王子はクスッと笑った後、ハフィから回収した王冠を取り出した。
青い石が輝く透明な王冠。王子はそれを自分の頭に乗せようとしたが、後少しのところでやめてそれを膝に置いた。
「…こんなものがあるから。」
憎々しげに呟くと、目の前の王冠を壊れんばかりに強く握りしめる。しかし王冠は全く傷付かず、美しいままだ。
王子は1人で強く強く王冠を睨みつける。どのくらい経ったか、外から「王子、そろそろ王宮です」と声をかけられた。
詰めていた息をゆっくりと吐き出した王子は「分かったよ」と返事をすると、先程とは一転、王冠を大事そうに鞄の中へ仕舞い込んだ。
カーテンを上げて外を見てみると、豪華な王宮が見える。朱色の建物が所狭しと並んだ広い王宮。それだけでも美しいが、本来であれば国全体に白いカーテンのように薄く雨が降り注ぎ、幻想的な都となることを知っている王子は小さくため息をついた。
「王冠は取り戻したんだ。…大丈夫さ。」
まるで自分を元気付けるかのような言葉を吐いた後、王子はブルリと身震いをする。そして、上げたカーテンをもう一度下げたのだった。
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