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落ちこぼれの魔法事務所
一番弟子の仕事⑦
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「ほら着いたぞ。」
「ありがとうございます。」
ムーランの背から降りたハフィはロミィの事務所の扉を開けた。
「おや、帰ってきたんだね。お疲れ様。」
中ではミズリィが笑顔で二人を出迎えた。
「なんだ。やっぱりロミィは帰ってきてないのか?」
「そうだよ。一応店は旦那に任せて一日中事務所にいたんだけど、帰ってこなかった。ハフィは今日は一日仕事をしてたのかい?」
「そうなんだよ。ハフィは働き屋さんでなぁ。ものすごく助かったぜ。」
「そうかいそうかい。さすが一番弟子だねぇ。旦那がバターケーキを持ってきてくれたから家に帰る前に食べていかないかい?今ならお茶も付けるよ!」
「ぜひお願いします!」
ハフィが笑顔で返事をすると、ミズリィはよしきた!と言って鼻歌を歌いながらお茶とケーキの準備を始めた。まるで勝手知ったるように棚の中きらお皿やらティーポットやらを取り出すミズリィにハフィが驚いていると、ムーランが説明してくれた。
「ロミィはほとんど事務所にいないからな。俺たちが代わりに事務所番をすることもあるんだ。依頼に来た人の話を聞いて、ロミィに魔法鳩を飛ばすだけどけどな。だから事務所の中に何があるかなんてのは大体把握してるんだよ。」
ムーランがハフィの頭を撫でる。
「ほーら、ムーランは何ぼーっとしてるんだい?お皿とフォークを持ってきな!」
「俺は働いてきたんだけどなぁ。まぁ、ハフィの初めてのお疲れ様会って考えればいいか!」
ミズリィとムーランがハフィのためにテキパキと動き回ってお茶の準備をしてくれる。それが嬉しくて、ハフィはそんな二人を眺め続けた。
「とっても美味しかったです!ミズリィさんもムーランさんもありがとうございました!」
事務所の入り口の前でハフィはぺこりと頭を下げる。ムーランは何度も送っていくと言ってくれたが、バターケーキとお茶をご馳走になって体力が回復したハフィが一人で大丈夫だと断ったのだ。それに、二人には明日も仕事があるはずだ。送迎なんかさせて疲れさせる訳にはいかない。
「ハフィは明日からどうするんだい?」
ミズリィが尋ねてくる。ハフィは今日一日考えていたことを伝えることにした。
「私、ロミィさんの一番弟子をもう少し続けてみようと思います。…私なんて魔法もほとんど使えないしロミィさんにとっては足手まといで期待外れな一番弟子かもしれないけれど。…憧れている魔法使いがいるんです。その人に近づくためにも、今は色んな人と会って、色んな依頼を受けて成長したいんです!」
二人の顔を交互に見ながら力強く言い切ったハフィ。ミズリィとムーランはその瞳の輝きにしばし見惚れた後、にっこりと笑った。
「あんたしかロミィの一番弟子は務まらないかもしれないね。今までの奴らは出世に繋がらないつまらない依頼だって言って下町の依頼は受けなかったんだ。ハフィが初めてだよ。こんなに頑張ってくれたのは。」
ミズリィさんがハフィの頭を撫でる。
「俺も頑張るハフィを応援したいんだが、ロミィは本当に仕事しねーからな。辞めたくなったらいつでも言えよ。契約破棄の手伝いしてやるからな。」
ムーランがウィンクで応えてくれた。
「はい!!よろしくお願いします!」
夜に似つかわしくない大きな声が出てしまった。慌てて自分の口を塞ぐハフィを見て二人とも盛大に笑う。
「それじゃあ私は店に戻るよ。ハフィ、明日は事務所は休みなんだ。また来週からよろしく!」
「はい!それじゃあまた来週!」
去っていくミズリィにハフィが手を振った。そしてその背中が見えなくなる頃、ムーランがおずおずと話しかけてきた。
「ハフィ、あのな…。ハフィは人を元気付けられる魔法が使えるって言っただろ?」
「へ?あ、はい。」
「明日時間あるか?個人的にちょっと頼みがあるんだ。」
