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落ちこぼれの魔法事務所
黒い瞳②
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「自分じゃ抑えられねーんだ!お嬢ちゃんにあった日からだんだんと大きくなりやがって!俺のことはいいから今すぐ逃げろ!」
ゼンリューは脂汗を流しながらも、必死にハフィを逃そうとしてくれている。
「でも、ゼンリューさんが!」
ハフィが目に涙をためて叫ぶ。
「お嬢ちゃん、大丈夫。大丈夫だ。心配するな。俺なら大丈夫だから。」
苦しみながらもにっこりと笑うゼンリューに、かつての自分の姿が重なった。
孤児院が火事になったあの日。まだなんの力もないのに、男の子を救おうと思った自分。大丈夫だと励まし続け、助けに来てくれた魔法使いに「立派な魔女」だと言われた自分。
あの時の自分から成長できているだろうか。
立派な魔法使いに必要なのは、人に羨ましがられるような膨大な魔力なんだようか。
「違う!違うよ!」
ハフィはブンブンと首を振り、自分のほっぺを強くつねった。少し痛かったけれど、かつての自分が戻ってきたように感じる。思い出すのはロミィの言葉。
「自分の魔法を信じるんだ!!!!」
声を張り上げたハフィは、魔法の杖として使っている猫じゃらしを取り出す。
「ゼンリューさん!大丈夫!大丈夫だからね!私が助けてあげる!」
「お嬢ちゃん…。」
苦しみながら地面にうずくまっているゼンリューにハフィはゆっくりと近付く。それを見ていたゼンリューは、ハフィがすぐそばまで来ると、逃がさないとでもいうようにハフィの細い腕を強く掴む。
「はは!つかまえた!つかまえたぞ!もうにがさない!くってやる!くってやる!おまえなんかくってやる!!」
ゼンリューの黒く濁った瞳。それを真っ直ぐに見つめ返すと、少しだけ怯んだような表情を見せる。
「っ!いまいましい!みるな!くうぞ!くってやるぞ!」
「ゼンリューさん。大丈夫だよ。今助けてあげるから。元の明るくて元気なゼンリューさんに戻してあげる。」
自分を信じて。
自分の魔法を信じて。
「フィンフィンハフィ・ルールルー!!!」
猫じゃらしをフワンと振って高らかに唱える。すると、ハフィの体が一瞬だけ強く輝いた。
「ぐぅあ!!」
その光を間近で見たゼンリューは、胸を押さえて苦しみ出す。そんなゼンリューを、ハフィは強く抱きしめた。
「ゼンリューさん、大丈夫。大丈夫。」
頭を掻き抱いて、優しく優しく撫で続けていると、強張っていたゼンリューの体からどんどんと力が抜けていく。そして、とうとうハフィに縋り付くような形になってしまった。
「っ、ゼンリューさん?」
「…もう大丈夫だ。お嬢ちゃん、頑張ってくれたな。ありがとな。」
ゼンリューが顔を上げてにっこりと笑ってくれた。その笑顔は今までの違和感のあるものではなく、心からの温かい笑顔に見える。
「あ…!」
ゼンリューの暗く濁った黒い瞳は、夕焼け色の綺麗な茜色になっていた。
ゼンリューは脂汗を流しながらも、必死にハフィを逃そうとしてくれている。
「でも、ゼンリューさんが!」
ハフィが目に涙をためて叫ぶ。
「お嬢ちゃん、大丈夫。大丈夫だ。心配するな。俺なら大丈夫だから。」
苦しみながらもにっこりと笑うゼンリューに、かつての自分の姿が重なった。
孤児院が火事になったあの日。まだなんの力もないのに、男の子を救おうと思った自分。大丈夫だと励まし続け、助けに来てくれた魔法使いに「立派な魔女」だと言われた自分。
あの時の自分から成長できているだろうか。
立派な魔法使いに必要なのは、人に羨ましがられるような膨大な魔力なんだようか。
「違う!違うよ!」
ハフィはブンブンと首を振り、自分のほっぺを強くつねった。少し痛かったけれど、かつての自分が戻ってきたように感じる。思い出すのはロミィの言葉。
「自分の魔法を信じるんだ!!!!」
声を張り上げたハフィは、魔法の杖として使っている猫じゃらしを取り出す。
「ゼンリューさん!大丈夫!大丈夫だからね!私が助けてあげる!」
「お嬢ちゃん…。」
苦しみながら地面にうずくまっているゼンリューにハフィはゆっくりと近付く。それを見ていたゼンリューは、ハフィがすぐそばまで来ると、逃がさないとでもいうようにハフィの細い腕を強く掴む。
「はは!つかまえた!つかまえたぞ!もうにがさない!くってやる!くってやる!おまえなんかくってやる!!」
ゼンリューの黒く濁った瞳。それを真っ直ぐに見つめ返すと、少しだけ怯んだような表情を見せる。
「っ!いまいましい!みるな!くうぞ!くってやるぞ!」
「ゼンリューさん。大丈夫だよ。今助けてあげるから。元の明るくて元気なゼンリューさんに戻してあげる。」
自分を信じて。
自分の魔法を信じて。
「フィンフィンハフィ・ルールルー!!!」
猫じゃらしをフワンと振って高らかに唱える。すると、ハフィの体が一瞬だけ強く輝いた。
「ぐぅあ!!」
その光を間近で見たゼンリューは、胸を押さえて苦しみ出す。そんなゼンリューを、ハフィは強く抱きしめた。
「ゼンリューさん、大丈夫。大丈夫。」
頭を掻き抱いて、優しく優しく撫で続けていると、強張っていたゼンリューの体からどんどんと力が抜けていく。そして、とうとうハフィに縋り付くような形になってしまった。
「っ、ゼンリューさん?」
「…もう大丈夫だ。お嬢ちゃん、頑張ってくれたな。ありがとな。」
ゼンリューが顔を上げてにっこりと笑ってくれた。その笑顔は今までの違和感のあるものではなく、心からの温かい笑顔に見える。
「あ…!」
ゼンリューの暗く濁った黒い瞳は、夕焼け色の綺麗な茜色になっていた。
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