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落ちこぼれの魔法事務所
不思議な事務所②
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「あっはっはっは!ごめんごめん、ちょっと脅かしすぎたかな?」
頭を抱えてうずくまったハフィの上で楽しげな声が聞こえる。ハフィがゆっくりと目を開けて上を見ると、そこには顔が見えないほど深くローブを被った人物が立っていた。
「勝手に事務所に入ってくるものだから、泥棒かと思ってね。その様子だと泥棒じゃないみたいだな。」
「あ、あの私…。」
「あぁ、ごめんごめん。僕はこの事務所を開いてるロミィだよ。えーっと、君は?」
ローブを被ったまま、ロミィがこてんと首を傾げる。そうだ。事務所に勝手に入ってきて、中を見回しているのだから泥棒と勘違いされても仕方ない。
「勝手に事務所に入ってしまってごめんなさい!あの、信じてもらえないかもしれないんですけど、変な光がこの事務所に来いって!」
「へー、光ねぇ。」
ロミィはニヤニヤと笑いながらハフィの話を聞いている。どうやら全く信じてくれていないようだ。
「本当にごめんなさい!勝手に入ってしまったお詫びは今度持ってきます!では失礼しまーーす!」
ぺこりと頭を下げて駆け足で入口まで急ぎ、扉に手をかける。今度は先程のことが嘘かのように簡単に扉が開いた。外に駆け出そうとしたハフィ。
「まぁまぁそんなに慌てないで。お茶でも飲んでいきなよ。」
「ぐぇっ!」
しかしロミィに襟を引っ張られて逃亡はあえなく阻止されてしまった。
「あの、勝手に入ったことは本当に…!」
「それはもういいよ。光に誘われて来たんでしょう?分かったから大丈夫。泥棒だなんて思ってないよ。こんな古ぼけた事務所に入ってくる子なんてそうそういないから気になってね。話を聞きたいだけだよ。」
ほら座って座って!とロミィは部屋の奥にあるソファへとハフィを促す。後ろから押されて逃げられないハフィはされるがままにソファへと腰を下ろした。
「飲み物は何がいいかな?君は猫獣人だからハーブ系のものはやめた方がいいね!ミルクはどうだい?ホットミルクにしてあげよう。ハチミツも少し垂らすかい?」
「は、はい。お願いします。」
矢継ぎ早に言われて、ハフィは簡単な返事をすることしかできなかった。ロミィはハフィの返事を聞くと、鼻歌を歌いながら、部屋の奥にあるレンガ造りの暖炉に陶器のポットを置いた。そして指をパチンと鳴らすと、瞬く間に暖炉に火が灯る。
「えっ!?」
詠唱なしの魔法を初めて見たハフィは目を丸くする。そんなハフィを見て、ロミィは可笑そうにクスクスと笑った。
「詠唱なしは初めてかな?こんな簡単な魔法なら、ある程度の魔法使いだったらすぐにできるようになるよ。」
「そうなんですか…。」
そんな簡単な魔法も詠唱をしてできるかどうかというレベルのハフィにとっては、想像もできない世界だ。
「そうだ!来客用にバターケーキをストックしてある!ちょっと待ってなさい。すぐに持ってくるからね。」
ロミィがいそいそと隣の部屋に消えていく。一人になると、暖炉の火が爆ぜる音が部屋にゆっくりと広がる。始めて来たはずなのに、ハフィは何だかとても居心地が良くなって来た。
「いいなぁ、この事務所。」
ハフィはポツリと呟く。正直、今まで訪ねた事務所はどこもピンとこなかった。断られたのハフィの方だが、最初からなんだか違うなという違和感を感じていたのだ。
この事務所にはその違和感がない。それどころか何かがピッタリとはまるような感覚さえしてくる。
「弟子とか、募集してないのかな…。」