「頼み?」
ハフィはムーランのお願いに首を傾げたのだった。
「ありがとうございます。」
ムーランの背から降りたハフィはロミィの事務所の扉を開けた。
「おや、帰ってきたんだね。お疲れ様。」
中ではミズリィが笑顔で二人を出迎えた。
「なんだ。やっぱりロミィは帰ってきてないのか?」
「そうだよ。一応店は旦那に任せて一日中事務所にいたんだけど、帰ってこなかった。ハフィは今日は一日仕事をしてたのかい?」
「そうなんだよ。ハフィは働き屋さんでなぁ。ものすごく助かったぜ。」
「そうかいそうかい。さすが一番弟子だねぇ。旦那がバターケーキを持ってきてくれたから家に帰る前に食べていかないかい?今ならお茶も付けるよ!」
「ぜひお願いします!」
ハフィが笑顔で返事をすると、ミズリィはよしきた!と言って鼻歌を歌いながらお茶とケーキの準備を始めた。まるで勝手知ったるように棚の中きらお皿やらティーポットやらを取り出すミズリィにハフィが驚いていると、ムーランが説明してくれた。
「ロミィはほとんど事務所にいないからな。俺たちが代わりに事務所番をすることもあるんだ。依頼に来た人の話を聞いて、ロミィに魔法鳩を飛ばすだけどけどな。だから事務所の中に何があるかなんてのは大体把握してるんだよ。」
ムーランがハフィの頭を撫でる。
「ほーら、ムーランは何ぼーっとしてるんだい?お皿とフォークを持ってきな!」
「俺は働いてきたんだけどなぁ。まぁ、ハフィの初めてのお疲れ様会って考えればいいか!」
ミズリィとムーランがハフィのためにテキパキと動き回ってお茶の準備をしてくれる。それが嬉しくて、ハフィはそんな二人を眺め続けた。
「とっても美味しかったです!ミズリィさんもムーランさんもありがとうございました!」
事務所の入り口の前でハフィはぺこりと頭を下げる。ムーランは何度も送っていくと言ってくれたが、バターケーキとお茶をご馳走になって体力が回復したハフィが一人で大丈夫だと断ったのだ。それに、二人には明日も仕事があるはずだ。送迎なんかさせて疲れさせる訳にはいかない。
「ハフィは明日からどうするんだい?」
ミズリィが尋ねてくる。ハフィは今日一日考えていたことを伝えることにした。
「私、ロミィさんの一番弟子をもう少し続けてみようと思います。…私なんて魔法もほとんど使えないしロミィさんにとっては足手まといで期待外れな一番弟子かもしれないけれど。…憧れている魔法使いがいるんです。その人に近づくためにも、今は色んな人と会って、色んな依頼を受けて成長したいんです!」
二人の顔を交互に見ながら力強く言い切ったハフィ。ミズリィとムーランはその瞳の輝きにしばし見惚れた後、にっこりと笑った。
「あんたしかロミィの一番弟子は務まらないかもしれないね。今までの奴らは出世に繋がらないつまらない依頼だって言って下町の依頼は受けなかったんだ。ハフィが初めてだよ。こんなに頑張ってくれたのは。」
ミズリィさんがハフィの頭を撫でる。
「俺も頑張るハフィを応援したいんだが、ロミィは本当に仕事しねーからな。辞めたくなったらいつでも言えよ。契約破棄の手伝いしてやるからな。」
ムーランがウィンクで応えてくれた。
「はい!!よろしくお願いします!」
夜に似つかわしくない大きな声が出てしまった。慌てて自分の口を塞ぐハフィを見て二人とも盛大に笑う。
「それじゃあ私は店に戻るよ。ハフィ、明日は事務所は休みなんだ。また来週からよろしく!」
「はい!それじゃあまた来週!」
去っていくミズリィにハフィが手を振った。そしてその背中が見えなくなる頃、ムーランがおずおずと話しかけてきた。
「ハフィ、あのな…。ハフィは人を元気付けられる魔法が使えるって言っただろ?」
「へ?あ、はい。」
「明日時間あるか?個人的にちょっと頼みがあるんだ。」
「頼み?」
ハフィはムーランのお願いに首を傾げたのだった。
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