大好きな彼氏に裏切られたと思ったら魔王に溺愛されました。

めろめろす

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魔王城での療養①

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「まぁ、時間はあることだしアヅキとの仲はゆっくり深めていくことにするよ。」

 ライヤードさんはにっこりと笑って最後にもう一度私の頬にキスをしようとした。それを寸前で避けると、不服そうな表情を見せた。

「キスぐらいいいじゃないかー。」

「ダメです!許しません!!」

「はぁ。ガードが硬いなぁアヅキは。まぁ、そんなところも好ましいけどね!とりあえず、傷が治って体力が回復するまでこの城に滞在するように!もし逃げ出そうとしたら容赦なく僕のお嫁さんになって、結婚式を挙げることになるから覚悟してねー。」

「気をつけます…!」

「よし!それじゃあまずは食事だね。メルリダ!」

「準備はできておるぞー。」

 ライヤードさんが出口の方に呼びかけると、直ぐに扉が開いてメルリダさんがワゴンとともに入ってくる。ワゴンにはたくさんの料理が並べられており、メルリダさんがテーブルの上に綺麗に並べてくれた。

「本来なら城のシェフの料理を味わってもらいたいんだが、魔族は人手不足でのぉ。シェフを戦いに駆り出されておるのじゃ。申し訳ないがわらわの料理で我慢してほしい。」

「い、いえ!作ってもらえるだけでありがたいです!」

 他人に作ってもらうなんて何年振りまろう。両親は家にいないので、自分のご飯はずっと自分で作っていた。それに、御門君の昼のお弁当や夜食なども率先して作っていたので、私のために作ってくれたというだけで目の前の料理はご馳走だ。

「ありがとうございます!早速いただいてもいいですか?」

「あぁ。ぜひ食べてくれ。食べきれなければ残してくれてもいいからな。」

 メルリダさんにお礼を言いながら、早速食事を始める。焼き立てと思われる白パンに、豆と肉、葉物野菜のようなものが入って煮込まれたとろとろのスープ、肉を豪快に焼いて塩味で味付けしたものに、ピンク色のゼリーの中に果物のようなものがたくさん入ったデザート。見たこともない食材もたくさんあったが、とてもおいしかった。

「美味しい!メルリダさん、とっても美味しいです!メルリダさんって料理上手なんですね!」

「ふふ。そんなに褒めても何もでらんぞ?少し長く生きておるゆえ、料理もある程度はできるのだ。さぁ、ゆっくり食べるが良い。食べて体力をつけるのだ。」

「はい!」

 元気に返事をして食事を再開する。部屋の隅でライヤードさんが「…アヅキが喜ぶなら僕も料理の練習しようかな。」と呟いていたのはメルリダさんと私に無視されていた。






「ご馳走様でした!とっても美味しかったです!」

「うむ!素晴らしい食べっぷりだった。」

 食べきれないと思っていたけれど、ほとんど平らげてしまった。メルリダさんはニコニコと笑いながら、食器の片付けをしてくれていた。申し訳なくなり、片付けを手伝おうとするが「そなたは休んでおけ」と言われて拒否されてしまった。

「そうだよ!ご飯を食べ終わったならアヅキはもう少し寝なさいね。起きたらまた治癒魔法をかけるからね。」

 お世話になりっぱなしでは申し訳ない。やはり片付けぐらいは手伝って方がいいだろうと思い、立ちあがろうとするか急激なら眠気に襲われる。

「はいはい、無理しないの。しばらくは体を休めることに専念するんだよ?…おやすみアヅキ。」

 もう起きていられない。椅子に座ったまま眠り込んでしまいそうになるが、ギリギリでライヤードさんに抱き上げられたのだった。









「寝たか。睡眠魔法をかけないと寝ないとは、随分と神経が昂っておったのだな。」

 ワゴンに食器を全て片付けたメルリダは、アヅキをベッドに寝かせたライヤードに近付く。


「…胸を攻撃されたんだ。死んでもおかしくないところを細胞を無理やりに活性化させて組織を再生させた。そのせいで意識も異常に活発になってたんだろう。」

 ライヤードが優しく亜月の頭を撫でる。すると無意識なのか、亜月がその手に頬を擦り寄せた。

「ん…。」

「可愛らしいのぉ。…聖女たちとの交渉は決裂したらしいな。」

「うん、そうだよ。魔族を根絶やしにするまで戦うってさ。アヅキのモトカレだっていう勇者もやけに好戦的な奴だったよ。まぁ、そっちの方がありがたいけどさ。」

 スヤスヤと眠り続けるアヅキを凝視し続けるライヤードを見て、メルリダが苦笑する。

「まさか魔王が一目惚れとはなぁ。どんな女に言い寄られても素気無く断っておったお前がのぉ。」

 魔王ライヤード。亜月の前では情けない男のようなそぶりを見せているが、腐っても魔王。とんでもない実力の持ち主であり、その美貌のレベルの高さはこの世界の頂点に位置する。

「だって可愛いだろ?短い黒い髪に目は大きくてさ。体がまだ成長中って感じが危うくて魅力的だよ。魔族ってスタイルいい奴らばっかりだから、僕あんまり好きじゃないんだよね。」

「変態に好かれてアヅキも可愛そうじゃなのう。」

「あは。誰が変態だよ。時間はまだある。たっぷり僕のこと知ってもらわないとね。」

 ライヤードは不敵な笑みをアヅキに向けたのだった。
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