そんなことを考えているうちに、ロミィがケーキの入った皿を持って来てくれので、ハフィはとりあえずお茶の時間を楽しむことにした。
頭を抱えてうずくまったハフィの上で楽しげな声が聞こえる。ハフィがゆっくりと目を開けて上を見ると、そこには顔が見えないほど深くローブを被った人物が立っていた。
「勝手に事務所に入ってくるものだから、泥棒かと思ってね。その様子だと泥棒じゃないみたいだな。」
「あ、あの私…。」
「あぁ、ごめんごめん。僕はこの事務所を開いてるロミィだよ。えーっと、君は?」
ローブを被ったまま、ロミィがこてんと首を傾げる。そうだ。事務所に勝手に入ってきて、中を見回しているのだから泥棒と勘違いされても仕方ない。
「勝手に事務所に入ってしまってごめんなさい!あの、信じてもらえないかもしれないんですけど、変な光がこの事務所に来いって!」
「へー、光ねぇ。」
ロミィはニヤニヤと笑いながらハフィの話を聞いている。どうやら全く信じてくれていないようだ。
「本当にごめんなさい!勝手に入ってしまったお詫びは今度持ってきます!では失礼しまーーす!」
ぺこりと頭を下げて駆け足で入口まで急ぎ、扉に手をかける。今度は先程のことが嘘かのように簡単に扉が開いた。外に駆け出そうとしたハフィ。
「まぁまぁそんなに慌てないで。お茶でも飲んでいきなよ。」
「ぐぇっ!」
しかしロミィに襟を引っ張られて逃亡はあえなく阻止されてしまった。
「あの、勝手に入ったことは本当に…!」
「それはもういいよ。光に誘われて来たんでしょう?分かったから大丈夫。泥棒だなんて思ってないよ。こんな古ぼけた事務所に入ってくる子なんてそうそういないから気になってね。話を聞きたいだけだよ。」
ほら座って座って!とロミィは部屋の奥にあるソファへとハフィを促す。後ろから押されて逃げられないハフィはされるがままにソファへと腰を下ろした。
「飲み物は何がいいかな?君は猫獣人だからハーブ系のものはやめた方がいいね!ミルクはどうだい?ホットミルクにしてあげよう。ハチミツも少し垂らすかい?」
「は、はい。お願いします。」
矢継ぎ早に言われて、ハフィは簡単な返事をすることしかできなかった。ロミィはハフィの返事を聞くと、鼻歌を歌いながら、部屋の奥にあるレンガ造りの暖炉に陶器のポットを置いた。そして指をパチンと鳴らすと、瞬く間に暖炉に火が灯る。
「えっ!?」
詠唱なしの魔法を初めて見たハフィは目を丸くする。そんなハフィを見て、ロミィは可笑そうにクスクスと笑った。
「詠唱なしは初めてかな?こんな簡単な魔法なら、ある程度の魔法使いだったらすぐにできるようになるよ。」
「そうなんですか…。」
そんな簡単な魔法も詠唱をしてできるかどうかというレベルのハフィにとっては、想像もできない世界だ。
「そうだ!来客用にバターケーキをストックしてある!ちょっと待ってなさい。すぐに持ってくるからね。」
ロミィがいそいそと隣の部屋に消えていく。一人になると、暖炉の火が爆ぜる音が部屋にゆっくりと広がる。始めて来たはずなのに、ハフィは何だかとても居心地が良くなって来た。
「いいなぁ、この事務所。」
ハフィはポツリと呟く。正直、今まで訪ねた事務所はどこもピンとこなかった。断られたのハフィの方だが、最初からなんだか違うなという違和感を感じていたのだ。
この事務所にはその違和感がない。それどころか何かがピッタリとはまるような感覚さえしてくる。
「弟子とか、募集してないのかな…。」
そんなことを考えているうちに、ロミィがケーキの入った皿を持って来てくれので、ハフィはとりあえずお茶の時間を楽しむことにした。
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