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青い王子と雨の王冠
王宮③
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「ま、待ってください、善雨さん!」
黙ってハフィの腕を引っ張る善雨に、必死に声をかけるが止まってもらえない。豪華な廊下をずんずんと歩いていく善雨について行くしかないハフィだったが、身長差から歩幅が合わず転びそうになってしまう。
「あぅ!」
「大丈夫か?」
顔面から転びそうになったハフィを後ろから引っ張って支えてくれたのは静間だった。
「…すまない。」
それでやっと気付いたのか、慌ててこちらを振り返り、善雨が謝ってくる。
「少し考え事をしていた。怪我はないか?」
「あ、大丈夫です。…そ、それよりも私!」
「おや、お兄様ではありませんか。こんなところで油を売っていてよろしいので?」
前方から誰かが話しかけてくる。はハフィがその方向を見ると、そこには美しい少年が立っていた。
(綺麗…。)
王と同じ少しだけ透けている蒼い髪に同じ色の瞳。白い肌。中性的で美しい顔立ち。しかし、健康的な体つきの善雨と違い、だいぶ小柄で痩せ細っている。
「…村雲。お前こそここで何をしているんだ?」
善雨が静かな声で尋ねる。すると村雲と呼ばれた少年は顔を歪めて答えた。
「優秀なあなたと違って僕は出来損ないですからね。勉強も運動も雨のコントロールも、なんだって練習しないといけないんですよ。何もしなくてもできるあなたと僕は違うんだ!」
「村雲、そんなに大声を出しては!」
「っう!げほっ!!ごほっ、ごほっ!」
「村雲さま!」
村雲の後ろに付き従っていた男が、咳き込んでうずくまる村雲のもとに駆け寄る。善雨も駆け寄ろうとするが「近寄るな!」と村雲に怒られてピタリと動きを止めた。
「言い様だと思っているんだろう!僕はあなたたち親子を苦しめた女の息子だ!こんな調子じゃ時期国王はあなたに決まりだからな!っ!睡蓮、帰るぞ!!」
咳き込んでいた村雲は息を整えて立ち上がる。そして再びすれ違い様に善雨に暴言を吐き、早歩きで去っていた。その時にチラリとハフィに視線を向けたが、興味がないのかすぐに目を逸らされた。
「…善雨様、失礼いたします。」
村雲の従者、睡蓮が申し訳なさそうな顔をして善雨に深々と頭を下げる。それを見た善雨は苦笑いをして首を横に振った。
「気にするな、水蓮。俺は嫌われているからな。村雲もお前になら甘えられるんだろう。どうか体調も気にかけてやってくれ。」
「もちろんでございます。では。」
もう一度深々の礼をして睡蓮がすれ違う。
(ん?)
一瞬だけバチっと体に何かが走ったような気がしたハフィだったが、すぐに消えてしまったその感覚をすぐに忘れてしまったのだった。
黙ってハフィの腕を引っ張る善雨に、必死に声をかけるが止まってもらえない。豪華な廊下をずんずんと歩いていく善雨について行くしかないハフィだったが、身長差から歩幅が合わず転びそうになってしまう。
「あぅ!」
「大丈夫か?」
顔面から転びそうになったハフィを後ろから引っ張って支えてくれたのは静間だった。
「…すまない。」
それでやっと気付いたのか、慌ててこちらを振り返り、善雨が謝ってくる。
「少し考え事をしていた。怪我はないか?」
「あ、大丈夫です。…そ、それよりも私!」
「おや、お兄様ではありませんか。こんなところで油を売っていてよろしいので?」
前方から誰かが話しかけてくる。はハフィがその方向を見ると、そこには美しい少年が立っていた。
(綺麗…。)
王と同じ少しだけ透けている蒼い髪に同じ色の瞳。白い肌。中性的で美しい顔立ち。しかし、健康的な体つきの善雨と違い、だいぶ小柄で痩せ細っている。
「…村雲。お前こそここで何をしているんだ?」
善雨が静かな声で尋ねる。すると村雲と呼ばれた少年は顔を歪めて答えた。
「優秀なあなたと違って僕は出来損ないですからね。勉強も運動も雨のコントロールも、なんだって練習しないといけないんですよ。何もしなくてもできるあなたと僕は違うんだ!」
「村雲、そんなに大声を出しては!」
「っう!げほっ!!ごほっ、ごほっ!」
「村雲さま!」
村雲の後ろに付き従っていた男が、咳き込んでうずくまる村雲のもとに駆け寄る。善雨も駆け寄ろうとするが「近寄るな!」と村雲に怒られてピタリと動きを止めた。
「言い様だと思っているんだろう!僕はあなたたち親子を苦しめた女の息子だ!こんな調子じゃ時期国王はあなたに決まりだからな!っ!睡蓮、帰るぞ!!」
咳き込んでいた村雲は息を整えて立ち上がる。そして再びすれ違い様に善雨に暴言を吐き、早歩きで去っていた。その時にチラリとハフィに視線を向けたが、興味がないのかすぐに目を逸らされた。
「…善雨様、失礼いたします。」
村雲の従者、睡蓮が申し訳なさそうな顔をして善雨に深々と頭を下げる。それを見た善雨は苦笑いをして首を横に振った。
「気にするな、水蓮。俺は嫌われているからな。村雲もお前になら甘えられるんだろう。どうか体調も気にかけてやってくれ。」
「もちろんでございます。では。」
もう一度深々の礼をして睡蓮がすれ違う。
(ん?)
一瞬だけバチっと体に何かが走ったような気がしたハフィだったが、すぐに消えてしまったその感覚をすぐに忘れてしまったのだった。
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