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落ちこぼれの魔法事務所
夜の帳が下りた後①
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「はぁ、今日は疲れたなぁ。」
寮のお風呂に入ってサッパリしたハフィは自分の部屋のベッドにドスンと倒れ込んだ。
「何だかいっぺんに色んなことが重なって混乱しちゃうよ。」
髪が濡れたまま、ハフィはポツリと呟く。仰向けに寝転んだハフィは、ぼんやりとしながら窓の外を見た。
窓からはキラキラと輝く星と月が見える。暗い夜空に輝く星たち。この景色がハフィは大好きだった。体を起こして窓を開けると、窓枠に腕をついて夜景を眺める。
考えるのはゼンリューのこと。元気をなくしているお爺さんをお見舞いに行くような軽い気持ちだったハフィは、昼間に見た様子のおかしいゼンリューを思い出してため息をつく。優しかったかと思えば突然厳しくなるゼンリュー。そして別れ際に見せた悲しい表情。
「私、本当に何もできないなぁ。」
優秀な魔法使いなら、魔法を使ってゼンリューをあっという間に元気にできるだろう。ハフィも人の心を少しだけ癒すことができるのだが、今日は魔法を使う暇もなかった。それに、ハッキリ言って自分の魔法がどんなたぐいのものなのか分からないのだ。
この魔法が使えるようになったのは、孤児院が火事になった時。それ以前に魔法が使えたという覚えはない。猫獣人である自分と相性のいい猫じゃらしを使って魔法の練習をしたら、この魔法だけは使えたのだ。ちなみに他の魔法はいくら練習しても使えるようにはならなかった。
「…この魔法が役に立つ時がくるのかなぁ。」
ハフィはまたもや大きなため息をつく。偉大な魔法使いロージロジのように、たくさんの人から尊敬される魔法使いになりたい。火事から自分を救ってくれたあの魔法使いのように、誰かの役に立ちたい。困ってる人を笑顔にしたい。
「魔力が小さいのに、自分に見合わない夢を見すぎたのかなぁ。」
ハフィの声が夜の闇に溶けていく。
「おやおや、ちょっと離れているうちに僕の一番弟子は随分と自信を失っているようだね。誰かに虐められでもしたのかな?」
「え?」
すると、どこからか声が聞こえてくる。慌てて部屋の中を見回してみるが、誰かがいるような気配はない。
「だ、誰ですか!」
ハフィは枕元に置いてある猫じゃらしを持って周りを警戒する。攻撃魔法など使えないが、何も武器を持っていないよりはマシだ。
「出てきてください!」
「大事な師匠の声を忘れるなんて薄情な一番弟子だなぁ。お師匠様、泣いちゃうぞ?」
「きゃあーーー!」
窓の上部からにゅっとローブを被った顔が出てきて、ハフィは悲鳴を上げてベッドから転げ落ちた。
「おいおい、ホントに大丈夫かい?」
この声は。
「ロミィ…さん?」
隠れていたベットの縁から少しだけ顔を出す。いやっほーと言って深いローブからニヤニヤと緩んだ口元だけ見えている。そう、今日ハフィが疲れた原因のロミィだった。
寮のお風呂に入ってサッパリしたハフィは自分の部屋のベッドにドスンと倒れ込んだ。
「何だかいっぺんに色んなことが重なって混乱しちゃうよ。」
髪が濡れたまま、ハフィはポツリと呟く。仰向けに寝転んだハフィは、ぼんやりとしながら窓の外を見た。
窓からはキラキラと輝く星と月が見える。暗い夜空に輝く星たち。この景色がハフィは大好きだった。体を起こして窓を開けると、窓枠に腕をついて夜景を眺める。
考えるのはゼンリューのこと。元気をなくしているお爺さんをお見舞いに行くような軽い気持ちだったハフィは、昼間に見た様子のおかしいゼンリューを思い出してため息をつく。優しかったかと思えば突然厳しくなるゼンリュー。そして別れ際に見せた悲しい表情。
「私、本当に何もできないなぁ。」
優秀な魔法使いなら、魔法を使ってゼンリューをあっという間に元気にできるだろう。ハフィも人の心を少しだけ癒すことができるのだが、今日は魔法を使う暇もなかった。それに、ハッキリ言って自分の魔法がどんなたぐいのものなのか分からないのだ。
この魔法が使えるようになったのは、孤児院が火事になった時。それ以前に魔法が使えたという覚えはない。猫獣人である自分と相性のいい猫じゃらしを使って魔法の練習をしたら、この魔法だけは使えたのだ。ちなみに他の魔法はいくら練習しても使えるようにはならなかった。
「…この魔法が役に立つ時がくるのかなぁ。」
ハフィはまたもや大きなため息をつく。偉大な魔法使いロージロジのように、たくさんの人から尊敬される魔法使いになりたい。火事から自分を救ってくれたあの魔法使いのように、誰かの役に立ちたい。困ってる人を笑顔にしたい。
「魔力が小さいのに、自分に見合わない夢を見すぎたのかなぁ。」
ハフィの声が夜の闇に溶けていく。
「おやおや、ちょっと離れているうちに僕の一番弟子は随分と自信を失っているようだね。誰かに虐められでもしたのかな?」
「え?」
すると、どこからか声が聞こえてくる。慌てて部屋の中を見回してみるが、誰かがいるような気配はない。
「だ、誰ですか!」
ハフィは枕元に置いてある猫じゃらしを持って周りを警戒する。攻撃魔法など使えないが、何も武器を持っていないよりはマシだ。
「出てきてください!」
「大事な師匠の声を忘れるなんて薄情な一番弟子だなぁ。お師匠様、泣いちゃうぞ?」
「きゃあーーー!」
窓の上部からにゅっとローブを被った顔が出てきて、ハフィは悲鳴を上げてベッドから転げ落ちた。
「おいおい、ホントに大丈夫かい?」
この声は。
「ロミィ…さん?」
隠れていたベットの縁から少しだけ顔を出す。いやっほーと言って深いローブからニヤニヤと緩んだ口元だけ見えている。そう、今日ハフィが疲れた原因のロミィだった。
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